最速タイムが期待できる、世界のフルマラソンコース10選

自己ベストや世界記録を追い求めるランナーが好む、フルマラソンを紹介しよう。

1 執筆者 Evelyn Watta
Sifan Hassan
(Getty Images)

フルマラソンにおいて記録が出やすいコースの条件は何なのか?

まず地形が挙げられる。坂や傾斜がほとんどないかゼロであることにより、ランナーは上り坂でタイムとエネルギーを無駄に消費せずに済む。ベルリンマラソン、バレンシアマラソン、そして2023年に現在の男子マラソン世界記録が生まれたシカゴマラソンは平坦なコースで実施され、最速のマラソンコースとして知られている。このほか、天候、標高、エリートランナーの層の厚さも要因となる。

では世界各地で行われているマラソンレースのうち、自己ベストの更新や世界記録を追い求めるランナーが好むマラソンレースはどこで開催されているのだろうか。

ベルリンマラソン

  • 開催時期:例年9月
  • 開催国:ドイツ

例年9月に開催されるベルリンマラソンは、世界記録と同義語といっても過言ではない。

ドイツの首都で開催されるこの大会で誕生した世界記録は他のどのコースよりも多い13。男子のエリートレースではこれまでに9度、女子では4度、世界記録が誕生している。

オリンピック2大会(アトランタ1996シドニー2000)で金メダルに輝いたハイレ・ゲブレセラシェ(エチオピア)と、同じく2連覇(リオ2016東京2020)を達成したエリウド・キプチョゲ(ケニア)は、ベルリンで2度世界記録を樹立した。

ベルリンマラソンで最初に世界記録を樹立したのは、1977年に女子マラソンで優勝したクリスタ・ヴァーレンシーク(ドイツ)で、2時間34分48秒を記録。その後、1998年にはロナウド・ダ・コスタ(ブラジル)が2時間6分5秒の男子世界記録を樹立した。

現在の女子世界記録(2時間11分53秒)が誕生したのもこの大会で、ティギスト・アセファ(エチオピア)がその記録を保持している。

バレンシアマラソン

  • 開催時期:例年12月
  • 開催国:スペイン

例年12月の穏やかな気候の中、平坦なコースで実施されるバレンシアマラソンは、自己ベストの更新を目指すランナーにとって理想的な大会だ。

2024年2月に逝去したケルビン・キプタム(ケニア)は、2022年にここで2時間1分53秒の男子大会記録を樹立した。このタイムは、男子のデビュー戦としては史上最速記録である。また、アマネベリソ・シャンクレ(エチオピア)は2022年に2時間14分58秒を記録し、これは女子マラソンで史上5番目に速いタイムとして知られている。

シカゴマラソン

  • 開催時期:例年10月
  • 開催国:アメリカ合衆国

シカゴマラソンは最速コースにふさわしい条件がそろう、伝統的な世界記録コースだ。

男女ともに史上最速タイムのうち6つがシカゴで記録されており、最新の記録はキプタムによるもので、史上初の2時間0分台の2時間35秒という驚くべき世界記録である。

グラント・パークを発着地とするこのコースでは、キプタムの前にも男子の世界記録が2度更新されている。スティーブ・ジョーンズ(ウェールズ)は、1984年に2時間8分5秒で世界記録を塗り替え、シカゴで初めて世界記録を樹立したランナーとなった。また、モロッコで生まれ、のちにアメリカ合衆国へと籍を移したハーリド・ハヌーシは1999年に世界記録を更新した。

女子では、2001年から2019年にかけて、キャサリン・ヌデレバポーラ・ラドクリフブリジット・コスゲイが女子の世界記録を更新した。

ロンドンマラソン

  • 開催時期:例年4月
  • 開催国:英国

ベルリン、シカゴに続き、ロンドンは高速コースとしてリスト入りするワールドマラソンメジャーズ(6大会)のひとつだ。

他の大会に比べると比較的新しい大会で、第1回が開催されたのは1981年。その後、知名度と人気が高まり、世界記録は7度更新されている。

ベルリンやシカゴと同様、ロンドンでも男女の世界記録が更新されており、2024年4月にはペレス・ジェプチルチルが女子の世界記録を樹立した。ノルウェーのグレテ・ワイツがロンドンマラソンで最初に世界記録をマークした女性ランナー(1983年)で、その後、イングリッド・クリスチャンセン(ノルウェー)、ラドクリフ、メアリー・ケイタニーが続いた。

