パリ2024オリンピックで生まれた歴史的快挙の数々

執筆者 Matt Nelsen
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A general view of the Eiffel Tower Stadium during the Olympic Games Paris 2024
写真: Mike Hewitt/Getty Images 2024

パリ2024オリンピックは、「広く開かれた大会」というコンセプトのもと、大会期間中に実際に選手が走ったコースで一般が参加できる市民マラソンが開催され、オリンピック史上初めて男女の出場選手数が等しくなり、開会式がスタジアムの外で行われるなど、数多くの画期的な新しい取り組みが施された大会となった。

今大会では、いったいどのような記録が新しく打ち立てられたのだろうか?また、どんな「初」が生まれた大会となったのだろうか?

14歳のアリサ・トゥルーは母国オーストラリア最年少のオリンピック金メダリストになり、「モンド」ことアルマンド・デュプランティス(スウェーデン)は自身9回目となる世界記録を樹立し歴史に名を刻んだ。

ここでは、パリで生まれた記録、歴史的快挙、初めての出来事などを紹介する。

オリンピックの「初」

ボツワナ、ドミニカ共和国、グアテマラ、セントルシアの4つの国内オリンピック委員会(NOC)が、パリ2024で初めて金メダルを獲得した。

母国初のオリンピック金メダル獲得という歴史を刻んだ選手たちの多くに共通していたのは、いずれも陸上競技だったこと。セントルシアのジュリアン・アルフレッドは女子100mで優勝、ドミニカ共和国のテア・ラフォンドは女子三段跳で歴史的な跳躍を見せ、ボツワナのレツィレ・テボゴは男子200mで金メダルを手にした。

射撃競技でも歴史的な金メダリストが誕生した。トラップ射撃でアドリアナ・ルアノが母国グアテマラに初のオリンピック金メダルをもたらし、女子スキートを制したチリのフランシスカ・クロベット・チャディは、同国で初の女性オリンピック金メダリストとなった。

パリ2024では、アフリカの選手たちも数々の歴史的なメダルを獲得した。エジプトのアハメド・エルゲンディ近代五種で自国NOC初の金メダルを獲得し、チュニジアのモハメド・ハリル・ジェンドゥービも自国NOC初のテコンドー金メダリストとして歴史に名を刻み、アルジェリアのカイリア・ヌムールはアフリカで初の体操競技金メダリストとなった。

また、アジア勢の活躍も目覚ましかった。大韓民国のキム・ウジンはオリンピックの同一大会で3つの金メダルを獲得した初の男子アーチェリー選手となり、日本の堀米雄斗スケートボードで初の快挙となるオリンピック連覇を果たした。

男子やり投で優勝したパキスタンのアルシャド・ナディームは自国NOCに陸上競技で初のメダルをもたらした。また、女子やり投で優勝を果たした北口榛花(はるか)は、日本女子陸上競技界で初めてとなるフィールド種目での金メダルに輝いた。

今大会で初めて登場したブレイキンでは、BガールAMI(湯浅亜実)金メダルに輝きフェンシングエペ男子個人の加納虹輝(かのう・こうき)が日本勢初の金メダルを獲得した。

ウズベキスタンのディヨラ・ケルディヨロワは、柔道で自国NOC初の金メダルを獲得。ホンコン・チャイナのビビアン・コンはフェンシングで自国NOC初の女性オリンピックチャンピオンとなった。

ボクシング女子75kg級で銅メダルに輝いたシンディ・ンガンバは、オリンピックでメダルを獲得した史上初のIOC難民選手団アスリートとなり、ベルギーのレムコ・エヴェネプールがオリンピックの同一大会で自転車競技のタイムトライアルとロードレースの両方を制した史上初の選手となるなど、歴史的な初記録は国境を越えて生まれた。

レスリング男子フリースタイル74kg級、アルバニアのチェルメン・ワリエフと、ボクシング男子51kg級、カーボベルデのダビド・デ・ピナが獲得した銅メダルも、それぞれのNOCにとって初のメダルとなった。

スポーツ界のスーパーレジェンドたち

パリ2024では多くの「初」が生まれたが、スポーツ界のレジェンドたちもまた、独自のストーリーを書き続けた。

セルビアのノバク・ジョコビッチは、これまでの4大会で逃していたテニス男子シングルスのオリンピック金メダルを、5大会目にしてついに手に入れた。37歳のジョコビッチはこの勝利により、テニス界で生涯ゴールデンスラム(4大オープンのすべてとオリンピックで優勝)を達成した。

アメリカ合衆国のシモーネ・バイルズは、体操競技女子団体、女子個人総合、女子跳馬で優勝し、パリ2024で見事な復活を遂げた。これによって、金メダル7個を含む計11個のメダルを獲得したバイルズは、ベラ・チャスラフスカと並び、オリンピック史上2番目に多くのメダルを獲得した体操選手となった。

チームメイトのケイティ・レデッキーも、パリ2024のプールで歴史を作った。

レデッキーは、パリ・ラ・デファンス・アリーナで開催された競泳女子800m自由形で金メダルを獲得し、4大会連続で同じ種目を制した史上2人目の競泳選手となった。さらに女子1500m自由形でも勝利を収めた彼女は、ラリサ・ラチニナと並び、女性アスリートによるオリンピック金メダル最多記録保持者となった。

