河村勇輝と男子バスケットボール日本代表のパリでの合言葉「ショック・ザ・ワールド」
チャンスが河村勇輝の扉を叩いている。
日本バスケットボール界で急成長中のポイントガード河村は、パリ2024で自身初となるオリンピックに出場する。オリンピックの後は、NBAチームのひとつ、メンフィス・グリズリーズ(アメリカ合衆国テネシー州)とのエグジビット10契約を締結する予定となっている。締結後は、メンフィスに渡ってトレーニングキャンプに参加し、10月開幕のNBA 2024-25年シーズンでの本契約を目指す。
オリンピックでの戦いやNBAへのチャレンジは、日本選手にとってハードルが高いのは事実だろう。しかし、最も急成長しているアジアバスケットボール界のホープである日本代表チーム「AKATSUKI JAPAN」は、国内外から大きく注目され、多くの期待が寄せられている。昨年のFIBAワールドカップで日本中を包んだ歓喜と興奮の旋風が、今度はパリ2024でも巻き起こることになるかもしれない。
「すごくワクワクもしますし、また緊張感もあります」と、河村はOlympics.comの行った独占インタビューで話した。河村ら男子日本代表(世界ランキング26位)は、7月27日から始まるパリ2024オリンピック男子バスケットボールのグループBで、ワールドカップ2023優勝国のドイツ(同3位)、開催国で東京2020銀メダルのフランス(同9位)、そしてブラジル(同12位)と予選ラウンドで対戦する。
「(興奮と緊張感のよい)バランスがある今、よりバスケットボールに集中できていると感じています」
「オリンピックは12チームしか出場しないのですが、どこのチームと当たっても自分たちよりも格上のチームとの対戦になります。チームとしてはベスト8、そして合言葉は『ショック・ザ・ワールド(世界を驚かせよう)』を掲げています」
「必ず、この『ショック・ザ・ワールド』を達成して、ベスト8を達成できるイメージはできています」と河村は意気込んだ。
河村勇輝、「自信はあります」
男子日本代表チームは、東京2020で女子日本代表の銀メダル獲得を導いたヘッドコーチ、トム・ホーバスの下で、予選を勝ち抜いて48年ぶりとなるオリンピック出場を果たした。東京2020には開催国代表として出場したが、スロベニア、スペイン、アルゼンチン各代表チームと戦い全敗を喫した。
昨年、沖縄で開催されたワールドカップ2023で男子日本代表は、NBAスターのラウリ・マルカネンを擁するフィンランドに1次ラウンドで勝利し、17年ぶりとなるワールドカップでの勝利、欧州勢から59年ぶりとなる1勝を挙げた。1次ラウンドの同グループでは、優勝国となったドイツとオーストラリアとも戦ったが敗北に終わった。
しかし、順位決定ラウンドで、日本代表はベネズエラとカーボベルデに勝利したことで3勝を挙げてアジア1位となり、ついにパリの切符をつかみ取った。
スピードあふれるプレーを誇る23歳の河村は、ワールドカップ2023で最も活躍した選手のひとりだった。1試合あたりのアシスト数(7.6)は全出場選手の中で第3位となった。平均出場時間(23.8分)と平均得点(13.6点)はチーム3位となり、日本代表の躍進に貢献した。ドキュメンタリー映画「BELIEVE日本バスケを諦めなかった男たち」が国内で公開されるなど、男子日本代表チーム「AKATSUKI JAPAN」の人気が高まっている中、河村の誠実な姿勢と親しみやすい表情がさらにその人気に拍車をかけている。
パリ2024での男子日本代表の目標は予選ラウンド・グループBを抜け出し、準々決勝(ベスト8)に進出することだ。これが達成できれば日本バスケットボール史上初の快挙となる。
男子日本代表のパリでの初戦は、NBAブルックリン・ネッツに所属するポイントガード、デニス・シュルーダーと、オーランド・マジックでプレーするバグナー兄弟、モリツ(センター)とフランツ(スモールフォワード)を擁するドイツとの戦いとなる。河村は、シュルーダーとマッチアップすることになるだろう。
ドイツとの再戦に向けて、勝つ自信があるかどうか河村に尋ねると、「自信はあります」と明快に答えた。
「(2023年の)ワールドカップを戦って、そして負けた経験があるというのは、必ず僕たちにとってよい影響を与えてくれると思いますし、どう戦ったら負けるのかということもわかった試合だと思います。逆に、どうすれば自分たちの流れになるかというのも見えた試合だったと思います」と河村は続けた。
