スケートボードのパリ2024オリンピック予選が始まった2022年。誰が現在の状況を想像しただろうか。そしてこれから先を一体誰が正確に予想できるだろうか。
最初のオリンピック予選大会から多くの日本人スケーターが存在感を発揮し、代表枠争いは次第に形が見え始めるかと思われたが、迎えた5月のオリンピック予選シリーズ(OQS)第1戦・上海大会で、代表3枠をかけた戦いは熾烈さを増した。東京2020オリンピック金メダリストの堀米雄斗が日本5番手に沈み、同じく金メダルの西矢椛はギリギリの3番手に立つ。
6月20日〜23日に予定されている最後の戦いオリンピック予選シリーズ第2戦・ブダペスト大会は初日から目の離せない戦いとなるだろう。Olympics.comでライブ配信が予定されているブダペスト大会では、どんな展開が待っているのか。
※オリンピック各国代表の編成に関しては国内オリンピック委員会(NOC)が責任を持っており、パリ2024への選手の参加は、選手が属するNOCがパリ2024代表選手団を選出することにより確定する。各競技の出場資格に関する公式資料はこちら。
堀米雄斗はどこまで追い上げることができるのか? 男子ストリート
オリンピック予選において、男子ストリートの堀米雄斗は窮地に立たされている。オリンピック予選第1フェーズとなった2022年夏から2024年3月までの6戦で、序盤でつまづいた堀米は、後半の3戦で立て直しを図り、日本勢4番手で上海大会に向かった。しかし、そこでまさかの予選敗退。大会終了後には5番手に後退した。
世界ランキング1位で日本勢トップに立つのが14歳の小野寺吟雲(ぎんう)だ。小野寺は上海での緊迫した雰囲気もなんのそのといった様子で並々ならぬ集中力を発揮して準優勝。それはおそらくブタペストでも変わらないだろう。2番手にはオリンピック予選後半戦でランキングを急上昇させた根附海龍(ねつけ・かいり)、3番手に世界王者の白井空良(そら)、4番手に佐々木音憧(とあ)、そして堀米を挟んで6番手が青木勇貴斗(ゆきと)が名を連ねる。
堀米と3番手の白井のポイント差は95,017。これを埋めるために堀米はブダペストで最低でも7位(98,948ポイント)に入らなければならないが、他の選手らが上位に入れば、堀米もそれ以上のポイントを重ねなければならない。たとえ優勝(260,000ポイント)したとしても、他の選手らが上位に食い込めば堀米のオリンピックへの道は閉ざされることになる。
だが東京2020がそうだったように、土壇場の強さを持ち合わせているのも堀米である。その逆転劇を私たちは目にすることになるのか。
また、堀米の後ろに立つ青木が2大会連続のオリンピック出場を果たすためには、ブダペストで表彰台に立つ滑りをしなけれればならない。だが青木も堀米と同様に、上位のスケーターの成績によっては厳しい道となる。
小野寺は2番手以下を大きく引き離しているが、根附、白井、佐々木はほぼ一線。代表争いが激しいアメリカ合衆国のスケーターや第1戦を欠場したフランスのオーレリアン・ジロー、ヴァンサン・ミルが戦いに加わることを考えると、表彰台争いはさらに激しくなる。8人で行われる決勝進出を逃せばパリは厳しくなる。それぞれがその覚悟で挑む男子ストリートはブダペスト大会の中でも最大の注目ポイントとなるだろう。少し夜更かししたとしてもぜひ押さえておきたい。
吉沢恋、快進撃の行方は? 女子ストリート
男子ストリート同様に女子ストリートでも激しい戦いが展開されている。上海大会では、世界ランキング1位に立っていた東京2020金メダリストの西矢が決勝進出を逃し、世界選手権を制覇した織田夢海(ゆめか)は予選で散った。ゆえにふたりは現在、日本勢3番手、5番手に立つ。
オリンピック予選第1フェーズ最後の大会となった3月のドバイ大会でもふたりは決勝進出を逃しており、そのドバイ大会、そしてオリンピック予選シリーズ第1戦・上海大会で表彰台に立ったのが、赤間凛音(りず)、吉沢恋(ここ)で、日本勢1番手と2番手。
世界ランキング2位の赤間はオリンピック予選で唯一2勝を上げるなど、怪我していた時期を除いて安定感を見せる一方、吉沢はオリンピック予選終盤にかけて成績を残し、日本勢5番手で挑んだ上海大会を経て日本勢2番手の世界ランキング3位に急浮上した。
上海大会で吉沢はベストトリック5本のうち最初の2本を決めて3位を死守したが、90点台の技を武器に持つ他のスケーターの存在を考えると、ブダペストで自身のスケートをもう一歩先に進める必要がある。そこにどう挑むのか。
一方、西矢も織田もドバイ大会、上海大会ではランで苦戦して予想しない形で大会を終えており、ブタペストはその悔しさをぶつける絶好の舞台となる。特に織田は東京2020出場を逃した悔しい思いを経験しているだけに、オリンピック出場にかける思いは人一倍強い。その中で織田が見せる戦いに注目したい。
このほか、怪我の影響で遅れをとっていたものの復帰後の大会でようやく笑顔も見られるようになった東京2020銅メダルの中山楓奈(ふうな)、伊藤美優が日本女子4番手、6番手で最終戦に挑む。伊藤は3番手の西矢とポイントの差に開きがあり、厳しい戦いを覚悟して臨むことになるだろう。
四十住さくらの復活劇に注目! 女子・男子パーク
女子パークでは、東京2020銀メダリストの開心那(ひらき・ここな)が上海大会で準優勝し、世界ランキング1位で十分なポイントを獲得しており、日本代表スケーターの中で唯一安全圏にいる。