レデッキーはLA28オリンピック への出場の可能性も否定していない。彼女は自身の記録をさらに伸ばすことになるのだろうか?4年後を楽しみに待とう。

パリ2024を最後に引退し、ロサンゼルス大会ではその姿を見ることができない選手の1人に、キューバのグレコローマンレスリングのスター、ミハイン・ロペスがいる。 彼は、史上初の5大会連続金メダル獲得という偉業を達成し、最高の形でそのキャリアを終えた。並外れたアスリートによる並外れた偉業だ。

より速く、より高く、そしてより強く

スウェーデンのアルマンド・デュプランティスは、陸上競技男子棒高跳で6m25という驚異的な高さをクリアし、9回目となる自身の世界記録を更新し金メダルを獲得した。

しかしパリ2024で記録を樹立したのは彼ひとりにとどまらない。アーチェリー、陸上競技、近代五種、スポーツクライミング、競泳、自転車トラックレースウエイトリフティングの7競技で合計19の世界新記録が生まれた。

そのいくつかを紹介すると、女子アーチェリーのランキングラウンドで大韓民国のイム・シヒョンは694点をマーク。女子400mハードルでは米国のシドニー・マクラフリン・レヴロンが自身の世界記録を更新。ポーランドのアレクサンドラ・ミロスワフスポーツクライミング女子スピード種目で自身が持つ世界記録を塗り替え、女子の自転車トラックレース、チームスプリントでは世界記録が5回も更新され、チームUSAのボビー・フィンケは男子1500m自由形で世界新記録を樹立して自身3つ目のオリンピック金メダルを獲得した。

世界記録に加え、アーチェリー、陸上競技、近代五種、射撃、スポーツクライミング、競泳、自転車トラックレース、ウエイトリフティングの8競技では数々のオリンピック新記録が誕生した。

また、カヌースプリントローイングでもオリンピック新記録が生まれ、カナダのケイティ・ヴィンセントがカヌースプリントの女子カヌーシングル200mで44秒12の世界新記録を樹立した。

「アレーレブルー!」フランスのアスリートが「光の都」を照らす

フランス代表の選手たちは、パリ2024で16回表彰台の頂点に立ち、その4分の1を競泳のレオン・マルシャンが占めた。彼は、200m平泳ぎ、200mバタフライ、200m個人メドレー、400m個人メドレーで勝利を収め、フランス国民を熱狂させた。

男子4x100mメドレーリレーの銅メダルを含む合計5つのメダル獲得は、フランス人選手としては、パリ1924オリンピックのフェンシングに出場したロジェ・デュクレ以来となる。

閉会式では「レオン、レオン、レオン」という大声援が鳴り響いたが、母国の観客から熱い声援を浴びたのは彼だけではない。

柔道男子100kg超級のテディ・リネールはで2つの金メダルに輝き、オリンピックで最多となる7つのメダルを獲得した柔道家としてフランスの伝説に名を刻んだ。

アントワーヌ・デュポンは、オリンピックの男子7人制ラグビーでフランスを初の金メダルに導き、カウリ・ヴァアストは、地元タヒチ島チョープーでフランス人サーファーとして初めて金メダルを手に入れた。

しかし、フランスが卓越した能力を発揮した最も印象的な瞬間は、自転車BMXレーシングの男子決勝戦で、ジョリス・ドゥデシルヴァン・アンドレロマン・マユーの3人がスタッドBMXサン・カンタン・アン・イヴリーヌの表彰台を独占した瞬間だったかもしれない。

夏季オリンピックでフランスが表彰台を独占したのは、1924年のパリ大会以来初めてのことであり、開催国であるフランスは、この快挙を誇りとともに祝った。

フランスは、16個の金メダル、26個の銀メダル、22個の銅メダルを獲得してパリ2024を終えた。

年齢とはただの「数字」

パリ2024では、スポーツの卓越性は国籍や性別だけでなく、年齢においても限界がないことを示した。

今大会に出場した最年少の選手は、閉会式当日に12歳になった中華人民共和国の女子スケートボーダー、ヂェン・ハオハオ。そして最年長は、スペインの65歳の馬術選手、フアン・アントニオ・ヒメネス・コボだった。

オーストラリアの14歳、アリサ・トゥルーと、米国の58歳、ローラ・クロートは、それぞれスケートボード女子パークと障害馬術団体で最年少と最年長のメダリストとなった。

また、ジョージアの射撃選手、ニーノ・サルクワゼは、ソウル1988から10大会連続でオリンピックに出場という新境地を開いた。

55歳の彼女は、パリ2024の開会式では3度目の栄誉となるジョージアの旗手を担い、出場した女子10mエアピストルでは38位、女子25mピストルでは40位という結果で大会を終えた。

日本代表選手を見ると、夏季オリンピック最多出場は障害馬術の杉谷泰造が日本選手史上最多7度目のオリンピック出場となった。年齢では、杉谷が最年長の47歳。最年少は、スケートボード男子ストリートの14歳、小野寺吟雲(ぎんう)だった。

パリ2024のハイライトやリプレイを見よう

パリ2024オリンピックのハイライトやリプレイは、Olympics.comで視聴できる。