男子ではハーリド・ハヌーシが唯一、このコースで世界記録を塗り替えた(2002年)。

東京マラソン

  • 開催時期:例年3月
  • 開催国:日本

ワールドマラソンメジャーのひとつである東京マラソンも平坦なコースでエリートたちから人気を集めてきた。

なだらかな坂道がいくつかあるものの、高低差は少なく長い坂道はない。レースは緩やかな下り坂から始まる。

かつてマラソンの世界記録保持していたキプチョゲは、2度このコースを走り、2021年に2時間2分40秒の大会記録を樹立した。現在の男子の大会記録は、2024年にベンソン・キプルト(ケニア)が記録した2時間2分16秒。

セビージャマラソン

  • 開催時期:例年2月
  • 開催国:スペイン

セビージャマラソンは2月という時期のため、マラソン界の歴代の名選手たちを魅了することはできないかもしれないが、同地の冬の暖かさは、ランナーにとって速いタイムを出すための絶好のコンディションとなる。

コースもほぼ平坦で標高も低く、タイムを更新してワールドマラソンメジャーの6大会の出場資格を確保しようとするランナーに人気がある。

フランクフルトマラソン

  • 開催時期:例年3月
  • 開催国:ドイツ

平坦な地形とトップレベルのランナーのおかげで、高速タイムが出るコースとしての地位を確立したドイツのもうひとつの都市マラソンがフランクフルトだ。

フランクフルトの平均ゴールタイムは3時間57分56秒で、世界記録が出ることで有名なベルリンのコースよりもわずかに速い。かつてマラソンの世界記録を保持していた、パトリック・マカウ(ケニア)とウィルソン・キプサング(ケニア)が、このコースで見事なタイムで優勝した。

キプサングは2011年にフランクフルトで2時間3分42秒という大会記録を出し、この記録は当時の世界記録に4秒ほど届かなかった。だが、風と雨がなければ、世界記録を更新していたかもしれない。

ドバイマラソン

  • 開催時期:例年1月
  • 開催国:アラブ首長国連邦

ランナーたちにとってドバイは高速タイムを狙うのにうってつけの場所だ。坂がなく真っ直ぐに伸びるコースをランナーはまっすぐな道を走る。

砂漠の暑さと湿度が穏やかな1月に実施されるレースであり、年明けのタイミングということもあって、常にトップレベルの選手が集まるわけではない。しかし、スタートラインに立った選手たちは、マラソンデビューの選手でも速いタイムが期待できる。

テボ・ティギストケテマ(エチオピア)は2024年に大会記録を1分以上短縮する2時間16分07秒でマラソンデビュー最速記録を更新した。

ミラノマラソン

  • 開催時期:例年4月
  • 開催国:イタリア

自己ベストの更新を狙うマラソン選手の多くは、ミラノマラソンの周回コースを選ぶ。

ランナーにとって快適な気候の中、攻略しやすいコースで行われるこのレースは、春のマラソンを求めるエリートにとって理想的なものとなっている。

ロッテルダムマラソン

  • 開催時期:例年4月
  • 開催国:オランダ

曇り空で寒いコンディションに見舞われがちなロッテルダムマラソンでは、これまでに3つの世界記録が樹立された。

その最初のランナーとなったのがポルトガルのカルロス・ロペスで、1985年に2時間7分12秒を記録して優勝した。

その2年後、ベライン・デンシモ(エチオピア)が2時間6分50秒をマークして世界記録を更新した。テグラ・ロルーペ(ケニア)は、1998年にロッテルダムで世界記録を樹立した唯一の女性ランナーである。

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