羽生結弦さん初の単独公演ツアー "RE_PRAY" 開幕!「ダンジョンというかボス戦というか、ひとつのステージ」

11月4日、羽生結弦さんの単独アイスショー "RE_PRAY" がさいたまスーパーアリーナにて初日を迎えた。羽生さんが紡ぐフィギュアとゲームの世界が融合した新しいパフォーマンスに、14,000人の観客だけでなく、グローバルライブ配信によって国境を越えて多くの人々が魅了された。

1 執筆者 Yukifumi Tanaka/田中幸文
フィギュア/ウオーミングアップする羽生さん 
(時事)

オリンピック2連覇を達成し、現在プロフィギュアスケーターとして活躍する羽生結弦さんがセルフプロデュースする単独公演のアイスショー第3弾「Yuzuru Hanyu ICE STORY 2nd "RE_PRAY" TOUR(以下:RE_PRAY)」が、11月4日にさいたまスーパーアリーナ(埼玉県さいたま市)にて埼玉公演の初日を迎えた。今回のアイスショーは、羽生さん自身初となるツアーでの開催となる。

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RE_PRAY 埼玉公演のチケットは完売しており、初日の4日は14,000人もの観客で会場が埋め尽くされた。

パフォーマーとしてはもちろんのこと、RE_PRAYの制作総指揮も執っている羽生さんは、今回のアイスショーについて自身の大きな要素だと認めるゲームの世界からの倫理観や価値観を物語の中に取り入れていると紹介していた。また、演出には前回ショーでもタッグを組んでいる人気コリオグラファーのMIKIKOさんが名を連ねている。

第3弾となる羽生さん単独のアイスショーでは、日本が世界に誇る有名なゲームのひとつであるファイナルファンタジーの楽曲「いつか終わる夢」や「破滅への使者」といった、これまでフィギュアスケートの大会では耳にしたことのないナンバーが使用され、また人気アーティストである椎名林檎さんの「鶏と蛇と豚」といったお経のイントロから始まるユニークな音楽を取り入れるなど、羽生さんが紡ぐフィギュアとゲームが融合したエンターテイメント性に溢れる誰も見たことのない独特の世界観が氷の上で披露された。さらに、羽生さんはトリプルアクセルを含む5連続ジャンプを成功させるなど、競技のルーティンには組み込まないようなコンビネーションジャンプのエレメンツで会場を沸かせ、巨大スクリーンや最新テクノロジーを用いたセット演出と共におよそ2時間半にも及ぶ全12曲のプログラムを完遂し、見る人々を圧倒した。

"RE_PRAY" は、全国各地にある映画館でのパブリックビューイングをはじめ、グローバルオンラインプラットフォームでのライブ配信も行われ、羽生さんは日本のみならず、国境を超えて世界中の多くの人々に美しいパフォーマンスを届け、プロになっても進化を続けるアスリートの姿を証明した。

「アスリートとして限界に挑みながら、いい演技ができるようにまた頑張りたい」

RE_PLAY初演の終了後、羽生さんはメディアのインタビューに応じ、ゲームをリセットして再度プレーを始める"re-play" になぞらえ、日本語へ直訳すると「再度祈る」という意味になる "RE_PRAY" というタイトルに込めた今回のアイスショーについて振り返った。

以下、インタビューの質問と羽生さんの回答を全文紹介する。

- 初日の公演を終えられて、率直な感想をお願いします。

「まず、もう本当に今日の開場ギリギリまで皆さんで徹夜しながら、この "RE_PRAY" という公演を作っていただいて、まずそこに感謝しかないですし、無事に皆さんの前でこうやって披露することができて、ひとつの作品としてのアイスストーリーというものをまず実行できることが、本当に幸せだなということを感じております」

- "RE_PRAY" は何にインスパイアされ、どういうテーマを見ていただきたいと思ったのか?

「そもそも自分自身、いろんなゲームだったりとか漫画だったりとか小説だったりとか、いろんなところから『自分の人生って何だろうな』とか、『命って尊いものだな』とか、本当にざっくり皆さんが感じているようなことを、僕自身もいろんな作品から受け取っていて。改めてゲームの中っていうのは命っていう概念が本当にある意味軽いというか、繰り返しできる。だからこそ、好奇心のままにいろんなことをそのキャラっていうものを使って、好奇心のままに進んでいける。それってすごく、現実の世界に当てはめてみたら、夢を掴みにいく原動力のある人間なのかもしれないし、逆に違う価値観っていうか、違う観点から見たら、とても恐ろしい人間なのかもしれないし…でも、それが繰り返しできるってなったら、きっと人は(夢を掴みにいくことを)するんだろうなみたいなことをちょっと考えていて。それを1回自分が選んできた選択肢っていうものが人生の中にあって、その選択肢の先に1回破滅っていうルートがあったとして、全ての障害を乗り越えて、夢を掴んで、なにか目標を掴んでっていう人生があったとして、それがもう1回繰り返されるんですが、皆さんは何を選ぶだろうか。皆さんが何を選んで、何を感じるのかなということを、このアイスストーリーの中で皆さんに考えてもらいたいというのが、今回のテーマです。このストーリー自体で…なんか難しい…(笑)一言でまとめるのが難しくて申し訳ないんですけど、このストーリー自体で答えを出してほしいというものではなくて、考えてもらいたい。その考えるっていうきっかけのひとつであってほしいなっていうのが、"RE_PRAY"っていう物語であり、作品だったかなっていうのを僕は思っています」

