国際スケート連盟(ISU)主催の「ISU 世界フィギュアスケート選手権大会2023」が3月22日から埼玉県さいたま市のさいたまスーパーアリーナで開催中。大会2日目の23日は男子シングルの前半ショートプログラム(SP)が行われた。
■宇野昌磨が今季世界最高
状態が懸念されていた宇野昌磨(トヨタ自動車)が王者にふさわしい演技を見せた。4回転フリップ、4回転トーループ+2回転トーループ、トリプルアクセルとすべてのジャンプをきれいに着氷。ステップシークエンスがレベル3になったことで「完璧ではなかった」としつつも、「出し切れた」という熱のこもった演技だった。
大会前には状態が悪いと明かし、22日には足首を負傷して練習を切り上げるアクシデントもあった。「今の自分でなにかできるか」。過去の経験や当日の調整を踏まえ、ジャンプの構成を変えないことを選択した。そしてその結果が、今シーズン世界最高となる104.63点。SPで首位に立ち、大会連覇を視界に捉えた。
演技前は「連覇を意識する余裕はなかった」という。25日のフリースケーティング(FS)に向け、「(連覇への)プレッシャーが自分に掛かるくらいの状態で臨めたら」と見据えた。
■宇野昌磨のコメント
出し切れたと思います。完璧なショートプログラムではありませんでしたけれども、ジャンプに限らず(ステップの)レベルも落としたみたいですが、久々に状態が悪いこともあって、感情を試合にぶつけるような、「さあ頑張るぞ」という気持ちで望みました。その分、うれしさがこみ上げてきました。
ひねった直後は「やばいな」と思ったんですけど、いろいろなサポートや運の良さ、予防していたこともあって、想像より遥かに少ない支障でした。朝の練習ももちろん、探り探りでやっていきました。
状態が悪いからといってなにか救済があるわけではないですし、自分にとってプラスになるものがあるわけではないので。今の自分でなにかできるか。フリップができないならほかのジャンプ。できそうなら絶対にフリップと考えていました。僕は過去に、直前に変えたジャンプで成功した例が少ないので「フリップでいこう」と決めました。練習ではいつもどおりの感じになってきていました。演技中は右足の支障はなく滑ることができました。
逆境に強いかはわからないですが、こういう経験も過去にたくさんしてきました。痛い中での練習も、当初はそんな練習は自分のためにならないと思っていましたけれども、していた時期もありました。こういう状況になったからこそ、逆に生きたのかなと思います。痛いときのジャンプをしたらどうなるかというのは予想できていました。練習でなんとなく調整ができていたと思います。試合中に痛いと思えているということは、それだけ緊張していないということなので、どちらでも対処できると思っていました。もう一回ひねらない限り、悪くなることはないと思うので、(FSに向けて)ループ、サルコウ、フリップという最初の3つのジャンプをどう調整していくかだと思います。
ショートの前は連覇とかを意識している余裕が全くなかったので、フリーではそういうプレッシャーが自分に掛かるくらいの状態で臨めたらと思います。
■友野一希は7位、山本草太は17位
友野一希(上野芝スケートクラブ)はジャンプのミスもあり、92.68点で7位発進。「苦手意識」があったという4回転サルコウで転倒があった。その後はきっちり立て直し、軽快なプログラムでファンを魅了。「楽しみながら演技ができた。失敗のあった中で92点は高得点」と振り返り、調子のいいというFSで「自分のすべてを出し切れたら」と巻き返しを誓った。
世界選手権初出場の山本草太(中京大学)はトリプルアクセルでの転倒など、3つのジャンプが決まらず。75.48点で17位だった。「思い切っていける立場ではあったのですが、どこか緊張感や難しさがあった」とSPの演技を振り返った。躍進のシーズンを締めくくるFSに向けて、「切り替えて頑張っていきたい」とした。
2位はパーフェクトな演技を見せたイリア・マリニン(アメリカ合衆国)で100.38点。99.64点の3位でチャ・ジュンファン(韓国)が続く。
■友野一希のコメント
楽しみながら演技ができました。失敗のあともしっかりと自分がやってきたことを、一つ一つ対処できたというか。(トリプル)アクセルもしっかりと決めることができました。成長したなと。たくさんの大舞台を経験してきたつもりですし、日本での世界選手権は少し違った雰囲気でしたけど、楽しんでできたんじゃないかと思います。
あの緊張感の中でよくまとめたなと思いますが、今シーズンは4回転サルコウに苦しめられていて。練習でも決まっているので、苦手意識だけだったと思うんですけど。機械的に行き過ぎたというか、もう少し勢いにまかせて行ってもよかったと思います。良くも悪くも、練習どおりでした。あれだけのミスで抑えて良かったと思います。
大口を叩くことになるかもしれませんが、105点を出すくらいの気持ちで来ていました。前回(の世界選手権)は101点だったので、自分は出せるだろうという謎の自信を持って挑んだつもりです。失敗のあった中で92点は高得点だと思います。回転も足りず、あれだけの激しい転倒の中でこの点数なので、成長を感じられる点数だったと思います。「100点行けたなぁ……」という悔しさがあるので、切り替えて。フリーはもっと調子がいいので、自分のすべてを出し切れたらと思います。
■山本草太のコメント
初めての世界選手権ということで、思い切っていける立場ではあったのですが、どこか緊張感や難しさがあったショートプログラムだと思います。そんなに簡単にはいかないので、切り替えてフリーで頑張っていきたいと思います。
(ジャンプのミス)は自分の弱さが出てしまったと思います。会場に入ってから、練習ではうまくできていたと思うんですけど、思い返すと、来るまでの練習も総合的な完成度は低かった部分があったと思います。だめだった方が今日出てしまったと思います。
6分間練習からうまくハマっていなかったのですが、その時からうまくいっていない僕に「がんばれ」とたくさんの声援が聞こえてきて、そのおかげで今日、笑顔で終えることができました。たくさんのお客さんのおかげで、なんとか滑りきれたと思います。
いろいろと整理して、またフリーに向けて頑張っていきたいと思います。
■日程
3月22日(水)
- 11:00 ペア SP
- 15:00 オープニングセレモニー
- 15:50 女子シングル SP
3月23日(木)
- 11:00 ペア FS
- 15:50 男子シングル SP
3月24日(金)
- 11:00 アイスダンス RD
- 17:20 女子シングル FS
3月25日(土)
- 12:30 アイスダンス FD
- 17:20 男子シングル FS
3月26日(日)
- 15:00 エキシビジョン
SP…ショートプログラム
FS...フリースケーティング
RD…リズムダンス
FD…フリーダンス