フリースタイルスキーは今、史上最高の選手となるべく候補がひとりだけでなく、同時期にふたりもいるという幸運に恵まれている。中華人民共和国の**エイジング(アイリーン)グー(18)とエストニアのケリー・シルダル**(19)は、北京2022冬季オリンピックでフリースタイルスキーの歴史に名を刻むことになるだろう。
ローザンヌ2020冬季ユースオリンピックに出場し金メダルを獲得しているふたりが、2月8日のビッグエアに続き、14日のスロープスタイルでパフォーマンスを世界に披露する。
今回は、ふたりの生い立ちや性格、最新の成績情報と、お互いの友情と尊敬の念について、紹介していく。
国の誇り
グーとシルダルに共通する特徴は、自国最大のスポーツ界の新星というポジションに立っているというところだ。
シルダルは、インスタグラムで最も人気のあるエストニアのスポーツ選手で、88,000を超えるフォロワーがいる。「母国が自分を応援してくれるのは本当にうれしいことですが、街で見かけた人が自分のことをよく知っていると、つらい思いをすることもあります」と、彼女は言う。
二重国籍を持つグーは、ふたつの国からの期待に応えている。「アメリカにいるときはアメリカ人ですが、中国にいるときは中国人なんです」とESPN.comに語る彼女は、「私は、スポーツを国際的なものにしたいと思っています」と自身のメッセージを発信している。
また、両選手ともに、雪から離れた生活も楽しんでいる。グーは時々トップブランドなどのモデルとして働き、シルダルはユーチューバーとして活動し、それぞれに活躍している。
「充実した生活を送るには、いろいろなことができることが大切だと思っています。私はそれを楽しんでやっています。2019年にパリのファッションウィークに行きましたが、それはおそらく私の人生で最高の一週間でした」とグーは語っている。
グーとシルダルの躍進
最初にブレイクしたのはシルダルで、史上最年少の13歳でX ゲーム初の金メダルを獲得し、エストニア選手として初の金メダリストとなった。また2017年には、女子選手として初めてスイッチ1260ミュートと1440のメイクに成功する。
平昌2018を前に倒すべき存在と目されていたシルダルは、靭帯損傷で大会から遠ざかっていたが、彼女は力強くカムバックし、ローザンヌ2020でスロープスタイルのタイトルを獲得。X Gamesで5回のチャンピオン、Dew Tourで4回の優勝、ハーフパイプでは2019年の世界チャンピオンに輝いている。
「ケリーは、大会に出る前からアスリートとしての姿勢が見え隠れしていて、とても興味深い」と、ジェン・ハダック(米国)はフォーブスに語っている。「良いスキーヤーであることと、良い競技者であることは全く違います。彼女はそこで確実に私の期待を超えてきました」
グーに至っては、2020年のローザンヌ大会、2021年のXゲーム、2021年の世界選手権で、それぞれふたつの金メダルを獲得し、1大会につき3つのメダルを獲得することが当たり前になりつつある。
グーが絶好調であることを証明する必要があるとすれば、2021年11月の彼女の動画投稿を見ればわかる。彼女は女子選手で初めてダブルコーク1440の着氷に成功したのだ。
北京2022に向け、視界良好
今シーズンのハーフパイプは、グーがワールドカップ4大会すべてで優勝し、初のクリスタルグローブを手に入れるなど、圧倒的な強さを誇った。一方、シルバルはスロープスタイルで、クリスタルグローブ獲得へ向けてリードしている。
マンモス・マウンテンでグーを破った後、シルダルは「すごく興奮しています」と語った。「ここに来る途中で荷物を紛失してしまって、トレーニングができず、予選と決勝前にウォーミングアップしただけでした。なので、いい滑りができてうれしいです」
各種目で誰が優位に立っているかは明らかだが、ひとつだけ確かなことは、彼女らが互いに楽をすることはないということだ。
ライバルとは、尊敬すること
ユースオリンピック時代から、グーとシルダルは、ライバル関係で最も重要なのは、お互いを尊敬することであることを示してきた。
「最後のランの前、私はものすごく神経質になっていました」とローザンヌ2020でグーは言った。「ケリーは私の後ろからやってきて、"ねぇ、私はあなたにこれを着氷させてほしいな。"と言ってきたんです。それが私たちの仲間意識なんです。彼女はスキーヤーとしてだけでなく、人間としても素晴らしくて、8歳のときから尊敬しています。そんな彼女から0.5ポイント差なんて、すごいことですよ」
その思いは今も変わらない。「正直、今日は楽しむこと、自分の最大限の力を出し切って、このスポーツのレベルを押し上げること」と、2021年12月のデュー・ツアー(Dew Tour)の後にグーは言った。「自分がそのほんの一部の存在であることは、常に私の最大の目標です。ケリー(シルダル)やキャシー(シャープ)と一緒にここにいることは、いつも本当に刺激になります」
北京2022でふたりの初戦となった2月8日の冬季オリンピック新種目、フリースタイルスキー・ビッグエアでは、グーが初代金メダリストに輝いた一方で、シルダルは17位に沈み、上位12名が進出できる決勝トーナメントに出場できなかった。
次戦は2月14日のスロープスタイルで、18日にハーフパイプにも出場予定だ。ふたりの対戦に注目しよう。