- 「破滅への使者」は、いろいろな演出がある中で競技会のようだった。その狙いや伝えたかったものとは?

「もともと6分間練習(6練)・試合形式みたいなことを、これからショーを作っていくに当たってやろうとは思っていたんですけど…今回は特に試合プロに近い構成にするに当たって、でも作品の中の一部であってほしいっていうのが強くあって…6練なんだけれども、ちゃんと曲に合っていて、それ自体もダンジョンというかボス戦というか、ひとつのステージみたいなものを演出として作っていったつもりです」

- 終盤、感極まっている様子に見えた。滑り終えた時の心境と、初の単独公演ツアーということで、プロ転向後の違いや決意を聞かせてほしい。

「やっぱり、これまでやってきたアイスショーとは全然違って。これ(RE_PRAY)はひとつのプログラムだけじゃなくて、ひとつの作品の中にいろいろなプログラムがあって、もちろん今までやってきたプログラムたちもあるんですけど、それが物語の中に入った時に、『全く違う見え方があるよね』とか、『こんな見え方があったんだな』ってことを、ひとつの流れで見せるということが趣旨なので。自分としては全く違った心意気でこのアイスストーリーに挑んでますし、何より自分が綴って自分が表現したいことを本当に多くの方々を巻き込んで作り上げていくことに、たまに怖くもなるんですけど、でも、こうやって皆さんが作り上げて下さったものをある意味プレッシャーを感じながら、責任を感じながら、滑らせていただく機会があって。大変だなとは思うんですけど、でもアスリートとして限界に挑みながら、いい演技ができるようにまた頑張りたいなという気持ちに改めてなりました」

「全部使い果たした…セーブできる…終わらないんだ…(笑)」

- 無音の演出など、新鮮なものだった。

「原曲と原作へのリスペクトがあって…メガロマニアという楽曲なんですけど、アンダーテールという物語があって、それの中の戦いのシーンがまず一番最初に無音で必殺技っていうのを繰り出すんです、敵が(笑)それがすごく無音で、バーッて敵の攻撃の音だけが聞こえるというシーンがあって、そういうのもカッコいいなと。ただストーリー的に、これを組み込んだら、もしかしたら今まではストーリー的になんとなく皆さんが見ている中で、プレーヤーの羽生結弦っていうのと、ゲーム内にいる8ビットの羽生結弦っていうのと、滑っている羽生結弦みたいなものが分離して見えたかもしれないけれども、(リンクに)そこで出てきて無音で、ひとつずつ作り上げていったら、『ゲーム内のキャラだったのか?』みたいなことが、だんだん辻褄が合ってくるみたいなことを、ちょっとずつ考えながら、どういう風に皆さんの頭の中を整理していくかみたいなことを演出、また物語の中でも考えていったつもりです」

- 試合ではできないコンビネーションジャンプの後、ガッツポーズが見えたような気がした。

「ガッツポーズというか、あれは、あのプログラム自体がラスボスというイメージでやっていて、最後 "CLEAR(=クリア)" が出るんですけど、戦い切ってやっと倒せたというところなんですよね。だから、倒しきった…全部使い果たした…セーブできる…終わらないんだ…(笑)また続く…みたいなイメージですかね。ただ、ある意味では繰り返されるというのが『リプレイ』の自分の中でのテーマなので、もちろん評外ジャンプにはなるかもしれないですけど、試合では使えないジャンプになるかもしれないですけど、オイラー・サルコウというのはある意味すごく繰り返されていくジャンプなので、テーマにもすごく沿っていいんじゃないかなというのと、音的にもすごくハマるかなということを考えました」

"RE_PRAY" 埼玉公演は、11月5日にも行われる。

また、2024年には以下の日程で佐賀と横浜でのRE_RRAYツアー公演も控えており、羽生さんは合計3都市・6公演を滑り抜く予定だ。チケット購入方法などRE_PRAYの最新情報は、公式サイトにて確認できる。

■概要(佐賀・横浜)

▼佐賀公演(2公演)

  • 会場:SAGAアリーナ(佐賀県佐賀市)
  • 日程:2024年1月12日・14日

▼横浜公演(2公演)

  • 会場:ぴあアリーナMM(神奈川県横浜市)
  • 日程:2024年2月17日・19日

公式サイト

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