松田詩野「悔しい気持ちをモチベーションに変えて」掴んだパリ2024オリンピックへの切符/サーフィン

パリ 2024

パリ2024の出場権を条件付きで獲得し、その第1号選手となったサーフィンの松田詩野。Olympics.comのインタビューで今の思いを語った。

1 執筆者 Chiaki Nishimura
Matsuda Shino JPN
(ISA / Jersson Barboza)

「オリンピックに向けて努力してきた部分もあったので、このアジア枠を取ってパリオリンピックの切符を取れてすごく嬉しいです」

中央アメリカに位置するエルサルバドルで開催されているISAワールドサーフィンゲームズ2023で6月5日、サーフィン日本代表の松田詩野(しの)がパリ2024オリンピック出場権を条件付き(※)で獲得した。神奈川県茅ヶ崎出身の松田は、その喜びをこう表現した。

「オリンピックに向けて努力してきた」という言葉の奥には、2年前にこのエルサルバドルで経験した辛い記憶がある。その経験を力に変え、20歳の松田がオリンピックのチケットをようやく掴んだ。

Olympics.comのインタビューで松田が語ったパリ2024に向けた思い、そして彼女がサーファーとして目指す道とは?

※プエルトリコで行われるISAワールドサーフィンゲームズ2024への出場が条件となる。すべての出場権は、ISAワールドサーフィンゲームズ2024の終了後に行われる最終発表まで暫定となる。選手の出場に関しては、各選手の所属する国内オリンピック委員会の承認を得て決定となる。

松田詩野、6歳で出会ったサーフィン

2002年に神奈川県の茅ヶ崎市で生まれた松田は、幼いときに両親の影響でサーフィンを始めた。

「サーフィンは6歳ぐらいのときに始めました。家が海の近くで、両親がボディーボードとロングボードをやっていたので、それで地元のサーフィンスクールに入って始めたのがきっかけです」

「私のホームは波が小さめで、サーフィンを始めやすい場所です。私もそこでサーフィンを始めて、すごい楽しいっていう記憶が大きいです」

幼い頃から楽しい思い出とともにサーフィンにのめり込んでいった松田は、国内での大会で成績を残し、2016年には初めて日本代表(U-18)としてISA(国際サーフィン連盟)主催の世界ジュニア選手権に出場。以来、数々の大会を経験し、2018年のISA世界ジュニア選手権のU-16女子の部では個人2位に入り、日本代表の団体優勝に貢献した。

サーフィンは自然を相手にするスポーツであるだけに、自分の努力ではどうにもならないこともあれば、大会に出場して、勝ち負けに一喜一憂することもある。そんなことを教えてくれるサーフィンの存在は、松田が成長する過程で重要な位置を占めるようになった。

「サーフィンの大会では嬉しい気持ちや悔しい気持ち、 どっちも味わえて、その感情だったり経験が自分をすごく成長させてくれたので、サーフィンは自分の人生そのものかなって思います」と、愛おしい存在を語るかのような口調でサーフィンへの思いを松田は表現する。

掴み損ねた東京2020の切符

17歳で迎えた2019年のISAワールドサーフィンゲームズでは、アジア最高位の15位となり、東京2020オリンピックの出場権獲得はほぼ決まったものと思われていた。ところが、2021年の同大会の結果により、日本代表の座は、都筑有夢路(つづき・あむろ)と前田マヒナの両選手に渡ってしまう。そして、東京2020では都筑が銅メダルを獲得したことは皆の知るところだ。

松田が東京2020の出場権を逃した2021年ワールドサーフィンゲームズの会場は、奇しくも今回大会と同じエルサルバドル。今年の大会を前に、2年前の苦い記憶が松田の脳裏に浮かんだことだろう。

「前回エルサルバドルで、東京オリンピックに出られないって決まったときはすごく悔しくて」

当時の思いを振り返った松田は、こう続けた。

「すごい悔しい思いをしたんですけど、リベンジと思って、その思いを『絶対、次は自分がオリンピック(の出場権)を取るんだ』っていう気持ちに変えられました」とし、「いい経験だったなって思います」と明るく優しく語った。

松田の今大会のパフォーマンスを後押ししたのは、その強い気持ちと自信、そして海を感じるということ。

「自分で自分を一番信じてあげるということ。あと、このエルサルバドルは前に来たことがあるポイントだったので、自信を持って挑みました」

「20分のヒートの中では、波を2本、スコアすることを意識して、試合前は『自分を信じる』っていう気持ち。あとは海、波を感じて動く」と、集中力を高めて各ヒートに臨み、勝ち上がっていった。

「特に今日(6月5日)は、メインラウンドで最初負けちゃって、リパ(敗者復活ラウンド)に移ってそこで(パリ2024の)スポットを獲得できて、ジェットコースターのような1日だったんですけど、それでも立て直せる気持ちの強さとかを学べたし、経験できたので、そこは自分にとってすごく大きいことです」

松田詩野が語るパリ2024とタヒチ・チョープー

こうして掴んだパリ2024オリンピックへの出場権。2024年にプエルトリコで開催されるISAワールドサーフィンゲームズへの参加が条件となるが、その上で、パリ2024の会場となるタヒチ・チョープーに目を向ける。

チョープーといえば世界屈指のサーフスポットで、時に危険とも言われる大波で知られている。まだタヒチでサーフィンをしたことがないと話す松田は、「チョープーはすごいチャレンジしなきゃいけない場所」とした上で、今後タヒチで可能な限りの時間を過ごして、「体ももちろん、メンタルもトレーニングしてしっかりと戦える状態にこの1年で持っていきたいと思います」と計画を明かした。

来年に控えるそのパリ2024オリンピックや今後の活動を通じ、いち女性サーファーとしてこのスポーツの魅力を伝えるために力を尽くしたいと穏やかな口調で松田は続ける。

「オリンピックや(各種)大会で活躍して、サーフィンの素晴らしさを若い世代やサーフィンをしたことがない人にも伝えられるような存在になりたい」

「日本はウィメンズのサーファーが少ないので、もっと自分も活躍して、女性のサーファーを増やしたいなって思うし、女性ならではのサーフィンスタイルももちろんあると思うので、そういった良さを自分も強みとしてもっと向上させていきたいなって思います」

ISAワールドサーフィンゲームズ2023は6月7日までエルサルバドルで開催中。大会の模様はOlympics.comでライブ配信される。

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