知ってる? Nipponルーツのフィギュアスケーター

近年の冬季オリンピックはさることながら、北京2022に向けた国際大会においても、アジアにルーツをもつフィギュアスケーターが表彰台の上で笑顔を見せるシーンをよく見かける。そのなかでも、ニッポンにルーツをもつアスリートにスポットライトを当てて、彼らの功績を振り返ってみよう! 

文: Yukifumi Tanaka/田中幸文
写真: 2018 Getty Images

今年3月の世界フィギュアスケート選手権・男子シングルでは、ネイサン・チェン鍵山優真羽生結弦と、アジアにルーツをもつ3選手が表彰台を独占したことは記憶に新しい。

また、先週末(11月12−13日)に行なわれたばかりの、グランプリシリーズNHK杯でも、宇野昌磨ビンセント・ジョウチャ・ジュンファンと、これまたアジアにルーツをもつ3名のスケーターが、男子シングル表彰式で笑顔を見せた。

そんなアジア系アスリートの活躍が目覚しいフィギュアスケートにおいて、わがニッポンにルーツをもつアメリカ代表選手が、過去の冬季オリンピックで活躍したことをご存知だろうか?

現在の若手スケーターや、多くの人々をインスパイアする、Nipponルーツのフィギュアスケーターにスポットライトを当てて、彼らの功績と日本的な一面を紹介しよう!

クリスティ・ヤマグチ

アルベールビル1992女子シングルで、アジア系アメリカ人として、初めて金メダルを獲得したのが、クリスティ・ヤマグチだ。

クリスティ・ヤマグチ(中央)、伊藤みどり(右)女子シングル表彰式=アルベールビル1992
写真: © 1992 / Comité International Olympique (CIO)

カリフォルニア出身のヤマグチは、姉の影響で6歳からスケートを始め、1988年の世界ジュニア選手権で金メダルに輝く。

シニア転向後も数々のメダルを獲得し、オリンピック選考のかかった1992年の全米選手権で見事優勝、アルベールビル大会行きの代表チケットを手に入れた。

当時、ヤマグチの最大のライバルと目されていたのが、フィギュアスケートで日本人初のオリンピックメダルを手にした伊藤みどりだ。ヤマグチ自身、日本人のアスリートと日系アメリカ人のアスリートが、オリンピックの決勝で戦うことは皮肉だったと、当時を振り返っている。

ヤマグチのオリンピックでの功績は、次世代のスケーターたちへ大きな影響を与えている。

ソチ2014のアイスダンスで金メダルに輝いたメリル・デイヴィスは、現在のアジア系アメリカ人フィギュアスケーターの活躍の原点は、ヤマグチにあるとOlympics.comに語っている。

「(アルベールビル大会でアメリカ国歌が流れたことは)クリスティの家族だけでなく、アジア系アメリカ人のコミュニティーにとっても、特別な瞬間だった」

「2018年オリンピックのアメリカチームは、半分がアジア系選手。誰かが一番になる代表的な瞬間は、将来的にも良いことに繋がる」

「クリスティはその動きを作った偉大な人よ」

平昌2018アメリカ代表チームの一員として、団体銅メダルを獲得したアダム・リッポンも、アルベールビル1992でのヤマグチの演技を見て、オリンピックの旅路を歩み始めたと語る。

「クリスティが扉を開けて、アジア系アメリカ人の多くが、自分にクリスティを照らし合わせることができたと思う。(アジア系アメリカ人じゃない)僕も、共感したそのひとり」

「他の人とは違って見えたり、他とは違う背景をもっている人の成功は、本当に若い選手へ影響すると思う」

「自分もできるって思えるから」

シブタニ・シブリング

平昌2018団体戦のアメリカ代表メンバーであり、かつアイスダンスでも銅メダルを獲得したのが、マイア・シブタニアレックス・シブタニの兄妹ペアだ。

マイア・シブタニ(左)、アレックス・シブタニ=平昌2018
写真: 2018 Getty Images

父はフルート奏者、母はピアニストという音楽一家に生まれた兄・アレックスと、妹・マイアは、ニューヨーク郊外のアイスリンクで、初めてスケートに出会う。アレックスが7歳、マイアが4歳の時だった。

2004年、兄妹でペアを組んでアイスダンスを始める。そして、そのわずか5年後の2009年には、世界ジュニア選手権で銀メダルを獲得する。

シニア転向後も、表彰台へ何度も上る活躍を見せ、2011年のNHK杯では、グランプリシリーズを初優勝、自身のルーツである日本の観客の前で初めて金メダルを首にかけた。

ソチ2014で、オリンピック初出場を果たし、その後も、世界選手権では2シーズン連続表彰台や、全米選手権2連覇などを成し遂げる。

そして、2度目の連続出場となった平昌2018では、団体戦の予選・決勝ともに2位と好成績を残し、銅メダルの獲得に貢献。また、その後に行なわれたアイスダンスでも、決勝フリーダンスで息の合った演技を披露し、大会ふたつめの銅メダルを獲得した。このアイスダンスでのオリンピックメダル獲得は、アジア系選手としては初の快挙となった。

