クロエ・コベル、2年間の「クレイジー」な時を経て、今こそ最高のライドへ挑戦!

オリンピック予選シリーズ

驚異的な進歩を遂げたオーストラリアのスケートボードスター、クロエ・コベルは、競技を通じて世界のベストスケーターと競い合い友達になってきた。そして今、彼女はオリンピックの夢に近づいている。

1 執筆者 Chloe Merrell
Chloe Covell at WST Street Rome 2022
(Bruno Mezzelani/World Skate)

成長することは、スケートボードにとって必要不可欠な要素だ。オーストラリア・トゥイードヘッズ出身のクロエ・コベルは、それを誰よりもよく知り、よく理解している。

「私はここ3~4か月で身長が2cmは伸びたと思います」と、14歳のコベルはOlympics.comに満面の笑顔で話した。

「私は毎月、身長を記録しています。それは自分の健康管理のためです」

ティーンエイジャーなら誰しも経験する顕著な身体的変化は、コベルにとってスケートボード・ストリートの頂点への道のりに大きく影響した。そして、彼女が進む速度を早めさえした。

2022年の12歳の時、コベルはXゲームズ千葉で国際試合では初めてとなるメダル(銅)を獲得した。その3か月後のXゲームズ・カリフォルニアで2個目のメダル(銀)に輝き、コベルは競技史上最年少のスケートボーダーとしてスケートボード史に名を刻んだ。

パリ2024の予選大会では、ルーキーだったコベルはすっかり世界のトップ選手を脅かす存在になった。

彼女は、パリ予選第1フェーズのストリート種目3大会で2位の記録を残し、現在、世界ランキング第4位に位置する。最も顕著な成績は、ストリート世界選手権シャルジャ(アラブ首長国連邦)で獲得した銀メダルだ。コベルは表彰台で、東京2020女子ストリート金メダリストの西矢椛(もみじ)、同銀メダルのライッサ・レアウ(ブラジル)の隣に立ち満面の笑顔を見せた。

「クレイジーでした」と、コベルはこの2年で起きた急速な成長について聞かれこう答えた。

「最近の大会では、よい成績を得ることができとても嬉しいです。トレーニングを続け、一生懸命に練習してトリックを進化させることができ本当によかったと思います」

「彼女は最高」

競技であるスケートボードは、パフォーマンスの進歩だけが全てではない。コベルにとって、競い合うことはさまざまな形で表現される。

楽しさはもちろんのことだ。これは、練習中やランの間に、コベルが多くの友達や仲間と親しみ合っている様子や姿を見ればわかるだろう。

彼女を応援する母国の観衆に応えた後、いつもコベルは親しい日本のスケーターと握手を交わす。あるいは、彼女は最大のライバルであるレアウとハグし合っているだろう。

コベルとレアウの戦いぶりを見て、2人はライバル同士であると見られることが多いが、彼女はそれを否定する。コベルにとってのレアウは、まず友達であり、そして家族の存在だ。

「彼女は最高です。私は彼女が大好きです。これまで私が出会った人の中で最も優しくて、本当に本当に素晴らしいスケーターです」と、コベルは強調した。

「私は、彼女と一緒にスケートボードを続け、一緒に成長し幸せになりたいと思っています。彼女と競い合うのが待ち遠しいです」

クロエ・コベルとライッサ・レアウ:2022年ローマ

(Jeremiah Arias/World Skate)

「でもときどきは最悪です」

コベルは、大会から大会へと転戦する中で次々と新たなチャレンジに直面する。

自分が望むように事が進まない時には落胆することもある。それをどのように克服するのかを尋ねると、彼女の答えには実際の年齢を超える成熟した考えがあった。

「うまくいくと思っていたにもかかわらず、実際にはまったくうまくいかなかった時ほど最悪なことはありません。でも、気持ちをすぐに切り替え、うまくいかなかったことは考えないようにして、次の大会に集中するようにしています」

大会のための旅行について言えば、普通のティーンエイジャーと同じように学校の課題をこなすことが現実的なチャレンジとなることもある。

「学校のことはかなり大変です。海外に行くと、勉強することが難しくなります。でも、今のところは学校でまだうまくやっていると思います」

幸運なことに、学校、特に同級生からのサポートは、彼女がタイムゾーンを越えてどこへ行っても欠かすことがない。

「みんなは私をとてもよくサポートしてくれて、旅行から帰るたびに、『おめでとう、よくがんばったね!』と言ってくれます。深夜でもない限り、私の競技をいつも見てくれているのです」

クロエ・コベルと織田夢海:WSTストリート・ローマ2022ファイナル

(Bruno Mezzelani/World Skate)

パリ2024への道

コベルが、オーストラリアの友人たちに見てもらいたいと思っている大会のひとつが、パリ2024出場枠(*)を獲得するための重要な位置づけとなるオリンピック予選シリーズ(OQS)上海大会だ。

コベルは、世界ランキング第4位として本大会を迎える。これまで出場した全てのワールドスケートボードツアーの大会では決勝に進出しているが、世界のトップ選手が集まる今回はそれほど簡単なことではないだろう。

OQSでは、コベルが戦ってきたパリ予選第1フェーズのどの大会よりも獲得できるポイントの比重が大きくなり、パリ2024代表枠獲得に向けて最重要となる世界ランキングに大きく影響する。

2022年に初めて出場したオリンピック予選、ストリートスケートボード選手権ローマ大会以来、コベルはフランスの首都パリで開催されるオリンピックに出場したいと思うようになり、そのビジョンは時が経つにつれてますます鮮明になってきている。

もしオリンピック出場がかなったなら、それを一生忘れられない思い出にするためにやってみたいことを話した。

「私はいつかタトゥーを入れたいと思っています。全身にタトゥーを入れることは望んでいませんが、小さなものをいくつか入れたいと思っています。たとえば腕や足首にオリンピックリングのタトゥーを入れるのもいいですね」

*オリンピック各国代表の編成に関しては国内オリンピック委員会(NOC)が責任を持っており、パリ2024への選手の参加は、選手が属するNOCがパリ2024代表選手団を選出することにより確定する。各競技の出場資格に関する公式資料はこちら

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