パリ2024に向けて注目のフェンシング・日本人選手

パリ 2024

パリ2024オリンピックに向け、多くのアスリートたちが日本代表の座をかけて練習に励み、それぞれの戦いに挑んでいる。パリへの切符を掴み、大会で輝くのは誰なのか? 注目の日本人選手をシリーズで紹介したい。フェンシング編。

1 執筆者 Chiaki Nishimura
Japanese fencer
(公益社団法⼈⽇本フェンシング協会)

パリ2024オリンピック出場をかけたランキングポイントの獲得期間が4月3日に始まり、オリンピックレースが本格的にスタートしたフェンシング競技。2024年4月1日までの期間で選手たちは大会に出場して好成績を残し、ポイントを重ねていく。

日本勢は、東京2020オリンピックの男子エペ団体で日本史上初の金メダルして以来、国際舞台における快進撃が続いている。2023年2月には女子サーブルの江村美咲が日本女子選手として初めて世界ランキング1位に輝き、同月に男子フルーレ団体がワールドカップで12年ぶりに表彰台の頂点に立った。

パリ2024に向けて期待が高まる日本フェンシング界では今、どんな選手が勢いを増しているのか。現状を探った。

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(2021 Getty Images)

エペの注目選手

全身のどこを突いてもポイントが得られるシンプルさと、さまざまな攻防が展開されることなどにより、最も人気が高い種目がエペ。ヨーロッパを中心に選手層が厚いことでも知られている。

過去のオリンピックで銀メダル2つを獲得していたフルーレ種目とは異なり、日本勢にとってはメダルが最も遠い場所にあるように感じられていた種目だが、東京2020オリンピックでは、宇山賢(うやま・さとる/31)、山田優(まさる/28)、加納虹輝(こうき/25)、 見延和靖(みのべ・かずやす/35)が男子団体で金メダルを獲得。「エペ陣」と「ジーンと感動させる」を掛け合わせた「エペジーーン」の造語と共に日本でのエペ人気を一気に押し上げた。

世界ランキングで4位(2023年4月現在、以下同)に位置している日本チームを率いるのが、35歳の見延和靖。2018/2019シーズンに世界ランキング1位の年間王者に輝いた見延は、2022年の世界選手権では個人種目で準優勝となり、日本男子として初めて世界選手権の個人メダルを獲得した。

一方、見延が日本代表選手に選出されるようになった2008年に開催された北京オリンピックをテレビで見たのをきっかけにフェンシングを始めた25歳の加納虹輝は、2年連続で全日本選手権を制する実力の持ち主。2月に行われたワールドカップでは自身2度目の金メダルを獲得し、団体3位にも貢献。世界ランキングでは3位に立つ。

このほか、東京2020でエースとして活躍し、パリでの連覇や個人金メダルを目指す山田優や、その山田を東京オリンピック直後の全日本選手権で倒し、2022年世界選手権で団体銅メダルに貢献した20歳の松本龍、2023年1月のグランプリ・ドーハ大会で銅メダルを獲得した25歳の古俣聖(こまた・あきら)もパリ2024に向けて注目される選手だ。

日本女子エペを長年率いてきたのは、東京オリンピックにただひとり出場した36歳の佐藤希望ロンドン2012リオ2016、東京2020のオリンピック3大会に出場し、2児の母でもある。

佐藤は全日本選手権で7度の優勝を誇り、2020年、2021年で2連覇を達成。しかし、3連覇をかけて挑んだ全日本では3回戦で敗退し、決勝では吉松琳果(りんか/24)と黒木夢(28)が決勝でぶつかり合って黒木が初優勝を飾った。

このほか女子エペでは、馬場晴菜(25)や吉村美穂(25)、寺山珠樹(21)が鎬を削る。

サーブルの注目選手

両腕、頭部を含む上半身を突くことでポイントが得られるサーブル種目では、東京2020オリンピック日本代表の江村美咲の成長が止まらない。

24歳の江村は、2022年5月にチュニジアで行われたワールドカップで日本女子として初めて金メダルを首にかけると、同7月にエジプト・カイロで行われた世界選手権で優勝。2023年2月に世界ランキング女子サーブル個人で世界の頂点に立った。

