【陸上】日本選手権男子:100mはサニブラウンが復活V、走幅跳の橋岡は今季世界5位タイで世界選手権へ

第106回日本陸上競技選手権大会が6月9日から12日の日程で、大阪府大阪市のヤンマースタジアム長居で行われた。オレゴン世界陸上選手権の代表選考会を兼ねての開催で、男子は新たに参加標準記録を突破した4選手を含めた8名が日本代表選手の座を獲得。Tokyo2020で日本のエースへと変貌を遂げた選手、さらには急速な成長を見せている選手など、特に若手の躍進が光る大会となった。ここでは、世界選手権を目指しての戦いぶりを中心に、大会を振り返る

文: 児玉育美
写真: 2022 Getty Images

■走幅跳・橋岡優輝がエースの貫禄

男子走幅跳では「日本のエース」橋岡優輝が、エースらしいパフォーマンスを披露した。1回目の試技こそ前足部を踏み込んでのファウルとなったが、砂場を飛び越してしまいそうな大きな跳躍を見せたことで観客の視線を一気に集めると、2回目には1.4mの追い風に乗って8m27をマーク。オレゴン世界選手権参加標準記録の8m22をあっさりとクリアして会場をどよめかせた。

4月初旬に痛めた左足首が完治には至っていないため、3・4回目の試技をパスして臨んだ5回目の試技でも、8m21(±0)というハイレベルな跳躍を連発。最終6回目の試技で逆転する者が現れなかったことで、6回目の跳躍は行うことなく2年連続5回目の優勝が確定。さらに世界選手権代表の座を内定させた。優勝記録の8m27は、その時点で今季世界リスト5位タイとなるハイパフォーマンス。この結果が評価され、日本選手権の男子最優秀選手も獲得した。

■300mSCは三浦龍司が大会新記録

男子3000m障害物でも、Tokyo2020で7位入賞を果たした若きエース・三浦龍司が会場を大いに沸かせた。序盤から先頭に立った三浦は2000mでペースアップして後続を突き放し、8分14秒47の大会新記録で2連覇を達成。参加標準記録(8分22秒00)も再びクリア。8分20秒09の自己新をマークして2位でフィニッシュした青木涼真とともに、世界選手権代表に内定した。

前回の日本選手権で13秒06という驚異の日本新記録が樹立された男子110mハードルでは、今年も予選からレベルの高いレースが展開された。まず、3日目の予選で、村竹ラシッドが13秒27(追い風0.5m)の自己新記録で先着し、この種目の参加標準記録(13秒32)を突破。準決勝では村竹と同じ順天堂大学をトレーニングの拠点とする先輩で、今季から社会人となった日本記録保持者の泉谷駿介が向かい風0.2mの中、13秒29でフィニッシュ。Tokyo2020で突破済みの参加標準記録を、ここでもクリアした。2人は最終日の決勝で、1.2mという強い向かい風を全く感じさせない圧巻の走りを披露。泉谷13秒21、村竹13秒31と、ともに参加標準記録を上回ってワンツー・フィニッシュを果たし、オレゴン行きチケットを手に入れた。

泉谷は、昨年のTokyo2020で決勝進出を僅か0.03秒で逃す悔しい思いを、また、村竹は前回の日本選手権の予選で参加標準記録を突破して絶好調で決勝を迎えながら、不正出発(フライング)により失格する無念を味わっている。ともにオレゴンでは、日本人初の決勝進出を照準に定めている。

■復活のサニブラウンがオレゴン切符

「プラチナチケットを巡る大激戦」という形容が定番化していた男子100mは今回、参加標準記録突破者ゼロの状態で日本選手権を迎える近年では異例といえる状況に。しかしそんな中できっちりと存在感を示したのが、サニブラウン・アブデル・ハキームだった。

予選を10秒11(無風)の今季日本最高で滑りだすと、準決勝でその記録を10秒04(追い風0.8m)へと引き上げ、世界選手権参加標準記録(10秒05)突破第1号に。追い風1.1mの条件下で行われた決勝でも10秒08でフィニッシュし、2017年、2019年に次ぐ3回目のタイトルを獲得。2015年北京(200mで出場)、2017年ロンドン、2019年ドーハに続く4回目の世界選手権出場を確定させた。腰のヘルニアに苦しみ、Tokyo2020出場を逃した昨年の不振からの復活を印象づけた。

このサニブラウンに0.02秒の僅差で2位となったのは坂井隆一郎だ。昨年のシレジア世界リレー(ポーランド)では4×100mリレー(3位)の1走を務めた実績を持つなど地力の高さは知られた存在だったが、ケガでチャンスを逃すことが多かった選手。決勝で自己記録(10秒12)を3年ぶりに更新して初めて表彰台に上がるとともに、世界選手権での4×100mリレーメンバー入りをほぼ確実にした。

坂井に続いて3位となった柳田大輝は、今春から大学生になったばかり。高校2年時から連続して決勝進出を果たしてきたライジングスターだが、今回は準決勝で10秒16の自己新記録をマーク。決勝では9秒98の自己記録を持つTokyo2020代表の小池祐貴を1000分の1秒差で下して、10秒19で初の日本選手権メダルを獲得している。

一方、昨年まで「日本のスプリント」を牽引してきたエースたちにとっては、苦しい日本選手権となった。前回初優勝を果たしてTokyo2020に出場した多田修平は、5月のケガが影響し準決勝で姿を消すことに。

日本人最初の9秒台スプリンター(9秒98)・桐生祥秀も、やはり春先の故障の影響で調子を上げきることができず。準決勝をタイムで拾われて決勝には進んだが、10秒27で6位に終わった。また、小池は、準決勝でシーズンベストを10秒13まで引き上げたものの、前述の通り決勝では同タイムながら競り負ける形で表彰台を逃した。

トップスプリンターとして活躍してきた選手が苦戦したのは200mでも同様で、新鋭の上山紘輝が20秒46(追い風1.7m)で初優勝。連覇を目指した小池は20秒62で2位、5月に20秒34の今季日本最高をマークして優勝候補として大会を迎えていた飯塚翔太も20秒84で7位にとどまった。

今季著しい躍進を見せていた佐藤風雅が45秒49で制した400mでも、ウォルシュ・ジュリアンや佐藤拳太郎といった有力どころが予選敗退を喫した。一方でメルドラム・アラン(46秒05)、中島佑気ジョセフ(46秒07)ら学生陣が決勝で自己新記録をマークして3・4位でフィニッシュ。2024年パリ2024に向けて、新たな勢力が存在感を示し始めたレースとなった。

このほか、5000mでは遠藤日向が13分22秒13、400mハードルでは黒川和樹が48秒89で、ともに2連覇を達成。世界選手権代表の座を即時内定させた。また参加標準記録のクリアはならなかったものの、走高跳の真野友博(2m30)と棒高跳の江島雅紀(5m60)が、どちらも2回目の優勝。やり投では2012年ロンドン2012で決勝進出を果たしたディーン元気が81m02の投てきを見せ、2012年以来実に10年ぶりに日本選手権を制した。3選手ともワールドランキングでの世界選手権出場がほぼ見込める状況に持ち込んだ。

今回の世界選手権は参加資格獲得有効期限が6月26日となっている。世界選手権出場を狙う選手たちは日本選手権後に予定されているホクレンディスタンスチャレンジ20周年記念大会(中・長距離種目)や、布勢スプリント(短距離、ハードル、走幅・三段跳等)、さらには海外で予定されている競技会に出場し、ワールドランキングのポイントをターゲットナンバー(世界選手権出場枠)内に上げることを意識しつつ、参加標準記録の突破を狙っていくことになる。

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