2019年、日本人初のNBAドラフト一巡目指名を受けた八村塁は、10月のNBA開幕戦で先発に名を連ね、華々しくデビューを飾った。試合を重ねるごとに相手チームからのマークやチーム内の競争は激しさを増しているが、規格外のルーキーは日々、成長を遂げている。
日本人初の開幕スタメンで「ダブルダブル」を披露
2019年6月、日本人で初めてNBAのドラフト一巡目指名を受け、ワシントン・ウィザーズに加入した八村塁。それだけでも日本国民に大きな驚きを与えたニュースだったが、彼にとってそれはスタートに過ぎなかった。
華々しいNBAデビューを飾ったのは10月23日、ダラス・マーベリックスとのシーズン開幕戦。日本人初のNBA先発出場を果たすと、開始から約2分半、速攻から左手シュートをねじ込み、NBA初得点をマークした。結局、この試合ではチーム内2番目の14得点、10リバウンドと2部門での2桁得点=「ダブルダブル」を記録し、シュート成功率は46.7%と約25分間のプレーで躍動した。
オクラホマシティ・サンダーとの第2戦目も先発に名を連ねると、開始1分45秒でのゴールを皮切りに波に乗り、約35分間の出場で19得点、5リバウンド、2アシストを記録。83-83の同点に追いつかれた残り4分9秒の場面では、試合の流れを左右するワンハンドシュートを沈め、チームのシーズン初勝利に大きく貢献した。
開幕から3試合連続スタメン出場となったサンアントニオ・スパーズ戦は122−124で惜敗している。それでも八村は豪快なダンクシュートを3発披露。この試合でも16得点と3試合連続の2桁得点に乗せ、8リバウンド、3アシスト、1スチール、1ブロックも記録。攻守にわたって大きな存在感を放った。
10月30日に行われた待望のホームゲーム初戦のヒューストン・ロケッツ戦では、スリーポイントシュートを3本すべて成功させるなど、自己最多を更新する23得点をマーク。開幕からの3試合で外し続けていた長距離シュートをようやく決めたことで、喜びを爆発させた。チームは158−159で悔しい黒星を喫している。
カワイ・レナードと重なる献身的な姿勢
チームの成績が開幕から1勝3敗と振るわないなか、新人の八村は気を吐いていた。
出場した4試合すべてで2桁得点を記録し、フィールドゴール(FG)成功率50%と安定した成績を残してきた。なかでも高く評価されているのが献身性だ。チームのエースであるブラッドリー・ビールを中心とした攻撃では、チームメートのシュートコース、スペースを確保するシーンが目立った。攻守の切り替えも素早く、黙々とチームプレーに徹する姿は、昨シーズンのNBAファイナルでMVPに選出されたカワイ・レナード(ロサンゼルス・クリッパーズ)と重ねる声も聞かれる。
リバウンドでは、3戦目までに今季の新人選手のなかで1位の1試合平均7.7リバウンドを記録した。ゴンザガ大学時代は、得点に集中するとリバウンドの意識が薄れてしまうこともあったが、開幕戦で記録した2桁のリバウンドをはじめ、自身の課題と向き合うことを疎かにしていない。
ウィザーズの練習場では、日々、誰よりも早くトレーニングを始めている八村の姿があるという。さらに、大学時代からの変化の一つに、コーナーから攻める機会が増えたことが挙げられる。ゴンサガ大学ではチームバランスを考慮してインサイドでのプレーに徹することが多かったが、インサイドに固執することなく、アウトサイドもリバウンドも 「何でもできる」のが八村の強み。八村の万能性は「バスケIQの高さ」としてアメリカのメディアからも高い評価を受けている。
13試合目でチームを今シーズン初の2連勝に導く働き
NBAプレーヤーとして上々のスタートを切った八村だが、第5戦目のミネソタ・ティンバーウルブズ戦ではプレーの精彩を欠き、約22分間の出場で4得点、2リバウンド。デビューから続いた連続2桁得点は4試合でストップした。チームは109−131で敗れている。
さらに、11月6日のインディアナ・ペイサーズ戦では、5本のシュートを放ちながらネットを揺らすことはなく、開幕から7戦目にして初めてノーゴールに終わった。スコアは106−121。チームはまたしても勝利をつかめなかった。
開幕以降、メディアや日米のバスケファンを沸かせる活躍を見せてきた八村に対して、相手チームが抱く警戒心は試合を重ねるごとに強くなり、NBAの壁に突き当たったかのように見えた。チーム内においても控え選手の台頭があり、先発の座をめぐる争いが熾烈を極めていくという声もあるなか、八村は11月22日のシャーロット・ホーネッツ戦まで13戦連続の先発出場を果たす。20日のサンアントニオ・スパーズ戦では15得点を記録。3試合ぶりの2桁得点で138−132の勝利に貢献すると、続くシャーロット・ホーネッツとの試合でも15得点を挙げてウィザーズを今シーズン初の2連勝に導いた。
八村のルーキーイヤーはまだ始まったばかり。日本バスケ界の歴史を塗り替える活躍を続けている21歳の若きスターの未来には、伸びしろしか感じない。富山県で生まれ育ち、努力で夢への道を切り拓いた彼なら、新たな壁さえ乗り越え、一回りも二回りもたくましく成長を遂げるだろう。