「(ワールドカップのドイツ戦で)できたことだったり、通用したところを今回のパリオリンピックでより多い時間出すことができればと思います。また、シュルーダー選手が中心となるので、そこを僕がディフェンスで少しでもストレスをかけて、ドイツのオフェンスのリズムを崩していければと思っています」
「ドイツはワールドカップ優勝チームでもありますし、ワールドカップでは初戦で勝てなかったチームでもあるので、(パリでは)リベンジするよい機会になればと思っています」と抱負を話した。
河村勇輝、パリから世界を驚かせたい
河村は、ワールドカップ2023でのパフォーマンスがスカウトの目を引いた。
7月7日、メンフィス・グリズリーズが河村にエグジビット10契約を提案したことが発表された。この契約によって河村は、プレシーズンのトレーニングキャンプに参加することができるが、2024-25年シーズンからグリズリーズと傘下のゲータレード・リーグ(Gリーグ)でプレーすることを可能にする2ウェイ契約への切り替えを目指す。
今年ネブラスカ大学を卒業したチームメイトの富永啓生は、7月にインディアナ・ペイサーズと同じエグジビット10契約を締結している。
契約について発表される前から海外でのプレーを望んでいることを公表していた河村だが、パリ大会を個人的なアピールの場として利用したり、契約に向けて活用するつもりはないと話す。
河村の試合に対する意気込みは明確だ。チームが決勝トーナメントに進出することに貢献したい。
「正直なところ、本当に自分の夢に向かってエゴを出してプレーしてしまうと、チームによい影響を与えられないと僕は思っていますので、まずは何よりチームの目標を達成するために自分が求められることを遂行したいと思います」と話す河村。まだ小学生だった頃の河村は、ロンドン2012のスペインとアメリカ合衆国の決勝をテレビで録画して何度も見返した記憶があるという。
「そうすれば自ずと海外から見て素晴らしい選手と思ってもらえれば最高ですが、まずは求められていることを忠実に、チームのためにプレーするということが根底にあります」
そして、ドイツ戦の後にはビクター・ウェンバンヤマを擁するフランス代表との対戦となる。身長224cmのサンアントニオ・スパーズのスーパースター、ウェンバンヤマの活躍が開催国フランスで大きく期待される中、日本との対戦は多くの注目を浴びるだろう。
「(フランス代表とプレーすることが)めちゃくちゃ楽しみです」と彼は言った。
「開催国でもあるので、必ず僕たちの試合は注目されると思いますし、注目されている中で、フランス相手にしっかりと自分たちが日本のバスケを展開して、必ず勝って、世界中を日本のバスケットボールで驚かせること(『ショック・ザ・ワールド』)ができるんじゃないかと思っています」
ロサンゼルス・レイカーズで活躍する八村塁が代表メンバーに加わり、ワールドカップの頃とはさらに成長したAKATSUKI JAPANが、パリで世界を驚かせることは決して夢ではない。
「(ワールドカップでの経験によって)自分たちを信じ続けて戦い抜けば、どんな強豪国が相手でも戦えることを実感できたことは、オリンピックに向けてもとてもよいモチベーションであり、大きな自信になったと思っています」と、河村は力を込めた。
「(オリンピックは)バスケットボールのファンのみならず、本当にたくさんの方が注目する世界でいちばん大きな大会だと思うので、日本国内のみならず世界中に日本のバスケットボールの素晴らしさを伝えることのできるよいチャンスだと思っています」
河村勇輝(かわむら・ゆうき)
パリ2024オリンピック男子バスケットボール・グループB日本代表の競技日程
以下すべて現地時間(日本はパリより7時間進んでいる)。※日程は変更になる可能性もある。
予選ラウンド・グループB
7月27日(土)
- 13:30(日本時間 20:30)ドイツ vs 日本
7月30日(火)
- 17:15(日本時間 24:15)日本 vs フランス
8月2日(金)
- 11:00(日本時間 18:00)日本 vs ブラジル
決勝トーナメント
会場:ベルシー・アリーナ
8月6日(火)
- 11:00(日本時間 18:00)男子準々決勝
- 14:30(日本時間 21:30)男子準々決勝
- 18:00(日本時間 翌1:00)男子準々決勝
- 21:30(日本時間 翌4:30)男子準々決勝
8月8日(木)
- 17:30(日本時間 24:30)男子準決勝
- 21:00(日本時間 翌4:00)男子準決勝
8月10日(土)
- 11:00(日本時間 18:00)男子3位決定戦
- 21:30(日本時間 翌4:30)男子決勝