また、江村が率いる女子サーブル団体では、2022年の世界選手権で、東京オリンピック日本代表の福島史帆実(しほみ/27)、小林かなえ(25)、尾崎世梨(20)の日本代表チームが日本初の銅メダルを獲得。

中でも注目の選手として挙げられるのが、2002年生まれの尾崎世梨(せり)だろう。昨年の国内ランキングで3位の尾崎は、世界選手権での銅メダルに貢献後、年末の全日本選手権では決勝まで勝ち上がり、決勝では江村に敗れたものの、堂々の準優勝となった。北海道出身の20歳は「パリオリンピックでのメダル獲得」を目標に練習に励む。

(公益社団法⼈⽇本フェンシング協会)

日本男子サーブル選手の国際舞台での活躍は、オリンピック・フェンシング6種目の中で目立つ方ではないが、それでも2021年の全日本を制覇した吉⽥健⼈(けんと/30)が同年11月のグランプリ・オルレアン大会で日本男子サーブル選手として史上初のメダルを獲得するなど、新たな扉を開いている。

一方、2022年の全日本で吉田との決勝を制したのは、吉田と共に東京2020に出場したストリーツ海飛(かいと/28)。ストリーツにとっては3度目の日本一で、世界ランキングは日本勢トップの29位。パリ2024でのメダル獲得を目標に定める。メディア出演などを通じて人気も高く、TikTokのフォロワーは15万人にのぼる。

フルーレの注目選手

胴体のみを有効面とするフルーレ種目は、元フェンサーの太田雄貴さんが北京2008で個人銀メダル、ロンドン2012で団体銀メダルを獲得してフェンシング人気を押し上げるきっかけとなった種目。

東京2020では敷根崇裕(しきね・たかひろ/25)が3位決定戦に駒を進めたものの、表彰台には及ばず4位。東京2020の団体戦では松山恭助(26)、永野雄大(25)らと共に3位決定戦に挑んだが、アメリカ合衆国代表チームの前に散った。

世界ランキングで日本勢トップ(13位)は、チームキャプテンを務めている松山恭助。松山率いる日本男子チームは2023年2月のワールドカップ・カイロ大会に松山、敷根、飯村一輝(19)、鈴村健太(24)のメンバーで臨み、12年ぶりに金メダルを獲得した。

男子メンバーの中で特に若手選手として注目されるのが19歳の飯村一輝。太田さんのコーチを務めた飯村栄彦さんを父に持ち、世界ジュニア選手権での優勝経験も持つ。

男子チームの世界ランキングはイタリア、アメリカ合衆国に続き3位。パリ2024ではロンドン2012銀メダル以上の結果に期待が寄せられる。

一方、女子に目を向けてみると、世界ランキング個人で日本勢トップとなるのが5位の東晟良(あずま・せら/23)。世界の舞台では3月に行われたグランプリ・釜山大会で、2018年のワールドカップ(銀メダル)以来のメダルを獲得した。

このほか、国内ランキングで1位(2022年11月時点)となったのが23歳の辻すみれ。東京2020にリザーブ選手として臨んだ辻は、2022年の全日本選手権で2連覇がかかっていた上野優佳(ゆうか/21)を破って2大会ぶり2度目の優勝を達成した。

その上野も注目の若手選手のひとりだ。2018年にブエノスアイレスで行われたユースオリンピックのフェンシグ女子フルーレ個人、世界ジュニア選手権で金メダルを獲得した上野は、東京2020の個人で日本人女子フェンシング選手として過去最高の6位入賞を果たした。現在21歳で、世界ランキングでは日本勢2番手の13位に位置する。

男子同様、日本女子チームもランキングの高い位置に立っており(現在4位)、パリ2024に向けてさらなる飛躍が期待される。

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