五十嵐カノア インタビュー、勉強することの大切さ

執筆者 Chiaki Nishimura
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Kanoa Igarashi
写真: Ryan Pierse

オリンピックを翌年に控えた2023年秋。五十嵐カノアがOlympics.comのインタビューに応え、銀メダルを獲得した東京2020オリンピック体験や子ども時代、サーフィンについて語った。インタビュー第2弾。 

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東京2020オリンピックサーフィン競技で銀メダルを獲得し、パリ2024オリンピックに向けてさらなる意欲を燃やす五十嵐カノアは、2023年のオフシーズンにアメリカ合衆国の名門ハーバード・ビジネス・スクールで勉強を始めた。

「学校に通ったり、トレーニングしたり、その2つの世界を両立させながら成長してきた」

こう語る五十嵐にとって、それは自然の決断だったのかもしれない。Olympics.comのインタビューで子ども時代の「五十嵐カノア」について尋ねてみると、「勉強すること」に関する家族から教えが浮かび上がってきた。

五十嵐カノア語る、家族の教え

日本人の両親のもと、五十嵐は米カリフォルニアで生まれ、サーフィンのメッカ、ハンティントンビーチで成長した。子どもの頃からサーフィンに明け暮れたという五十嵐カノアは、どんな子ども時代を過ごしたのか。やんちゃだったのか、それともいい子だったのか。

「いい子だったのかな。学校がメインのフォーカスだった」と、五十嵐は優しい表情で振り返る。

「(子どもの頃)家の中は完全に日本のカルチャーで、朝ごはんは白ごはんと納豆。家の中ではシューズ履いちゃ駄目。勉強がすごく大切で、学校が一番メインのフォーカスで、その次がサーフィンだった」

「『宿題をちゃんとできたらサーフィンに行っていいよ』というルールだったから、自分も意外とおとなしかったのかな。(だから)早く勉強を終わらせて、サーフィンに行くという感じだった」

そんな五十嵐だが、もちろん家族から怒られることもあった。特に強く覚えているのは宿題をしなかったときのこと。

「宿題をちゃんとやっていないと、いつもお母さんに怒られた。たまに波がいいときとか、『宿題もう終わったよ。サーフィン行ってもいい?』と聞いて、『勉強終わったんだったらいいよ』って言われて、サーフィンから帰ってきてから隠れて宿題をやっているのが見つかって、『宿題やっていなかったんじゃん!』ってすごく怒られた」と、五十嵐は笑う。

サーフィンも大切だけど、勉強することもすごく大切

「そう考えると、意外とちょっと悪かったのかな(笑)。波がいいときとかたまに学校に行くふりして、自転車でサーフィン行っちゃうとか(笑)。そういうときは本当に怒られた。でもやっぱり怒られたからこそ、自分も本当に学校の大切さを感じた。サーフィンも大切だけど、勉強することもすごく大切」

「それはアスリートとしても大切だったと思う。厳しく言われたことを、(今)ありがたく感じています」と、26歳の五十嵐は続ける。

学ぶことの大切さはアスリートとしての五十嵐カノアの未来を作る要素となっている。勝負の世界にいるアスリートにとって、たとえトップ選手であったとしても浮き沈みはつきもの。そんなとき子どもの頃に教えられた「勉強することの大切さ」が、五十嵐の支えとなる。

落ち込んでもそこから学ぶこと

「(アスリートにとってのターニングポイントは)毎年あるぐらいなんですよ。アップアンドダウンもいっぱいある。一番大切なのは、落ち込んで、大会とかで(成績が)そんなに良くないときに、そこから学ぶこと」

「オリンピックが2021年にあって、2022年はいい成績で、2023年はちょっと難しかった。(だけど)タイミングとしてはすごく大切だったのかなと思います。また2024年が大切な年になるということで、それも必要なことだったんだなと感じました」と続ける。

そして五十嵐は、「学ぶこと」と「トレーニングすること」との間に快適なバランスも見つけている。サーフィンに励む一方、名門ハーバード・ビジネス・スクールでの勉強をスタートさせた。

「学校に通ったり、トレーニングしたり、その2つの世界を両立させながら成長してきました。大きくなって学校の世界がなくなって、ここ数年はツアーに集中していたから勉強していなかった。でもここ1、2年は、以前は2ヵ月半くらいだったオフシーズンが、今は4ヵ月くらいある。だから、トレーニングやオリンピックイヤーに向けた準備だけでなく、余った時間をリカバリーの時間に充てたり、よりスマートになるために使ったり、そっちの世界でもレベルアップするために使ったりと、本当にいいバランスを取りたかった」

「僕はビジネスにも興味があるし、ビジネスやマーケティング、投資の仕組みにも興味がある。だから、オフシーズンをただリカバリーに費やすのではなく勉強して、アスリートとしてだけでなく、人間としてスマートに、より良い自分になるためにその時間を使えたらと思う」。

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