イ・チェウンは国内よりもむしろ国外で広く知られているアスリートだろう。
2022年に行われた北京冬季オリンピックに大韓民国代表選手団の最年少選手として出場。スノーボード男子ハーフパイプで18位という少し控えめな成績で大会を終えたが、その翌年3月にジョージア・バクリアニで開かれた国際スキー・スノーボード連盟(FIS)のスノーボード世界選手権に出場し、男子ハーフパイプで優勝。当時16歳10カ月、史上最年少の世界王者となった。
さらにその翌年、つまり今年の初めには大韓民国で行われた江原2024冬季ユースオリンピックのスノーボード競技で男子ハーフパイプおよびスロープスタイルで2冠に輝き、母国のウィンタースポーツのファンに強い印象を残した。イ・チェウンが次世代のリーダーとして地位を確立した瞬間だった。
2026年のミラノ・コルティナ冬季オリンピックを前に、Olympics.comではイ・チェウンにまつわる情報を5つの視点でまとめた。
イ・チェウンとは誰?
イ・チェウンは2006年4月11日生まれの18歳。江原2024のスノーボード男子スロープスタイルで金メダルを獲得した後、「正直なところ、このメダルは(私ではなく)父が取ったと思います」と話し、彼をサポートしてきた父親に感謝の気持ちを表現した。
大会を現地で見守った父は、息子の活躍を前に涙。そのシーンはソーシャルメディアで拡散され、話題を呼んだ。
イ・チェウンがスノーボード始めたのはいつ?
そんな父の存在を知ると、父親が彼を雪山へと導いたように思うかもしれない。しかし、そうではない。
彼が初めてスノーボードに触れたのは6歳のとき。父親を追いかけてスキー場に行く兄が羨ましくて一緒に連れて行ってほしいとねだったところ、父親がおもちゃのボードを買ってくれたという。 こうしてスノーボードを始めた彼は、他の冬季スポーツのスキーやスケートには目もくれず、ボードだけに夢中になったのだった。
イ・チェウンは何をした?
イ・チェウンは今年初めに開催された江原2024のスロープスタイル、ハーフパイプで2冠を達成したことはすでに紹介した通りだが、実は3冠も視野にいれていた。しかし、トレーニング中に怪我をしたことから、ビッグエアへの出場は叶わなかった。
これらの種目の中でも彼が最も得意とするのはハーフパイプ。ハーフパイプは文字通りU字型の斜面をジグザグに降りながら、パイプのふちで技を披露する種目だ。ここで彼はある選手に似ているとか、「第2の誰々」というニックネームで呼ばれることを望んでいない。
イ・チェウンは江原2024で2冠に輝いた直後、「スノーボードのハーフパイプといえばショーン・ホワイトではなく、自分の名前が出るまで(努力して)彼を超える選手になりたいです」と胸を張って抱負を語った。
イ・チェウンのトリックは?
イ・チェウンは昨年3月のFISスノーボード世界選手権ハーフパイプ決勝3本目でフロントサイド・ダブルコーク1440(4回転)、キャブ・ダブルコーク1440を連続で決めた。これらの技を連続で決めるには、滑降速度を維持しながら滞空時間を最大限伸ばすために力とスピードを絶妙に調和させる必要があるなど、高い技術を求められる。しかし彼は続けて、ダブルコーク1260(3回転半)をフロントサイド、バックサイドと連続して跳んで、圧巻の勝利を飾った。
昨年12月、中華人民共和国張家口で開催されたFISスノーボードW杯ハーフパイプの第1戦では、フロントサイドトリプルコーク1440を成功させた。これは、北京2022の金メダリストである平野歩夢が初めて成功させた技である。そして彼は今、ランの中でトリプルコークを連続で成功させる「バックトゥバックトリプル」を磨いている。
さらに11月、スイスのサースフェーでトリプルコーク1620(4回転半)を成功させ、「世界初」の称号をキャリアに加えた。
イ・チェウンの好きな音楽は?
チェウン(채운)という名前を初めて聞いたとき、「채운(採雲)」の文字から彼が競技中に空高く飛び上がりながら雲を掴むシーンを想像するかもしれないがそうではない。 チェウンは純韓国語で「家を幸せで満たす」という意味なのだそう。
イ・チェウンのインスタグラムのIDは@lilkeytakiで、ヒップホップミュージシャンのリル・ウェイン(Lil Wayne)の名前からヒントを得たハンドルネームだという。 彼は普段、オールドスクールのヒップホップ音楽をよく聴くようだが、特別な理由はなく、ただ気分が良くなるから。次のオリンピックでは、彼のパフォーマンス時のBGMにノトーリアス B.I.G.の「Warning」をリクエストするというイ・チェウン。これは、ライバルたちへの警告のメッセージなのかもしれない。