エコフレンドリーなパリ2024の会場、オリンピック・アクアティクス・センターが落成

執筆者 Florian Bouhier
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Le Centre Aquatique Olympique à Saint-Denis
写真: VenhoevenCS + Ateliers 234 © Salem Mostefaoui

オリンピック・アクアティクス・センターは、ポルト・ド・ラ・シャペル・アリーナと同様、パリ2024オリンピック・パラリンピックのために建設された恒久的スポーツ施設のひとつである。

セーヌ・サン・ドニ県サン・ドニ市に位置し、この会場ではアーティスティックスイミング、飛込、および水球の予選ラウンドが開催される予定だ。

4月4日(木)、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とパリ2024大会組織委員会トニー・エスタンゲ会長が出席する中、オリンピック・アクアティクス・センターは正式に落成された。

「私たちは、オリンピック・アクアティクス・センターの鍵を受け取ることにとても感激しています。パリ大都市圏(メトロポール・デュ・グラン・パリ)の尽力によってこの壮大な施設が完成し、しかも予定よりひと月も早く落成されることを私たちはとても誇りに思います」とエスタンゲ会長は述べた。

マクロン大統領は、アスリートだけでなく一般の市民にとってもレガシーとなる施設の落成を喜んだ。

「私たちは世界を歓迎し、アスリートたちが多くのメダルを獲得し、それがフランスの誇りとして素晴らしい瞬間となることを望んでいます」と彼は述べた。「私たちはまた、オリンピック・パラリンピック選手村と同じように、この施設が今後も存続することを望んでいます。私たちにとってここは大きな遺産のひとつとなるのです」

今回、Olympics.comはオリンピック・アクアティクス・センターを訪問する機会を得た。ここでは、みなさんをこの新しい施設の見学ツアーにお連れしよう。

写真: Olympics.com

環境との調和を図るオリンピック・アクアティクス・センター

オリンピック・アクアティクス・センターに近づいていくと、最初に目を引くのはその湾曲した屋根だ。

2,700立方メートルを超える木材が使用され、長さ90メートルに及ぶ世界最大の凹型の木造フレームに支えられた屋根を持つこの施設は、まさに建築的偉業と言える。その木造の外観は、地区の将来の緑化計画と同調するように設計されている。

4,600平方メートル以上の太陽光発電パネルで覆われた屋根は、光をろ過し、雨水を集め、太陽からのエネルギーを蓄えることができる。屋根のその形状によって、エネルギー消費を最小限に抑えることができる。

「最小限の材料を使用し構造を軽くするため、屋根をできるだけ薄くすることにしました」と、プロジェクトを担当した2人の建築家のうちのひとりであるロール・メリュー氏(アトリエ2/3/4)は説明した。「屋根は90センチの厚さになります。形状については、プールでは空調に最もコストがかかることを念頭に検討を重ねた結果、張りのある凹型にするアイデアに至りました」

オリンピック・アクアティクス・センターに到着すると、そこがスタッド・ド・フランスのすぐそばにあることに驚くだろう。これら2つのスポーツ施設は、高速道路A1号線をまたぐ歩道橋によって結ばれている。この歩道橋は長さが100m、幅が20mあり、パリ2024オリンピックの期間中、観客が2つの会場間を自由に移動するのに十分なスペースを確保している。

外部でつながっているだけでなく、オリンピック・アクアティクス・センターとスタッド・ド・フランスは場内からもつながっており、建築家メリュー氏とセシリア・グロス氏(ヴェンホーヴェンCS)の2人によって設計されたユニークなビジュアル的側面が印象的だ。

オリンピック・アクアティクス・センターの中に入ると、東側には7月27日から8月10日まで行われる飛込競技で使用されるダイビングボードの後ろの出窓からスタッド・ド・フランスを見ることができる。

「私たちの考えは、周囲の風景をうまく背景に使うことでした」とメリュー氏は説明した。「プールの窓からスタッド・ド・フランスを眺め、ここがサン・ドニであることがわかります。高速道路も見えます。水着を着ていますが、都市の中心にいることを確認することができます。開放的で、心地よく、また来たくなるような建物を設計することが非常に重要でした。単に通り過ぎるだけでもいいし、ガラスに顔を押し付けて中を眺めてもいいのです」

写真: VenhoevenCS + Ateliers 234 © Salem Mostefaoui

オリンピック開催期間中、アクアティクス・センターには5,000席が用意されるが、その大部分はリサイクル資材から作られている。

「これらはペットボトルのキャップから作られた座席です。これは驚くべきことです」と、パリ大都市圏議長であるパトリック・オリエ氏は述べた。

アクアティクス・センターには、メインの競泳プール、飛込プール、25mトレーニングプール、そしてレクリエーションプールの合計4つのプールがある。

「アクアティクス・センターのプールのひとつは競泳用として50mの長さがあり、もうひとつは飛込用に17mの深さがあります。また、子どもたちが水と親しみ、水に対する恐怖心を克服できるよう学習するためのプールもあります。これらは一般に開放される予定です」とメリュー氏は説明した。

