阿部詩、2連覇の前に立ちはだかる挑戦者たち/パリ2024 柔道女子

執筆者 Chiaki Nishimura
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Uta Abe of Team Japan
写真: 2021 Getty Images

東京2020オリンピックでは兄妹で同日に金メダルを獲得し、史上初めての偉業を成し遂げた柔道阿部詩(うた)・阿部一二三(ひふみ)兄妹。柔道大国のフランス開催となるパリ2024オリンピックで、再び阿部兄妹が同日金メダルを手にするのかが注目を集めている。

妹の阿部詩は、Olympics.comのインタビューで「今回オリンピックで(歴史の)2ページ目を刻みたいなと思ってます」と語るなど自信をのぞかせる一方、パリ2024ではノーシードで戦いに挑むことになる。2連覇に向けた決戦の日となる7月28日、どんな相手と対戦することになるのだろうか。

阿部詩、2回戦で世界ランク1位と対戦か

2連覇を達成するためにはどんな相手とあたろうとも、全員を倒さなければならい。それは紛れもない事実だ。

国際大会への出場が少なかった阿部は今大会でシードを獲るのに十分な世界ランキングに位置しておらず、ノーシードで戦いに挑む。1回戦は出口ケリー(カナダ)と対戦し、勝利をおさめたら2回戦で世界ランキング1位のディヨラ・ケルディヨロワ(ウズベキスタン)とあたることになる。

7月に24歳になったばかりの阿部と、同じく7月に26歳になったケルディヨロワは、2023年の世界選手権・決勝で対戦し、このときは阿部が一本勝ちをおさめて優勝を飾っている。しかしケルディヨロワは昨年秋のアジア競技大会、今年2月のグランドスラムを制しており、両大会に阿部が出場していなかったとはいえ、自信を高めてパリに乗り込んでくることだろう。緊迫した戦いになることは想像に難くない。

フランス代表、アマンディーヌ・ブシャール

阿部がケルディヨロワとの試合を制してそのまま順当に勝ち上がっていけば、準決勝で第4シードのアマンディーヌ・ブシャール(フランス)と対戦する可能性が高い。東京2020では阿部に敗れて銀メダルを獲得したブシャールが地元ファンの声援を味方につければ阿部にとって強敵となる。

しかし、阿部はアウェイの環境になることも想定済みだ。6月に行われたOlympics.comのインタビューで「畳の上に上がってしまえば、あまりそこは関係なく、自分の柔道をやるだけかなと思う。アウェーの中でしっかり勝ち上がるところが一番楽しいかなと思うので、どんな試合になるんだろうってのはワクワクしてます」と勝負師の気質を覗かせており、対戦が実現すればフランスでも大注目の一戦となる。

東京2002女子48kg級金のディストリア・クラスニキか、オデッテ・ジュフリーダか

トーナメントの反対側では、第2シードのディストリア・クラスニキ(コソボ)、第3シードのオデッテ・ジュフリーダ(イタリア)が戦いを展開する。

クラスニキは東京2020の女子48kg級で金メダルを獲得している実力者。東京大会以前は52kg級で戦っており、大会後には再び階級を変更し、世界選手権で4度の優勝を誇る阿部の独壇場となっている階級に戻ってきた。2022年以降、阿部とクラスニキは2度対戦していずれも阿部が勝利を飾っている。

一方、ジュフリーダはリオ2016で銀メダルを獲得し、東京2020では準決勝で阿部に敗れて銅メダル。パリ2024ではまだ手にしていない色のメダルを夢見ていることだろう。阿部が出場しなかった今年5月の世界選手権では初優勝を果たしており、パリ2024の女子52kg級を盛り上げる柔道家となることは間違いない。

阿部詩「一番強い自分で金メダルを取りたい」

今大会で「兄妹同日の2連覇」という目標を掲げる阿部が目指すところは、絶対的な強さ。Olympics.comのインタビューでそのことについて、こう語っている。

「誰が見ても絶対に負けない、負ける姿が想像できないとか、言葉で表せないぐらい強い選手になりたいです」

「吉田沙保里さんだったら霊長類最強、井上尚弥さんだったら怪物っていう風によくニュースとかで見るんですけど、そういうのをつけられる選手になりたいなと思います」

パリ2024は自身の強さを再び世界に示し、その地位を確固たるものにする絶好の機会となる。

「兄妹で優勝するというのは、東京オリンピックのときにひとつ歴史を作れたかなと思うので、今回オリンピックで2ページ目を刻みたいなという風には思ってます」

「オリンピックという舞台を噛み締めて、畳の上では自分自身のパフォーマンスを100%できるように、一番強い自分で金メダルを取りたいなと思います」。