パリ2024に向けて注目の競泳・日本選手

パリ2024オリンピックに向け、多くのアスリートたちが日本代表の座をかけて練習に励み、それぞれの戦いに挑んでいる。パリへの切符を掴み、大会で輝くのは誰なのか? 注目の日本人選手をシリーズで紹介したい。競泳編。

1 執筆者 Chiaki Nishimura
japanese swimmer

競泳の日本選手権「ジャパンスイム」が4月9日に終了し、7月に福岡で行われる世界水泳選手権の日本代表メンバーが発表された。

パリ2024オリンピックに向けては、2023年5月1日から2024年6月23日までの間にパリ2024オリンピック参加標準記録(OQT: Olympic Qualifying Time)を突破することが出場のための条件となり、その上で、各国は個人種目のそれぞれで最大2人までを派遣できる。

日本水泳連盟は3月、この世界水泳の個人種目で優勝した選手を代表選手として内定することを発表。最速で7月に代表内定選手が決まることになる。ここでは日本選手権で結果を残し、世界水泳メンバーに選出されたアスリートを中心に、パリ2024での活躍が期待される選手を探ってみよう。

個人メドレーの注目選手

世界水泳2023日本代表・女子個人メドレー

  • 成田実生(みお)
  • 大橋悠依(ゆい)
  • 谷川亜華葉(あげは)

日本選手権で最も注目を浴びた若手選手いえば、個人メドレーの成田実生だろう。

高校2年生で16歳の成田は、昨年の日本選手権200m個人メドレーでオリンピック2冠の大橋悠依との接戦を繰り広げ、0.71秒差の2着。1年後の今年は、0.09秒差で大橋との戦いを制して優勝した。400m個人メドレーでは東京オリンピック日本代表の19歳・谷川亜華葉と1秒以上の差をつけてゴールし、2冠を達成した。

2006年12月生まれの成田は、2022年8月から9月にかけて初めて海外に飛んで転戦し、国際試合を経験。競泳代表の最年少として注目が集まる。

200mの優勝を成田に譲る形になったが、27歳の大橋は個人メドレーそして日本競泳界を牽引する存在だ。1月にかかとの治療を行ったことで十分な練習ができず、「治療をしたときは代表落ちもやむを得ないと思っていたが、最低限代表権はとれた」と率直な気持ちをレース後のインタビューで告白しており、世界水泳までにどれだけ調子を上げられるか注目される。

世界水泳2023日本代表・男子個人メドレー

  • 瀬戸大也
  • 本多灯(ともる)
  • 小方颯(おがた・そう)

男子個人メドレーでは、リオ2016銅メダリストの瀬戸大也(28)と、東京2020銀メダル(バタフライ)の本多灯(21)というトップ選手が世界水泳代表選手に決定し、ここに小方颯が加わった。

2003年4月生まれで、まもなく20日の誕生日を迎える小方は、日本選手権200mでは瀬戸に1秒近く離されての2位だったが、昨年12月のジャパン・オープンでは瀬戸に競り勝つ勝負強さも見せている。そのときは瀬戸が万全の状態ではなかったというが、それでも直接対決での初勝利は小方にとって意味のあるものだったに違いない。この種目を長年牽引してきた瀬戸の背中を追いかけ、パリ2024オリンピックを目指す。

バタフライの注目選手

世界水泳2023日本代表・女子バタフライ

  • 池江璃花子
  • 相馬あい
  • 三井愛梨(あいり)
  • 牧野紘子

女子バタフライでは3種目のうち、50m、100mで22歳の池江璃花子が2冠を達成。自由形とバタフライ合わせて長水路5種目で日本記録を持つ池江が、6年ぶりに世界水泳への出場を決めた。

女子バタフライの若手選手としては、女子200mを制した三井愛梨が注目株として急上昇中。2004年6月生まれ18歳の三井は、日本選手権で自己ベストを1秒以上更新する2分06秒77の好タイムで初優勝を飾り、自身初の世界水泳代表選手に決まった。

三井のこの日の記録は、日本水連が「メダル目標」として設定する派遣基準Ⅱ(2分07秒40)をクリア。昨年のジュニアパンパシフィック選手権の200mバタフライで優勝、100mで準優勝となったほか、昨年12月の世界短水路選手権では200mで6位に入賞。世界水泳、そしてパリ2024に向けて三井の飛躍が期待される。

世界水泳2023日本代表・男子バタフライ

  • 川本武史
  • 松元克央(かつひろ)
  • 水沼尚輝
  • 本多灯
  • 森本哲平

男子バタフライでは、オリンピック銀メダリストで21歳の本多灯が日本選手権200mで4連覇を達成して代表の座を手にした。

その他、東京2020メンバーの川本武史(28)、水沼尚輝(26)、松元克央が名を連ねる中、世界水泳に向けてニューフェイスといえば、本多の1学年下で4月に21歳の誕生日を迎えた森本哲平。200m決勝は本多に続く2着で、タイムは1分54秒74。日本水連が「メダル目標」として設定する派遣基準Ⅱ(1分55秒04)をクリアする好タイムを記録した。

