陸上400メートルは「究極の無酸素運動」。人間の限界を試すような短距離走が東京五輪を盛り上げる

東京五輪では世界記録保持者が優勝候補の筆頭

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リオデジャネイロ五輪ではバン・ニーケルクが世界記録を更新。東京五輪でも金メダルを手にする可能性は高い

400メートルは中距離走ではなく短距離走に分類される。男子は43秒台、女子は47秒台がオリンピックの表彰台の目安となるが、その間スプリンターたちはほぼ酸素を体に取り入れず、筋肉に蓄えた糖質を一時的にエネルギー源に変えてトラックを駆け抜ける。2020年の東京五輪でも、人間の限界を試すような短距離走が大会を盛り上げる。

マイケル・ジョンソンは400メートルで56連勝

2016年8月14日、男子400メートルの世界記録が17年ぶりに塗り替えられた。

1999年8月にマイケル・ジョンソン(アメリカ)が出した43秒18より速く走ってみせたのはウェイド・バン・ニーケルク(南アフリカ)。リオデジャネイロ五輪の400メートル決勝を43秒03でフィニッシュした。世界記録を更新されたジョンソンは1996年のアトランタ五輪と2000年のシドニー五輪の400メートルで金メダルを獲得。400メートルでは56連勝という記録を持っていた。

無敵を誇ったジョンソンの記録を打ち破ったバン・ニーケルクは1992年7月15日生まれ。100メートルの自己ベストは9秒94、200メートルの自己ベストは19秒84と、本職の400メートル以外でも屈指のスピードを誇る。東京五輪の400メートルでも優勝候補の筆頭と考えられている。

43秒76でリオデジャネイロ五輪の銀メダルを獲得したキラニ・ジェームス(グレナダ)も十分に2020年の金メダルを狙える。実際、ジェームスは19歳で迎えた2012年のロンドン五輪の400メートルで優勝を果たしている。43秒85でリオデジャネイロ五輪の銅メダルを手にしたラショーン・メリット(アメリカ)も注目株の一人だ。

日本の有望株はウォルシュ・ジュリアンと北川貴理

400メートルは陸上トラック1周分がコースとなり、スタートからゴールまで決められた自分のレールを走らなければならない。瞬発力に加え、持久力も必要となる競技だ。2箇所の大きなカーブを走るため、コーナリングの技術やスピードコントロールの力量も求められる。

リオデジャネイロ五輪の成績が示すとおり、オリンピックをはじめとする世界の舞台で男子が表彰台に立つには43秒台が目安となる。対して日本記録は1991年に高野進がたたき出した44秒78。2位以下は45秒台で、世界トップレベルとは大きな開きがある。

東京五輪に向けて大きな期待を背負うのがウォルシュ・ジュリアンだ。ケンブリッジ飛鳥と同じくジャマイカ人の父を持つ。1996年9月18日生まれで、19歳の時にリオデジャネイロ五輪の400メートルに出場した。自己ベストは日本歴代7位となる45秒35。2018年のアジア競技大会の400メートルでは5位に食い込み、4×400メートルリレーでは銅メダルを獲得した。

1996年9月5日生まれの北川貴理(たかまさ)も注目の一人だろう。日本歴代10位となる45秒48を自己ベストに持つ。2017年6月に行われた日本陸上競技選手権大会の400メートルで優勝を果たし、2018年8月には世界陸上競技選手権大会に出場した。

400メートルは「究極の無酸素運動」と言われることもある。無酸素運動とは酸素の供給が少ない状態でも、筋肉に蓄えた糖質を一時的にエネルギー源にする運動を指す。文字どおり息つく暇もなく400メートルもの距離を疾走するアスリートたちの迫力に、胸が高鳴らないわけがない。

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