「さらに水深1.3mの25mプールもあります。これらを利用すれば、たくさんの水泳教室を開催することができるでしょう」

オリンピック・アクアティクス・センターの大きな利点のひとつはその多機能性にある。プールはモジュール式の斬新な構造になっており、2つの可動式プラットフォームと調整可能な可動床によって長さを変更することができ、多様なイベントを開催することができるようになっている。

写真: VenhoevenCS + Ateliers 234 © Salem Mostefaoui

レガシーとして永続することが期待されるオリンピック・アクアティクス・センター

オリンピック・アクアティクス・センターをサン・ドニ市に建設するという決定には、セーヌ・サン・ドニ県を注目させたいという期待があった。ここは首都パリを中心とするイル・ド・フランス地域圏の活発なエリアのひとつである。

パリ2024の後、オリンピック・アクアティクス・センターはイル・ド・フランス地域圏の自治体間連合であるパリ大都市圏の市民とアスリートのために開放される。

「契約の主体となったパリ大都市圏は、パリ2024オリンピック・パラリンピック閉幕後、この近代的な施設をレガシーとして残します。オリンピック・アクアティクス・センターには、異なるサイズの4つのプールがあり、そのうちのひとつは長さが可変式になっています。子どもから競技選手まで3,850人を収容することができます」とオリエ氏は説明した。

ソルニエ開発地域の中心に位置しているオリンピック・アクアティクス・センターは、積極的な都市変革の一環として、魅力的でアクセスしやすい地区を作り出す目的に貢献している。同センターは、約450本の木が植樹される1.5ヘクタールにわたる広大な公園の中心に位置する。

この最先端の施設では、フランスで最後に開催されてからほぼ40年となる2026年7月26日から8月9日までヨーロッパ水泳選手権が開催される予定だ。

「フランスにはこれほどの大きさのプールがありませんでした」とメリュー氏は話した。「だからこそ、この施設を建設したことは重要であり、オリンピックがそれを可能にしました」

オリンピック競技大会中、オリンピック・アクアティクス・センターはサン・ドニの主要な競技会場のひとつとなる。地元の家族、学校、団体を迎え入れ、競技会場の中心になる。

「この施設を私たちのレガシーのひとつとして残すためには、それを必要とする家族や子どもたちが泳ぎ方を学んだり、泳ぎの技術を向上させたりできるアイデアとプロジェクトを考え出さなければなりません」とオリエ氏は話した。

大きな出窓によって、施設内の活動を外部から見ることができ、多くの自然光を取り込むことができるようになっている。

「たとえばスポットライトだけに照らされる競技場とは異なり、ここは人々が日常生活の中で訪れる空間です」とメリュー氏は続けた。

「私たちが望んだのは、明るく活気のある空間でした。水の青さを主体として、緑の木々が並んでいるというアイデアを用いました」

フランスのマクロン大統領も、パリ2024競技大会後にオリンピック・アクアティクス・センターが提供するさまざまな可能性を強調した。同施設ではブラインドサッカーやパドルテニスのコート、1,000平方メートルのクライミングジムが設置される予定だ。

「この施設は、競技大会後に市民のためのスポーツ複合施設となります。子どもや若者たちが継続的に水中運動や水泳を行えるようにし、スポーツクライミング、サッカー、パドルテニスのための施設にもなります」と彼は述べた。

パリ2024オリンピック・パラリンピック後、オリンピック・アクアティクス・センターは公共の運動施設として、一般市民が運動を楽しむ場所となる。この施設をレガシーとして残す作業は、2024年10月に始まり、一般公開は2025年6月に予定されている。

「オリンピック・アクアティクス・センターの背景にある考えは、適切なバランスを達成することでした。それは全世界から見られることになります。世界中からたくさんの観客が集まります。私たちはこの施設を建設したことを誇りに思わなければなりません」とメリュー氏は付け加えた。

写真: VenhoevenCS + Ateliers 234 © Salem Mostefaoui

数字で見るオリンピック・アクアティクス・センター

  • 5,000席の座席(パリ2024オリンピック開催中)
  • 4つのプール:競泳プール、飛込プール、トレーニングプール、レクリエーションプール
  • 長さ100メートルの歩道橋
  • 4,680平方メートルの太陽光発電パネル
  • 2,700立方メートルのヨーロッパ産木材を使用
  • 1,300トンの鋼材を使用した6本の支柱
  • 2025年6月に一般公開