最終周、最後のコーナー。金メダルがすぐそこに近づこうとしていた……。
北京オリンピック大会11日目を迎えた2月15日、国家速滑館で行われたスピードスケート女子団体追い抜き(パシュート)決勝。予選でオリンピック新記録を出していた日本チームは、カナダチームを相手に好調な滑り出しを見せ、一糸乱れる滑りでレースをリードした。
トリノ2006から採用されている団体追い抜きでは、3人1組で滑り、女子は6周で競われる。
北京2022女子団体追い抜きの決勝で、**高木菜那・高木美帆姉妹と佐藤綾乃**の3人で臨んだ日本は、残り4周の時点で0.77差でリードし、残り3周でその差を0.61秒に縮められるなど手に汗握る展開が続いた。だが、日本はカナダの猛攻を許さず残り2周の時点で0.86秒差に広げ、最後の周を知らせる鐘が鳴った。
ゴールが近づくにつれ会場のボルテージも高まる中、最後のコーナー。日本チームは最後を滑っていた高木菜那がバランスを崩して転倒。息のぴったりあった隊列が崩れた瞬間だった。
レース直後、溢れる涙が止まらない姉・菜那の近くに妹・美帆が歩み寄り、優しく肩を抱いた。その後も、泣き崩れる姉のそばには、じっと寄り添う美帆の姿があった。
セレモニー後、菜那は「最後、転ばなかったら優勝できたかもしれないタイムだったので本当に悔しい」と話し、切り替えることの難しい感情を表した。
一方、日本のエースで妹の美帆にとってはこの大会3つ目の銀メダル。「どの銀メダルも違う思いがあって、1500mのときとは違った悔しさがありました」と表現し、その上で、「私の中ではもっと最初の方で何かできたことがあったんじゃないか、後半の戦いになる前にもっとチームにリズムを作ることができたんじゃないかという思いもある」と自身の反省すべき点をあげ、悔しさをにじませた。
佐藤綾乃も高木美帆と同様に「前半の先頭に出たところだとか、後半の前の人のサポートだとか、まだまだできた部分はあったんじゃないかなと反省することができた」と振り返り、「この結果自体も悔しいですし、自分自身にも悔いが残った」と話すなど、3人それぞれが抱いた「悔しい思い」。だが、平昌大会から続くこの3メンバーの隊列を見て、3人が過ごしてきた時間の長さや血と汗のにじむ努力を、多くの人が感じ取ったことだろう。
女子団体パシュートでの悔しさをバネに、高木美帆は17日の1000m、高木菜那と佐藤綾乃は19日のマススタートに挑む。