日本バスケットボール界のライジングスター、富永啓生

パリ 2024

今夏、日本でも開催されるFIBAバスケットボールワールドカップ2023を目前にした「和製ステフィン・カリー」こと富永啓生の将来性に迫った。

1 執筆者 Shintaro Kano
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(2023 Getty Images)

富永啓生の名前は、すでに日本では知られているが、今ではアメリカ合衆国ネブラスカ州でもよく知られるようになった。

今夏(8月25日開幕)、FIBAバスケットボールワールドカップ2023が日本(沖縄県)、フィリピン(マニラ)、インドネシア(ジャカルタ)で開催される。ここでも富永の名前が世界に知れ渡るようになるだろう。

彼のプレースタイルを知る者からは「和製ステフィン・カリー」とニックネームで呼ばれる富永。現在、ネブラスカ大学のシューティングガードとしてプレーする22歳の富永は、NCAAでの活躍、そして日本バスケットボール界の希望の星として世界の舞台での活躍が期待されている。

「和製ステフィン・カリー」

もしバスケットボール史上最高のシューターからメッセージをもらったとしたらどんな気分だろうか。ビッグ・テン・カンファレンス(米国カレッジスポーツリーグ)の公式Twitter(ビッグ・テン・ネットワーク)が富永の動画記事をツイートした2月、NBAのスーパースター、ステフィン・カリーはそのツイートにコメントしている。

そんなカリーを尊敬する富永は、背中にカリーと同じ30番をつけ、彼のプレーから多くを学んでいる。

ネブラスカ大学のヒーロー

今年5月31日、富永がNBAドラフトへのアーリーエントリーを取り下げ、再びネブラスカ大学でプレーをするとの決断を発表した時、ハスカーズ(チームの愛称)のファンらは歓喜した。ネブラスカでの彼の人気ぶりを象徴していると言えるだろう。

身長188cmのサウスポーシューターは、2022-2023シーズンのビッグ・テン・カンファレンスで1試合あたり平均14.2得点を挙げた。フィールドゴール成功率は51%で7位、スリーポイント成功数は1試合あたり平均2.4本で5位の成績を残している。

ビッグ・テン・カンファレンスの選手の中で、富永が2月1日以降に挙げた平均20.3得点は、カレッジ年間最優秀選手のザック・エデイと現在ゴールデンステート・ウォリアーズ所属のトレイス・ジャクソン・デイビスに次いで3位だった。

ビッグ・テン・カンファレンス特別賞に輝く富永がネブラスカ大学に戻ることを、元シカゴ・ブルズヘッドコーチであり、現ネブラスカ大学ヘッドコーチのフレッド・ホイバーグほど喜んだ者は他にはいないだろう。

「啓生が2023-2024シーズンにチームに戻ってきてくれることを本当に楽しみにしています」とホイバーグは話す。

「ビッグ・テンでは、彼はベストプレーヤーのひとりとしての能力を発揮し、シーズン後半の我々の成功の触媒となりました。啓生は、シーズンが終わってからもハードに練習を続けており、シニア(4年生)として特別なシーズンを迎える機会が待っています」とホイバーグは続けた。

ロングショットの名手

富永は常にスリーポイントショットを狙う。しかもコート中央に描かれるチームロゴからのロングレンジのショットを決める。

富永は、NCAAディビジョン1の選手の中で平均得点が2桁だった6人の選手のひとりだ。しかも、フィールドゴール成功率は50%を超え、スリーポイント成功率は40%(参考:カリーのNBAレギュラーシーズン通算平均は42.8%)、フリースロー成功率は85%を超えていた。

ネブラスカ・ハスカーズの公式動画「Every Keisei Tominaga Three-Pointer」は、2022-2023シーズンの富永の活躍を伝えている。

オリンピック選手として

富永はすでにオリンピックを経験している。東京20203x3バスケットボールに日本男子代表として出場し、準々決勝まで進んだ。

今回、FIBAバスケットボールワールドカップ2023に向けて、富永は、八村塁渡邊雄太らとともに日本男子代表のコアメンバーとして活躍が期待されている。日本代表は、パリ2024への出場権をかけて、まずは予選ラウンドグループEで、ドイツ(8月25日)、フィンランド(8月27日)、オーストラリア(8月29日)と沖縄で対戦する。

NBAへの夢

ネブラスカに戻ることを決心する前日に、富永はNBAレジェンド、ラリー・バードも見つめる中、インディアナ・ペイサーズのドラフト前ワークアウトに参加した。

富永は、次のNBAドラフトに向けて備えるため、ウェイトトレーニングで筋力アップなどフィジカル面での強化を図っている。

「思うようなプレーができずに、言われてきたフィジカルを強化して、自分のプレーの幅が広がった」と、富永はトレーニングの効果を実感した。

「(日本代表でワールドカップに出場し)自分の武器をアピールすることによって、次のレベル、目標であるNBAに行きやすくなるのではないかと思っています」と、ワールドカップの次を見据える富永は、もはや「和製ステフィン・カリー」ではなく、自らの道を切り拓こうとしていると言えるかもしれない。

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