日本女子卓球界ではパリ2024オリンピックの女子シングルス出場最大2枠をかけた争いが熱を帯びている。
2023年8月27日時点のパリオリンピックに向けた国内選考ポイントでは早田ひなが597.5ポイントでトップを独走するが、これに400ポイントの平野美宇(みう)、369.5ポイントの伊藤美誠(みま)が続く。
東京2020オリンピックの混合ダブルスで金メダル、女子団体で銀メダル、女子シングルスで銅メダルを獲得した伊藤はパリ2024オリンピック女子シングルスへの出場、さらには金メダル獲得を目標に国内外の戦いに挑んでいる。
「東京オリンピックまで死ぬ気で頑張ってきて、中国人選手どの選手よりもたくさん練習したって胸を張って言えるくらい練習をして、金メダル銀メダル銅メダルという3つのメダルを取ることができました。でも、一番の目標はシングルスで金メダルを取ることだったので、うれしい気持ちもあったけど、やっぱり悔しい気持ちが強かったです」
国際卓球連盟(ITTF)を通じたOlympics.comのインタビュー(2023年5月)でこう語った伊藤は、東京2020卓球女子シングルスの準決勝で中華人民共和国のスン・インシャ(孫穎莎)に敗れ、3位。オリンピック女子シングルスで日本女子選手として初めてのメダルを獲得するという偉業を成し遂げた。しかし、それは「悔しい」気持ちとして残り、パリ2024オリンピックへのモチベーションになっている。
「東京オリンピック終わってから、次のパリに向けて『絶対にシングルスで金メダルを取りたい』っていう目標を立てました」
だが、その戦いの難しさも実感している。5月下旬に行われた世界選手権前には、でん部付近の痛みを訴え、代表選手の全体練習から離れたこともあった。
「日本代表選考の方法が変わって、前までは、海外のITTFの試合、WTT(ワールドテーブルテニス)の試合の世界ランキングで決まっていたのが、日本のポイントでオリンピックの代表選手が決まるようになったので、前以上に試合が増えてすごくタフなんですけど、でも海外の試合は大好きっていう気持ちがあります」
忙しい試合日程をこなすが、伊藤はその中で自分自身を成長させる道を模索する。
「海外の選手にどう勝つかっていう風にチャレンジしていけば、日本の選手にも勝てるようになるかなって思っています」
国内では、2000年生まれの「卓球黄金世代」と呼ばれる早田、平野、伊藤の3人が女子シングルスを牽引するほか、2004年生まれの木原美悠(みゆう)、2008年生まれの張本美和が国内外の大会で実績を積み、黄金世代の先輩たちを追いかけている。
一方、海外に目を向けてみると、世界ランキングでは女子シングルス1位から6位までを中華人民共和国の選手が独占し、7位に早田、8位に伊藤が続く。
トップに立つのは、東京2020銀メダリストで、2023年の世界選手権を制した22歳のスン・インシャで、2位が東京2020金メダリストのチェン・ムン(陳夢)。3位争いを24歳のワン・マンユ(王曼昱)、26歳のワン・イーディ(王艺迪)、26歳のチェン・シントン(陳幸同)が繰り広げる。
2023年世界選手権の女子シングルス準々決勝で早田がワンを下した際に早田が「(中華人民共和国選手の)壁が分厚すぎて、これを越えてもあと4人いるのかと、その現実を突きつけられた感じがある」と語るなど、その壁は高く分厚い。
伊藤はその壁への挑戦を前向きに捉え、自分を奮い立たせている。
「中国人選手のトップレベルの選手と対戦するときは、挑戦者の気持ちで試合がいつもできているので、やっていて楽しいですし、どれだけでも試合をしたいって毎回思います」
「その選手たちと対等に戦える力も持っています」
「そういう選手に勝っていけるようになれば、どんな国の選手にも勝っていけるようになるかなと思うので、目標はトップレベルの中国人選手に勝つことです」
「試合ではいい負けをしてるときもあるし、全然ダメだったなっていうときもあるんですけど、負けるときも勝つときもで、終わったときに『これが良かったな』『次はこれをしよう』とか、そういうポイントがあるといきいきできる。試合を通じて何か得ることを目標にしています」と続ける。
卓球界では9月3日~10日の日程でアジア選手権が行われる。日本からは女子シングルスに早田、平野、伊藤、木原に加え、佐藤瞳が参戦する。中華人民共和国代表は、世界ランキング5位までの選手がすべて参加して、アジアNo1の座を競う。その中で伊藤が何を掴み取るのか、その戦いに注目したい。