青木勇貴斗が語る自身の成長とスケートボードへの思い「これだけで人生が変わった」

パリ 2024
1 執筆者 Chiaki Nishimura
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(Anthony Acosta / World Skate)

「緊張で大会前からカメラとか向けられても笑えない状態だった」

パリ2024オリンピック予選を兼ねてドバイで行われた2024年3月のスケートボードの国際大会「WST: ドバイ・ストリート2024」で、スケーターの青木勇貴斗(ゆきと)にマイクを向けると、リラックスした表情で東京オリンピック当時をこう振り返った。

東京で行われた前回のオリンピックから3年。パリオリンピックのスケートボード出場枠をかけた戦いはいよいよクライマックスに突入する。「スケートボードが楽しくて仕方ない」という表情でパークを駆け抜ける青木勇貴斗に、当時から現在の変化を聞いた。

青木勇貴斗「次のレベルに行けるように努力します」

ストリート種目のスケーターたちは2022年夏にローマで始まったオリンピック予選大会から世界各地で戦いを繰り広げ、2024年3月のドバイ大会でその第1フェーズを終えた。スケーターの数はストリート種目男女それぞれ44人(各国男女それぞれ最大6人)に絞られ、オリンピック予選シリーズ(OQS)と題して行われる最終予選、5月16日〜19日の上海大会6月20日〜23日のブダペスト大会に向かう。そしてここで各国最大3枠に絞られる。

世界トップレベルで多くのスケーターが活躍する日本勢にとって、狭き門をくぐり抜けることができなければパリへの道はない。青木はドバイ大会を通じて世界ランキング15位の日本勢6番手に立ち、最終予選となるオリンピック予選シリーズへの出場を決めた。

「上の6人に入れるか入れないかがこのドバイにかかっていたので、練習はとことんしてきました。練習したからには自信満々で行こうみたいな気持ちで(ドバイに)きました」

「上海に行ける切符を掴ませてもらったので、(上海では)自分のレベルが高くなったという自分の成長を皆さんに見せられるように頑張りたいです」と上海への意気込みを語る。

練習に裏付けられた気持ちの余裕からか、青木はより軽やかにより楽しそうにパークをかける様子が見てとれる。何が彼をそうさせるのか。

「東京オリンピックでは、緊張で大会前からカメラとか向けられても笑えない状態でした。そういうのを1回経験したんで、(せっかくの)世界の舞台なら笑っていたいと思ったので、意識はしてます」と青木は言う。

スケートボードが初めてオリンピックで実施された2021年の東京オリンピックで、青木は、堀米雄斗白井空良(そら)とともに日本代表として男子ストリートに出場。青木は8人で行われた決勝に進出することはできず、17位で大会を終えた。その経験は青木を大きく成長させた。

ドバイ大会ではオリンピック予選2大会ぶりに決勝進出を果たし、8位の成績をおさめた。次なるオリンピック予選シリーズ上海大会に向け、青木は目を輝かせながらこう続けた。

「上海では絶対、さらにパワーアップして次のレベルに行けるように、また努力します」

それは技術面にとどまる話ではない。

「滑っているときの表情とかも、東京オリンピックのときとかすごいかたかったんで、やっぱそういうところとかを成長させて、楽しみながら自分の持ち技もちゃんと出してかっこいい滑りができたらいいなと思います」

(Anthony Acosta / World Skate)

青木勇貴斗・根附海龍「スケーターはみんなファミリー」

現在20歳、静岡県出身の青木とスケートボードの出会いはかれこれ15年前となる。以来、青木はスケボーにのめり込み、スケボー仲間と共に技を磨き、スケボーそのものを楽しんできた。

そんな青木にとって、スケートボードは自分らしくあるための重要な要素となっていることを本人は語る。

「自分は恵まれた家庭に生まれなくて、スケートボードだけで人生が変わった。スケートボードには感謝してるし、スケボー1個だけで友達とか世界中の人たちとコミュニケーションが、英語が話せなくても取れるっていうのがすごい。自分的には魅力を感じている」と青木は言う。

スケートボードと出会い、自分の好きなスケートボードを通じて多くの人とコミュニケーションを図る中で、「自分は自分らしくあっていい」ということを青木は実感した。

「青木にとってスケートボードは何なのか」。その問いに青木が丁寧に言葉を探しながら語っていると、その答えをサポートするかのように、同じく静岡出身の根附海龍が登場。昔から一緒に滑ってきた根附は、デッキを叩きながら「ファミリー!」 と笑顔で叫んだ。

それを見た青木はますます頬を緩め、「スケーターはみんなファミリーなんで」と続ける。

「日本ではあんまり印象がよくないかもしれないんですけど」と前置きした上で、「ちっちゃい子たちも楽しんでるし、暖かい目で見守ってもらいたいなと思います」。「今後も受け入れてもらうために自分たちが頑張りたいなと思ってます」と前を向いた。

オリンピック予選シリーズ上海は5月16日〜19日に予定されている。青木そして彼らが「ファミリー」と語るスケーターたちのパフォーマンスを楽しみにしたい。

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