東京2020オリンピック後、日本のエース水谷隼が引退し、その跡を継いだ若きエース、張本智和。宮城県出身の張本が卓球日本男子チームを率いて、9月30日〜10月9日の日程で行われる2022年世界卓球選手権(団体戦)に挑む。
2003年生まれの19歳ながら、これまでに数々の成績を残し、最年少記録を塗り替えてきた張本。大会を前に、多くのファンを魅了する張本のすごさと魅力を改めて探ってみたい。
数々の最年少記録を塗り替えてきた張本智和
エースとしてすっかり定着した感のある張本は、中華人民共和国出身で卓球選手だった両親の下、2003年に生まれた。
5歳下の妹・美和も卓球に励む卓球一家で育った張本は、2歳のときからラケットを握り、小学生のときには全日本選手権の小学生の部で史上初の6連覇を達成した。その強さは一般の部でも発揮され、14歳だった2018年の全日本選手権では、10度目の優勝を目指していた水谷を決勝で破り、史上最年少優勝を果たした。
張本のすごさは水谷の試合後のコメントに表れている。14歳下の若き才能に触れた水谷は、「今日の張本のプレーが特別でない通常通りのものだとしたら何回やっても勝てない」という言葉で衝撃的なプレーを称えた。
張本の最年少記録は国内ばかりではない。
13歳だった2016年に世界ジュニア選手権(18歳以下)を制した張本は、翌年のシニアの世界選手権に日本最年少として出場。14歳目前に、史上最年少で8強入りする活躍を見せ、卓球界を驚かせた。
さらに国際卓球連盟(ITTF)主催の2018年ワールドツアーグランドファイナルでは、世界最年少15歳172日で表彰台の頂点に立った。この結果を受け、2019年1月に発表された世界ランキングは日本史上最高位の3位となり、世界最年少でのトップ3入りとなった。
2018年のユースオリンピックへの参加は、個人としてだけでなくエースとしての土台も育まれることになる。
ブエノスアイレスで行われたこの大会で、張本は日本選手団の主将を務め、男子シングルス、混合チームで銀メダルを獲得。「今回は主将にも選んでいただき、たくさんの経験ができました。この経験が、必ず今後の人生に大きく生きると信じています」と自身のソーシャルメディアにつづった。
東京2020オリンピックと日本の未来
そんな才能あふれる張本だが、東京オリンピックでは思い描いた結果を得ることはできなかった。
水谷、丹羽孝希とともに男子日本代表として出場した東京2020では、男子シングルス4回戦でダルコ・ヨルギッチ(スロベニア)に敗れ、敗退。その悔しさを晴らすかのように、男子団体ではチームの銅メダル獲得に貢献した。
プレー中には「チョレイ」と叫んで気合いを入れる激しさが印象的な張本だが、東京大会の団体戦では、タイムアウト中に先輩・水谷のメガネを拭く様子がテレビに映し出され、張本の人柄を表す献身ぶりも話題に。しかし成績の面では、東京大会を含め、この1年は自分が納得できる結果を掴めずにいた。
東京2020後の秋に米ヒューストンで行われた世界選手権では、初戦となった2回戦でヤコブ・ディアス(ポーランド)に敗北を喫すると、翌年1月に行われた全日本選手権では6回戦で吉村真晴に敗れ、準々決勝進出を逃してしまう。
だが、日本のエースとして決して歩みを止めることはない。
今年3月にパリオリンピックの日本代表選考会を兼ねて行われたライオンカップ・トップ32で優勝を果たすと、優勝インタビューでは「東京オリンピックが終わってから、自分にとって苦しい時期が長くて、途中で怪我もあって、本当に苦しい1年、2年だったけど、やっとこうしてシングルスのタイトルを獲れて…嬉しさはないです。安堵感とホッとした気持ちだけです」とコメントした。
今季の張本の戦いぶりで特に印象的な試合となったのは、7月にブダペストで行われたWTTチャンピオンズだろう。
大会最終日となった男子シングルス決勝で、張本はリン・ガオユエン(林高遠/中華人民共和国)と対戦。相手に3ゲームを奪われたものの、4ゲーム目で粘り強いプレーを見せて勝ち切ると、続く5、6ゲームを奪って最終第7ゲームで逆転勝利。国際舞台では1年4ヶ月ぶりの優勝となった。
9月30日に始まる2022年世界選手権(団体戦)では、丹羽孝希がインフルエンザのためにを欠場したことから、4人(張本、及川瑞基、戸上隼輔、横谷晟)で戦い抜くことになった男子日本代表。現在世界ランキング4位の張本は、「(個人として)全勝」することを目指し、「今回来られなかった丹羽さんの思いも背負って、心は5人で戦っているという気持ちで頑張りたいと思います」と、丹羽の分まで戦い抜くことを誓った。
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