ネイサン・チェン: 集中力とチームと信じる力、「現実とは思えない」金メダル獲得を振り返る

4年前の悪夢を払拭し、金メダルに輝いたネイサン・チェン。北京2022での成功までの道のりについて、Olympics.com独占インタビューで語ってくれた

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(2022 Getty Images)

金メダルを首にかけると、実際の重量より重く感じるそうだ。

「かなりの重さです。信じられないですね」

アメリカ合衆国(アメリカ)代表の**ネイサン・チェンが、北京2022**冬季オリンピックのフィギュアスケート男子シングルで金メダルを獲得した翌る日に、Olympics.com独占インタビューに答えてくれた。

「長い間、この瞬間を夢に見てきましたが、実際に実現するとは思ってもいませんでした」と22歳の彼は付け加えた。「だから、これを首にかけていることをまだ現実のことに思えていないんです」

この24時間前、チェンは4年前にできなかったことをやってのけた。ショートプログラムのオープニングからフリースケーティングのフィナーレまで、オリンピックの舞台でベストを尽くしたのだ。

確かに失敗はあった。それでも、完全に軌道から外れるのではなく、困難に直面しても対応してきた。北京の首都体育館のスピーカーから "ロケットマン" のオープニングコードが流れて滑り始めても、彼は金メダルを獲得できるか不安だった。

「僕はただ、自分に自信をもたせようとしていたので。何かをやろうと心に決めれば、できるような感覚がなかったとしても、体が自然とその気持ちに引っ張られることもあります」

ライバルの**羽生結弦宇野昌磨鍵山優真**が先に演技を終わらせ、最後の最後に滑ることになっていたチェンにとって、この自己暗示は重要な意味があった。

「『自信をもってやれば、できるはずだ』と自分に言い聞かせました。プログラムが始まってからは『呼吸をして、体を氷に接地させる』という感覚でした」

「もう十分にやった」

コーチのラファエル・アルトゥニアン、振付師のシェイ=リン・ボーンマリー=フランス・デュブルイユは、チェンのスケーティングを外側からサポートしてくれたが、スポーツ心理学者のエリック・ポテラットとの共同作業は、チェンのメンタルに影響を与えた。

「彼は今大会中、助けてくれました」とチェンは言う。「僕が自分自身に言い聞かせてきたことのひとつは、この経験を楽しむことです。すでにもうオリンピックに参加していますが、これは自分が成し遂げたことです。オリンピックでの残りの旅は、このクレイジーな冒険を楽しみたい」

4年前と比べて、彼の大会に臨む姿勢は変わっていた。**平昌2018**に到着した際、チェンは金メダルを獲得することだけに集中していた。このアプローチは、結果的に団体戦のショートプログラムと、個人戦の両方で彼に挫折を与えてしまった。個人では5位に終わった。

北京2022では、より「ありのままに」というアプローチを採用した。しかし、すべてが終わる前にメダルを首にかけることはできなかった。アイスリンクに乗っても降りても、すべてのステップを踏まなければならなかった。

「結果というものは、自分ではコントロールできないものです」と彼は言った。「自分の思い通りにならないこともあります。しかし、その段階に到達するためには、思い込みも大切で、自然と体がついていきます。つまり、笑顔でパワーポーズをとることで、自信に満ちたモードになれるのです。たとえ自信がなくても、自信がもてるようになるのです」

最初は自信をもとうと戦っていた。チェンはプログラムの途中で思わず笑顔になり、パフォーマンスが終わった時には、必要なことをやり遂げたと思えるほどの純粋な喜び、高揚感と安堵感に包まれた。

その時の経験について、彼は「本当に特別でした」と語る。「『(失敗して、フリップが)シングルになった! 』とすぐに思いましたし、やり直したい』と思いました。でも、優勝するには、もう十分にやったと思っています。ラフ(コーチのニックネーム)は僕に『私にないものは、オリンピックチャンピオンだ』と言っていました。彼がどれだけオリンピック王者になりたかったかは知っています。だから、彼と一緒にその旅の一部になれたことを本当に嬉しく思っています」

「素晴らしい」経験と今後について

チェンは、自分が望んでいたものを手に入れた。金メダルを獲得しただけでなく、平昌2018の時とは違う方法で経験を積んだ。彼は、男子シングルの後の数日間、フィギュアスケート会場の客席に頻繁に姿を見せ、アイスダンスや女子シングル、ペアのチームUSA代表を応援していた。

現段階では、来月(3月)の世界選手権に出場するかは決まっていない。秋にはイェール大学に復学する予定で、オリンピックでの経験が与えてくれたものに満足しているという。

「今回のアメリカ代表の一員になれたことは、本当に幸運でした」とチェンは言う。「競技内外での親友がこのチームにいて、彼らと思い出を共有できたのは本当に素晴らしいことでした。親しいトレーニング仲間であるマライア・ベルミハル・ブレジナの2人が、今回のオリンピックでラフと一緒に参加しているのですから、本当に特別なことです」

次の目標に関しては定かではないものの、チェンはこの経験を将来に生かしていきたいと考えている。努力と成果はもちろん、それ以上に、スポーツへの純粋な情熱と愛情を持ち続けたアスリートのロールモデルになりたいと考えている。

彼は、これからフィギュアスケートを始めようとしている若い世代に、好きなことを見つけて、それを続けるようにアドバイスを送った。

「どんな目標を立てようとも、最も重要なのは競技に対する情熱と愛情をもち続けることだと思います。もちろん、上がり続けるだけではなくて、浮き沈みもあるでしょう。でも、落ち込んでいる時にチームを見つけ、そのチームに頼り、チームが自分を、そして自分の旅を支えてくれると信じることが大切だと思います」

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