スケートボード 根附海龍、経験を通じて得た手応えと自信

執筆者 Olympics.com
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Kiari Netsuke celebrates
写真: World Skate / Atiba Jefferson

12月に東京で開催された世界選手権で銀メダルを獲得したスケートボード・ストリートの根附海龍(ねつけ・かいり)。金髪のヘアスタイルが印象的な根附がOlympics.comのインタビューで躍動の2023年を振り返るとともに、オリンピックイヤーの2024年の目標を語った。

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2022年夏にローマから始まったスケートボード・ストリートのパリ2024オリンピック予選は現在開催中(2024年3月3日〜10日)のドバイ大会をもって第1フェーズを終え、第2フェーズとしてオリンピック予選シリーズ(5月上海、6月ブダペスト)へと続いていく。

ストリートの選手たちはこれまでの大会で課題を発見し、成長を続けきた。この期間に大きく飛躍した選手のひとりが、男子ストリート・スケーターの20歳、根附海龍(ねつけ・かいり)である。

2023年はオリンピック予選第4戦のローザンヌ大会で初めて決勝に進出し、12月に東京で行われた同第5戦をかねた世界選手権では白井空良(そら)、堀米雄斗らと一緒に表彰台(準優勝)に立ち、日本男子表彰台独占の一役者として大会そして日本のスケートファンを熱くした。

根附はパリ2024オリンピック予選が始まって以降、どのように自身を磨いてきたのか。Olympics.comでは根附にマイクを向け、躍動のきっかけを聞いた。

根附海龍「最初は雰囲気にのまれた」

2003年生まれの根附は、現在、スケートボードオリンピック予選の世界ランキングで日本勢3番手の6位に立つ。

アマチュア・スケーターにとって最高峰の大会とされる「TampaAM」で2019年に優勝して頭角を表した根附は、日本のトップストリートスケーターのひとりとして成長を続けたきた。数々の国際大会を経験する中、2022年夏に始まったオリンピック予選だけを見てみても、第1〜3戦で準々決勝敗退(23位、23位、20位)となったものの、第4戦で決勝に進出し4位、第5戦では準優勝と、着実に成果を出してきた。

「オリンピック予選もあって国際大会にいっぱい出るようになって、最初は周りに上手い人たちがいるので、雰囲気にのまれちゃったりとか、自分の滑りが思うようにいかなかったときとかがあった」、この数年をそう振り返る根附は、「だけど、いろいろ経験していく中で、自分もいろいろやれるようになって自信がついたっていうのが大きいですね」と迷いない口調で話す。

活動の場は日本にとどまらず、撮影のためにアメリカに行くこともある。「(アメリカで)『パート』っていうのを作って、それが(スケートボード雑誌の)スラッシャーで公開されて結構みんなが見てくれて、そこで注目が上がったっていうのも大きかったですね。自分のやっている技が話題になったので、そういうので自信がついたというのはある」と続ける。

根附海龍「自分の滑りで勝てたら最高」

「オリンピック予選で決勝に行ったのがスイス(ローザンヌ大会)が初めてだったんすけど、(準決勝から)ベストトリックが(採点の対象に)入って、そのベストトリックで自分のやっている技が結構点数が出たときには手応えを感じました」

オリンピック予選の競技フォーマットでは、予選、準々決勝は45秒でパーク内を自由に滑走する「ラン」のみで競われ、準決勝からは1発の技を競う「ベストトリック」5本が加わり、ランの高スコア1つと、ベストトリックの高スコア2つで順位を競う。ベストトリックは自分の勝負技を見せつける絶好の機会となり、そこで得た点数で根附は自信を積み重ねた。

そのスイス・ローザンヌの大会では2.24点差の4位で、根附は表彰台にもう一歩のところまで迫った。「4位になったんですけど、その差というのはそんな大きいものじゃないかなと思います」と、世界のトップ選手らに近づいていることを実感した。

その一方、この大会では心残りもある。

「ベストトリック1本目は無事に乗れて、2本目から結構攻めた技をやってたんですけど、2本目、3本目、4本目で連続でミスちゃって、最後は置きに(安全に)いった」

最後5本目のトリックで根附は89.07点で3位に立ったが、その後に滑ったジオバンニ・ビアンナ(ブラジル)が最後のトリックを決めて合計点で根附を上回り、銅メダルはヴィアナの手に渡った。

「最後置きにいかなくて、(やりたかった技で)成功していたら表彰台には乗ってたと思うんですけど、あそこを置きにいっちゃって負けたっていうのが悔しいですね」

こうした経験を経て、根附はオリンピック予選をかねて行われた日本初開催のスケートボード・ストリート世界選手権では準優勝で表彰台に立った。この結果によりランキングが15位から6位、日本人では5番手から3番手に浮上し、オリンピック日本代表最大3枠という狭き門の入り口も見えている。

東京オリンピックが日本に与えたインパクトについて、「自分のいつも滑っているパークでスクールとかやってるんですけど、初心者がすごく増えたりとか、高校の友達とかも『堀米雄斗すごいね』みたいなことを言っていたりして、普段だったらスケーターの名前が出てくることがまずなかったので、すごいびっくりしました」と根附。自身の2024年の目標として、オリンピックに出場して金メダルを獲得することをひとつの目標に掲げるが、それでも意識すぎることなく、自分らしさを追求する。

「意識しすぎちゃうと自分の滑りが変わってきちゃったりするので、あくまでも自分は自分で、自分の滑りたい滑りをして大会で勝てたら最高だなっていう感じで(いきたい)。出れたら出れたで、自分の表現をしたいなと思います、スケボーで」。