ミカエラ・シフリン:悲しみも引き連れて

2度の冬季オリンピック王者に輝くアルペンスキーのスターが、父との死別の悲しみを乗り越えながら、開幕迫る北京2022への想いを赤裸々に語ってくれたOlympics.com単独インタビュー

文: Alessandro Poggi
写真: Atomic Austria GmbH

「笑顔も増えたと思いますし、ハッピーだなっていう気持ちも感じられるようになってきました。でも、まだ、『もう、大丈夫』とは言えないです」

アルペンスキーのスーパースター、ミカエラ・シフリンが、Olympics.comの単独インタビューで、その胸中を打ち明けた。

彼女の父、ジェフ・シフリンの突然の死からまもなく2年。彼女は、今もその悲しみと向き合っていると話す。

「今でも時々、歩けなくなるような感覚になるのです。突然のことでした。2020年2月3日、全てが変わってしまいました」

「あの時の気持ちは忘れられないですし、いつか消えてなくなるのかどうかも分かりません。でも、楽しかった思い出だったり、日常の楽しい瞬間があって、それに支えられています」

シフリンは、家族をはじめ、友人やチームメンバーがとにかく優しく接してくれて、彼らが自分を支えてくれていると続けた。

「この1年半、悲しみと向き合いながら、同時に、これまで以上に(支えてくれる人たちへの)感謝の気持ちが強くなりました」

あったのは、痛みだけ

最高の状態の維持や、ベストパフォーマンスを発揮するために、スポーツ心理学者はアスリートたちにとって、ますます重要な存在となっている。愛する父の死後、シフリンはスポーツ心理学者のもとを訪ねた。

「父は事故死でした。でも、誰も、どういう状況だったのか見ていないのです。手術でも施しようがなく、ただ時間との闘いで、十分な説明もありませんでした。あったのは、痛みだけ」

「こんな経験、人生で初めてでした。たとえば、私が怪我をした時は、手術すれば治りました。8週間もあれば骨折から回復できたし、膝が故障した時は、もう少し長い時間をかければ治りました。背中の時だって、少し予測できないことはあったけれど、最終的には治りました。でも、父のことは、明らかに私が経験したものとは違っていた」

父の死の悲しみから立ち直るには、まだ時間がかかるとシフリンは続ける。

「悲劇的な死別から回復するための説明書なんて、誰も持っていないのです。でも、スポーツ心理学者のカウンセリングを受けるようになって、人との関わりが自分を支えていると気づきました。それから、時間が解決してくれるということ。さらに、過去の自分を思い出してみること。これは、場合によります。過去を思い出せない時もありました。それでも、昔の自分がどんな気持ちだったかとか、どんな強みをもっていたかなどを、少しずつ思い出せるようになりました」

「私には、もう少し時間が必要だと思っています。集中力を取り戻して、それから、レースでの緊張感がどんな感じだったかとか、それに向かう燃えるような気持ちだったりとか、バラバラになってしまったパズルのピースを、ひとつひとつ組み合わせ始めたところです」

なにか持ち帰られたら

シフリンは、ソチ2014のアルペンスキー・スラロームにおいて、史上最年少で金メダリストに輝いた。彼女が、18歳の時だった。

その4年後、平昌2018ではメダル最有力として注目され、その予想通り、ジャイアントスラロームで金メダル、アルペンコンバインドで銀メダルを獲得した。

そんな彼女が描く、北京2022の目標を聞いた。

「アスリートとして、そして、ひとりの人間として、オリンピックを通じて多くのことを学びました。そして、オリンピックでは、いいことも悪いことも、両方の可能性が待っているということを、強く感じるようになりました」

「私はソチで、『絵に描いたような』オリンピックの経験をできたと思います。完璧な状態ではありませんでした。すべてが、ほんとうに、冗談抜きで、パーフェクトではなかった。だけど、『これが、アルペンスキー』と言えるような、そんな奇跡のような出来事がソチでした」

「そして、平昌では、逆に最悪な経験をしました。悪天候によるスケジュール変更だったり、風も強かった。でも、明らかなことは、オリンピックのようなスポーツイベントは、他にないということ。様々な冬のスポーツと一緒に、ひとつの国で、わずか2週間の間に、世界の人々がワクワクしながら、地球規模で開催される大会は他にありませんから」

「競技だったり、メダルばかりが注目されますが、オリンピックはそれだけじゃない。それ以上に、もっと大切なことがあります。スポーツを通じて友情が生まれ、それを世界へ届けられる。人とつながることの大切さを届けられる」

- ミカエラ・シフリン

「北京では、メダルを持ち帰ることを目標にしています。どのメダルの色でも、ひとつだけでもいい。なにか持ち帰られたら。これは、全てのアスリートが胸に抱いていることだと思います。オリンピックのメダルの夢を手放すなんて、アスリートにとっては本当に難しいことですから。だから、最後まで諦める必要はないです。私にとって本当に大切なことは、メダルだけではなく、抱えていること全てがうまくいくように実現させることです。メダル獲得なんて、コントロールできるわけがないのですから」

「できることは、どう競技するかということだけ。自分が思い描いた通りに競技する、それだけで十分です」

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