その背中を追うのが2023年5月に後十字靭帯断裂の怪我を負った東京2020金メダリストの四十住(よそずみ)さくら。この1年間自分の体と向かいながら戦ってきた四十住は、上海大会で久々に表彰台(3位)に立って喜びを爆発させた。
パーク種目の戦いはランのみで構成され、上海大会で優勝したアリサ・トルー(オーストラリア)、準優勝の開はそれぞれ90点台を出して表彰台に。一方の四十住は80点台にとどまる3位。決勝後に、「最後(のランは)乗れなかったけど、乗れたら(滑り切っていたら)優勝してたと思うので、それが見えたのが良かったと思います」と語るなど、ブダペストに向けても自信をのぞかせており、完全に復活した滑りで大会を盛り上げることだろう。
開、四十住に続くのが、日本勢3番手の草木ひなので、4番手が長谷川瑞穂、5番手が菅原芽依、6番手が中村貴咲という顔ぶれ。4番手の長谷川の成績次第では、順位が大きく変わる可能性もあり、四十住、草木はできるだけ高い位置に食い込むことが求められる。菅原、中村は、上位4人にポイントで大きく差をつけられているが、表彰台を目指すことで道が見えてくるかもしれない。
そして男子パークには、永原悠路が唯一日本から出場資格を得て上海大会に登場し、上海大会では決勝進出ならず15位。世界ランキングでは現在14位に立っており、トップ20人が掴むことのできるオリンピック出場枠も遠くはない。
男子パークでは米国代表とブラジル代表のスケーターらのオリンピック代表争いがヒートアップしている。永原はそこに身を置き、オリンピック前哨戦とも言えるこの大会で自身が掲げるオリンピック表彰台という目標に向けて、技を磨き、経験を積むことが課題となる。
スケートボード日本代表、オリンピック予選シリーズ
日本勢は、女子ストリート6人、男子ストリート6人、女子パーク6人、男子パーク1人の合計19人がオリンピック予選シリーズ第1戦・第2戦の出場資格を得た。そのほか出場者全員の顔ぶれはこちら。
女子ストリート
- 西矢椛(にしや・もみじ/16)
- 織田夢海(おだ・ゆめか/17)
- 赤間凛音(あかま・りず/15)
- 中山楓奈(なかやま・ふうな/19)
- 吉沢恋(よしざわ・ここ/14)
- 伊藤美優(いとう・みゆう/17)
男子ストリート
- 白井空良(しらい・そら/22)
- 根附海龍(ねつけ・かいり/20)
- 小野寺吟雲(おのでら・ぎんう/14)
- 堀米雄斗(ほりごめ・ゆうと/25)
- 佐々木音憧(ささき・とあ/17)
- 青木勇貴斗(あおき・ゆきと/20)
女子パーク
- 開心那(ひらき・ここな/15)
- 草木ひなの(くさき・ひなの/16)
- 四十住さくら(よそずみ・さくら/22)
- 長谷川瑞穂(はぜがわ・みずほ/13)
- 菅原芽依(すがわら・めい/17)
- 中村貴咲(なかむら・きさ/24)
男子パーク
- 永原悠路(ながはら・ゆうろ/19)
※年齢はオリンピック予選シリーズ第2戦ブダペスト大会開幕となる2024年6月20日を基準とした。
スケートボード、オリンピック予選シリーズ第2戦ブダペスト日程
以下、現地時間と括弧内が日本時間(日本は7時間進んでいる)。
6月20日(木)
- 11:40(18:40)スケートボード女子パーク予選
- 16:20(23:20)スケートボード男子ストリート予選
6月21日(金)
- 11:40(18:40)スケートボード男子パーク予選
- 16:20(23:20)スケートボード女子ストリート予選
6月22日(土)
- 9:30(16:30)スケートボード女子パーク準決勝
- 11:15(18:15)スケートボード男子ストリート準決勝
- 15:30(22:30)スケートボード男子パーク準決勝
- 17:05(24:05)スケートボード女子ストリート準決勝
6月23日(日)
- 10:30(17:30)スケートボード女子パーク決勝
- 12:00(19:00)スケートボード男子ストリート決勝
- 15:00(22:00)スケートボード男子パーク決勝
- 17:00(24:00)スケートボード女子ストリート決勝
スケートボード、オリンピック予選シリーズ第2戦ブダペストのライブ配信情報
6月20日〜23日の4日間で予定されているオリンピック予選シリーズ第2戦ブダペスト大会の模様は、Olympics.comおよび公式アプリでライブ配信予定。
オリンピック予選シリーズのスケートボード競技
オリンピック予選シリーズとは、ブレイキン、スケートボード(ストリート、パーク)、BMXフリースタイル(パーク)、スポーツクライミングのオリンピック最終予選となる大会シリーズで、4競技のアスリートたちが一堂に会し、パリ2024オリンピック出場を目指して5月16日〜19日に上海、6月20日〜23日にブダペストで戦いを繰り広げる。
スケートボードのパーク、ストリート両種目では、成績に応じてランキングポイントが加算され、ブダペスト大会後のランキングなどをもとに、パリオリンピックに出場する22人(開催国枠、ユニバーサリティ枠を含む)が決まる(※)。各国が獲得できる出場枠は各種目最大3枠となっており、トップスケーターがひしめく日本勢にとっては、誰が日本代表の座を掴むのかが注目ポイントのひとつとなる。
※オリンピック各国代表の編成に関しては国内オリンピック委員会(NOC)が責任を持っており、パリ2024への選手の参加は、選手が属するNOCがパリ2024代表選手団を選出することにより確定する。