競技大会のカーボンフットプリントを50%に
人類が直面する歴史上最大の課題に向き合い、世界最大規模のスポーツイベントが前例のない責務に取り組む。パリ2024の大きなミッションのひとつは、気候への影響を抑えること。節度、革新、大胆の3つの原則に則り、パリ2024は、オリンピック・パラリンピック競技大会開催のための新しい基準を設定した。
パリ2024のゴールは、これまでの大会と比較して、カーボンフットプリント(大会に関連して排出される二酸化炭素などの温室効果ガス量)を50%にするという意欲的なものだ。直接的なものだけでなく、大会に関連する全ての二酸化炭素排出源を対象に、パリ2024は新しいモデルを創出する。大会による直接的な気候への影響を低減することはもちろん、パリ2024はさらに大きな視野を持つ。気候変動と向き合い貢献するプロジェクトを積極的に支援することを通じて、大会で排出される二酸化炭素以上の量を相殺し、気候変動問題に積極的に取り組む。大会が開催される期間は短いものだが、パリ2024は、大会前も大会後も長期にわたって、スポーツやその他のイベントにおける気候変動問題への取り組みを促す手段や方法を地域と共有していく。
二酸化炭素排出量抑制モデルの変化:大会後評価から大会前評価へと移行
目標:大会による気候への影響を管理する
気候変動問題への戦略と業務が完全に組み合わされた前例のない初めての対策
大会による気候への影響を抑制するため、パリ2024は「avoid(回避)」、「reduce(削減)」、「offset(オフセット/相殺)」のAROアプローチを実行する。そこに、将来における排出量の予測と、大会関係者の行動促進といった2つのステージが加わっている。
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予測:これまでの競技大会では、平均して350万トンの二酸化炭素が排出されていた。パリ2024では、ここを出発点として、カーボンフットプリントを正確に評価できる先駆的なツールを開発した。これは、パリが開催地として立候補した時から、さまざまな選択をする際の指針として用いられ、大会運営を通して幅広く活用されている。
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回避:使用する設備全体の95%を既存あるいは仮設でまかない、競技大会終了後も地域で利用できる施設のみを建設することにより、パリ2024は気候や環境への影響をできる限り抑制する節度のある競技大会を運営する。
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削減:パリ2024は、正確に二酸化炭素排出源を把握しており、会場の省エネによる低炭素化、再生エネルギーの利用、持続可能な調達など、全ての活動において対策を打ち出している。結果として、パリ2024は二酸化炭素の排出量を150万トン未満に抑えることに目標を設定している。つまり、これまでの夏季競技大会の平均的なカーボンフットプリントの半分以下にすることを目指す。
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オフセット(相殺):パリ2024は、二酸化炭素排出の抑制の対象範囲を最も広いカテゴリー、スコープ3まで広げて取り組む。スコープ3には、競技大会による直接的な排出(電気や燃料等のエネルギーの使用など)に加え、観客の移動や備品の配送などに伴う排出による間接的な影響も含まれる。回避が不可能な排出に関しては、世界5大陸の環境面と社会面に恩恵をもたらすよう計画されたプロジェクトを支援することによって相殺される。これらには、炭素の吸収を促進する森林や海洋保護・回復や生物多様性の保護のためのプロジェクトなどが挙げられる。プロジェクトは2021年からすでに実施されている。パリ2024は、先の未来を見越して開催に伴う責任を果たそうとしている。地球温暖化防止に貢献するさまざまなプロジェクトの発展と着手を支援することにより、大会そのものが排出する以上の二酸化炭素を相殺し得る世界で初めてのスポーツ競技大会となるだろう。このような先駆的な取り組みは世界でもまれである。
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一丸となった取り組み:パリ2024は、環境改善に取り組む持続可能な社会への移行を促す効果的な推進力としてスポーツの持つ可能性を活用したい考えだ。従業員、パートナー、スポーツ関係者、市民ら競技大会に関わる全ての人々が結束して取り組むことが期待される。パリ2024では、「クライメイト・コーチ」という独自のアプリを開発し、大会関係者自らが個人あるいは業務上のカーボンフットプリントを認識して削減できるようにした。また、物資調達においては、責任ある調達戦略にのっとり、業務パートナーやサプライヤーに対しても、大会のために購入する全ての物品・サービスにサステナビリティ(持続性)を導入し、気候に与える影響を制限するよう求めている。