オリンピック「金」を目指す、体操・谷川兄弟 世界選手権へ

パリ 2024

2019年の世界選手権に兄弟そろって出場し、男子団体総合の銅メダル獲得に貢献した谷川兄弟。3年の歳月を経て、再びこの舞台に戻ってくる。

1 執筆者 Chiaki Nishimura|公開日:10月25日
 Tanigawa (L) and Wataru Tanigawa during the Mens Parallel Bars final on day two of the 76th All Japan Artistic Gymnastics Apparatus Championships 
(2022 Getty Images)

体操の世界選手権の代表選考をかねて6月に行われた全日本種目別選手権を経て、残り2枠となった代表の座を掴み取った谷川航・谷川翔兄弟。10月29日〜11月6日に英リバプールで行われる体操・世界選手権は、彼らにとって夢に向けての大きな1歩となる。

その夢とは、兄弟で一緒にパリ2024オリンピックに出場し、金メダルを獲得すること。

谷川兄弟のこれまでの歩みを辿った。

東京2020、翔の代表落ち

1996年生まれの兄・航は、2021年に行われた東京2020オリンピックの体操団体総合で表彰台に立っていた。求めていた頂点ではなかったものの、団体メンバーが力を合わせて掴み取った栄光だったといえるだろう。しかし、その隣に弟・翔の姿はなかった。

2017年に初めて世界選手権のメンバー入りした航は、国内で安定した成績を残し、2019年までの3大会連続で世界選手権に出場し、東京2020の代表メンバーにも選出された。

そんな兄を持つ、3歳年下で1999年生まれの翔は、千葉の船橋市立船橋高校、順天堂大学と、兄が歩んできた道をたどり体操に励んできた。

19歳で迎えた2018年4月の全日本個人総合選手権では、11連覇がかかっていた内村航平や兄・航をおさえて史上最年少優勝。翌年の同大会で2連覇を達成し、2019年の世界選手権には兄弟そろって代表の座を手にし、団体総合の銅メダル獲得に貢献した。

有望なアスリートとして、兄と同様、翔が東京オリンピック代表の有力候補とされたことは当然のことだろう。

しかし、東京2020オリンピック1年の延期は翔にとって試練となる。

2020年末、翔は練習中に肩を負傷。回復までに時間を要し、代表選考会となった2021年4月の全日本選手権、翌月のNHK杯、そして6月の全日本種目別選手権と、思い描いが結果は得られず、東京オリンピック出場は叶わぬ夢となったのである。

全日本種目別選手権での返り咲き

翔は自分の思いを航に託し、「絶対オリンピックで金メダル取ってね」と兄を見送り、航は「(オリンピックで)いい演技できれば、翔に俺も頑張らなきゃなって思ってもらえると思う」と東京2020に向かった。結果は、団体総合の金メダルにわずか0.103点及ばず、堂々の銀メダルで航のオリンピックが終わった。

「兄弟でオリンピックはパリへ持ち越しです」とつづったあの日から、翔の気持ちはパリに向かっていた。東京大会後には、航の願いもここに重なり、パリへの道をふたりで歩み始めた。

その夢の舞台に向けて大きな1歩と言えるのが、2022年の世界選手権である。代表選考会を兼ねて行われた4月の天皇杯、5月のNHK杯ではふたり共に出遅れ、最後の選考会となるった6月の種目別選手権を迎えた。

世界選手権での団体総合を見据え、すでに代表入りしていた**橋本大輝**、神本雄也土井陵輔の弱点を補う力が試されたこの大会で、代表の座は残り2枠。航はつり輪や跳馬で、一方の翔はあん馬や平行棒で高いパフォーマンスを見せつけると、世界選手権メンバーとしてふたりの名が呼び上げられたのである。

悔しさを原動力に変えて励んできた翔と、弟の思いを背負ってオリンピックに出場し、今度は兄弟で出場するという強い思いを抱く航。ふたりの夢に近づく戦いがまもなく英リバプールで始まる。

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