ふたりの名字「シブタニ(Shibutani)」と、きょうだいを意味する「シブリング(Siblings)」を組み合わせた「シブシブ(Shib Sibs)」という愛称で、兄妹息ぴったりの演技はもちろんのこと、その仲の良さから、ふたりは多くのファンに愛されている。

また、彼らが発信するソーシャルメディアでは、多くの日本人スケーターが登場しており、普段はなかなか見ることのできない、アスリートのおちゃめな一面や、戦いの舞台裏などを垣間見ることができる。

2019年12月、マイアは腎臓がんと診断され、ふたりは競技から離れ、治療に専念することを発表した。

腫瘍の早期発見や、アレックスと両親の献身的なサポートのおかげで、マイアは順調に回復し、最近はアレックスと一緒に、トレーニングやスケートを楽しむ元気な姿など、以前と変わらぬ仲睦まじい「シブシブ」の日常を投稿している。

ミライ・ナガス

シブシブ同様、平昌2018団体戦で、アメリカチームの銅メダル獲得に大きく貢献したのが、ミライ・ナガス(長洲未来)だ。

ミライ・ナガス=平昌2018
写真: 2018 Getty Images

カリフォルニア出身のナガスは、ロサンゼルス郊外で寿司レストラン “Kiyosuzu(きよ鈴)” を営む両親のもとに生まれ、幼少期からバレエやピアノ、ゴルフなど様々なことに取り組んでいた。雨の日にインドアでも楽しめることはないかと、訪れたアイスリンクでスケートに出会い、5歳から滑り始める。

忙しい両親のために、箸をテーブルに並べたり、フロアの掃除をするなど、レストランの手伝いをしながら、また両親も一人娘のために、合間を縫ってアイスリンクへ連れて行くなど、家族全員で助け合いながら、ナガスはスケートを続けていた。

彼女が大きく注目されたのは、まだ14歳というジュニアの年齢でいながら、シニアの有力選手をおさえて初優勝を果たした、2008年の全米選手権だ。

そして、バンクーバー2010にアメリカ代表としてオリンピックに初出場し、4位入賞を果たす。

ソチ2014の代表の座は射止められなかったものの、その悔しさをバネにして猛特訓に励み、平昌2018でふたたび代表に選出される。そして、その団体戦では、オリンピックという舞台でトリプルアクセルを成功させ、女子2位の成績を収めた。

こうして、ナガスは、アメリカ銅メダル獲得の中心人物となるだけでなく、オリンピックでトリプルアクセルを成功させた女子スケーターとして、日本の伊藤みどり(アルベールビル1992)、浅田真央(バンクーバー2010・ソチ2014)に続いて史上3人目、アメリカ人としては初の快挙を達成した。

COVID−19の感染拡大防止を目的としたロックダウンによって、ナガスの両親の寿司レストランは大きな影響を受けていた。

フィギュアスケートの成功を一番にサポートしてくれた両親を、なんとか助けるために、ナガスはいち早く行動に出る。

友人の紹介で知った "The Power of 10" という、飲食店と医療従事者をつなぐ寄附金調達のイニシアチブに、ボストンを拠点にしていたナガスは、両親に代わってリモートで参加。ロサンゼルスでは、きよ鈴が最初のパートナーレストランとなった。これにより、ナガスの両親は、アメリカの複雑な貸付制度を利用せずに、自力でレストラン経営を続けることができ、また最前線で働く医療関係者へ、両親がつくる日本の自慢の味を届けることができたのだ。

ナガスの行動力は、地元の有力メディアの一面でも取り上げられ、またOlympics.comのインタビューでは、日本のルーツを感じさせる彼女のアイデンティティが滲み出ていた。

「オリンピックの間、地元の方々が私をサポートしてくれました。今度は私が地元の方へ、医療従事者の方へ、お返しする番だと思いました」

「新聞の一面に掲載されて、両親や同じ境遇の方々の声になれることは、私にとっても大きな意味があります。これまでのスケートキャリアをどう活かせるか、考えるきっかけにもなりました」

トモキ・ヒワタシ

過日のNHK杯において、アメリカ代表として男子シングルに出場したひとりが、トモキ・ヒワタシ(樋渡知樹)だ。

トモキ・ヒワタシ=全米選手権2021
写真: 2021 Getty Images

ニュージャージー州出身のヒワタシは、3歳で初めて氷に乗り、5歳からコーチのもとで本格的にフィギュアスケートを始める。

2019年世界ジュニア選手権の優勝で、その知名度を一気に上げた。翌シーズン(2019/2020)からは、シニアへクラスアップし、北京2022に向けて、粒揃いのスケーターたちとともに、熾烈な代表争いに鎬を削っている。

今後の活躍から目が離せない、Nipponルーツの若手スケーターのひとりだ。

オリンピックに向けて。 これらすべてをゲット。

スポーツイベントを無料でライブ観戦。さまざまなシリーズに無制限アクセス。 他には真似のできないオリンピックニュース&ハイライト