平泳ぎの注目選手

世界水泳2023日本代表・女子平泳ぎ

  • 鈴木聡美
  • 青木玲緒樹(れおな)
  • 今井月(るな)

女子平泳ぎで世界水泳代表に選ばれた3人は全員がオリンピック経験者。中でも28歳の青木玲緒樹は、100mで1分05秒89を記録し、派遣基準Ⅱ(1分06秒07)を切る好タイムで代表の座を掴み取った。この記録は、自身が2022年3月に樹立した100mの日本記録(1分05秒19)に近い1分05秒台。昨年の世界水泳では決勝に進出して5位。その前の2019年では0.04秒差で表彰台を逃しており、福岡開催となる今年の世界水泳ではより高みを目指す。

また、ロンドン2012オリンピックで3つのメダルを獲得した32歳の鈴木聡美にも選出されている。

世界水泳2023日本代表・男子平泳ぎ

  • 日本雄也
  • 渡辺一平
  • 佐藤翔馬

日本選手権の男子平泳ぎ200mでは、元世界記録保持者の渡辺一平(26)、日本記録保持者の佐藤翔馬(22)、昨年の世界水泳準優勝の花車優(23)が名を連ねての戦いが繰り広げられ、それを制したのが渡辺。記録は2分7秒73で、派遣基準Ⅱ(2分07秒87)をクリアし、自身4年ぶりとなる世界水泳での活躍を予感させた。2021年4月の日本選手権で東京オリンピック代表の座を逃してから2年、渡辺はパリでのリベンジに一歩近づいたことになる。

自由形の注目選手

世界水泳2023日本代表・女子自由形

  • 池江璃花子
  • 白井璃緒(りお)
  • 難波実夢(ゆみ)
  • 小堀倭加(こぼり・わか)
  • 森山幸美(みゆき)

女子自由形では、池江璃花子や20歳の難波実夢など、日本選手権の50〜1500mで優勝した選手が1人ずつ代表メンバーに選ばれ、森山幸美(26)を除く4人が東京2020日本代表。

日本選手権の記録では、5種目ともに派遣標準記録に届いた選手がいないが、日本代表発表の記者会見の際に池江は「強い池江が戻ってきたことを証明したい」と意気込みを語っており、池江をはじめ5選手が世界水泳までの3ヶ月でどれだけ調整できるか、楽しみにしたい。

世界水泳2023日本代表・男子自由形

  • 塩浦慎理(しんり)
  • 松元克央

日本選手権で話題を集めた男子選手のひとりといえば、「カツオ」の愛称で知られる松元克央(26)だろう。男子自由形では、松元や塩浦慎理(31)といった東京オリンピック代表選手が優勝。松元は100m自由形で47秒85をマークし、日本新記録を樹立したほか、100mバタフライと合わせて3冠となる活躍を見せた。

2019年の世界選手権200m自由形では銀メダルを手にしたが、東京2020オリンピックでまさかの予選敗退。200mの日本記録保持者でもある松元は、あのときに味わった挫折を胸に世界水泳そしてその先のパリを見据える。

背泳ぎの注目選手

世界水泳2023日本代表・女子背泳ぎ

  • 高橋美紀
  • 白井璃緒
  • 弘中花音(はなね)

日本選手権の背泳ぎ3種目のうち、2種目を制し、200m自由形と合わせて3冠となった白井璃緒は、背泳ぎ200mでは派遣標準記録をクリアして代表入り。23歳の白井は東京オリンピックに個人種目での出場を逃し、パリにかける思いもひとしおだ。

世界水泳2023日本代表・男子背泳ぎ

  • 入江陵介
  • 竹原秀一(ひでかず)
  • 栁川大樹

世界水泳のメンバーの中で1番の経験者といえば、ロンドン2012オリンピックで3つのメダルを獲得した入江陵介(33)だ。日本選手権では100m背泳ぎで10連覇の偉業を達成。100mと200mで日本記録を持つ入江が、自身8度目の世界水泳に挑む。

日本選手権の200m背泳ぎで1位、2位となった竹原秀一(19)、栁川大樹(20)のふたりにとっては初の世界選手権。この種目では、同大会3位の西小野皓大(19)を含む3選手が世界選手権の派遣標準記録を切る結果を残しており、若手の台頭が目立つ。中でも竹原は、昨年夏のジュニアパンパシフィック選手権、世界ジュニア選手権で国際大会を経験し、日本選手権では200mで自己ベストを更新して2連覇を達成した。世界水泳が行われる地元福岡での飛躍を誓う。

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