2020年東京オリンピックでのテニス競技で、日本男子で活躍が期待されるのは錦織圭だけではない。錦織に続く日本男子選手たちが、東京での出場の機会を狙っている、さらに、ダブルスにも有望な選手がいるので紹介していきたい。
オリンピックで日本初のメダル獲得は、テニス競技から
オリンピックの歴史の中で、日本で一番初めにメダルを獲得した競技が、テニスだということは案外知られていないのではないだろうか。
1920年アントワープオリンピックで、熊谷一弥がシングルスで銀メダル、柏尾誠一郎と組んだダブルスでも銀メダルを獲得した。これが、オリンピックでの日本史上初のメダルとなった。
オリンピックにおけるテニスの歴史は、古くて浅い。
1896年に近代オリンピックが創設されて、第1回大会であるアテネオリンピックでは、テニスは実施9種目の一つに入っていた(女子は1900年パリオリンピックから)。だが、テニスにはアマチュアだけでなくプロ選手という概念が生まれたため、アマチュアの祭典であったオリンピック側は難色を示し、1924年のパリオリンピックを最後に、1928年アムステルダムオリンピックから正式競技から外れることになった。
その後、1968年メキシコシティオリンピックと1984年ロサンゼルスオリンピックでは公開競技として行われた。
そして、1988年ソウルオリンピックから64年ぶりに正式競技へ復帰した。だが、もともとアマチュアの祭典であったオリンピックに、プロテニスプレーヤーの参加も認められたことによって物議をかもしたのだった。
オリンピックのテニス競技は64ドロー
プロテニスプレーヤーのオリンピック出場の決まり方は、世界ランキングに基づいて行われ、ローランギャロス(全仏)直後、6月第1週のATPランキングによって男子は決まる。東京オリンピックでは2020年6月8日付けのATPランキングによって決まる。
競技は64ドローで行われるが、世界ランキング上位56人がストレートインをし、ITF国際テニス連盟の推薦枠が8人設けられている。また、1カ国につき4人までの出場という枠もある。
オリンピックへ出場するには、前回オリンピックからの4年間で、原則として国の代表に3回以上選ばれていることが必要で、男子では、国別対抗戦デビスカップの出場経験が必要となる。
そして、オリンピックでは賞金を得ることはできないが、世界ランキングに必要なポイント、男子ではATPポイントを得ることができた。だが、2016年リオデジャネイロオリンピックからは、ポイントを獲得できなくなった。
錦織以外にも日本男子テニス選手で有望株が
錦織圭(ATPランキング9位、12月24日付け、以下同)は、過去3度のオリンピック出場経験があり、2008年北京オリンピックで初戦敗退。2012年ロンドンオリンピックでは、日本男子として88年ぶりのベスト8。2016年リオデジャネイロオリンピックでは、日本男子として96年ぶりの銅メダルを獲得した。
そして、錦織にとっての4度目のオリンピックが、2020年東京オリンピックになる。錦織は、30歳で東京オリンピックを迎えることになり、おそらく年齢的にいって、彼がプレーする最後のオリンピックになる可能性がある。集大成というには少し早いかもしれないが、彼の実力が存分に発揮されて、リオの銅以上のメダル獲得が東京で実現することを期待したい。
30歳の杉田祐一(149位)は、身長175cmでツアーの中では小柄だが、フットワークを活かしてカウンター気味に打つフラット系のストロークが武器だ。2017年ATPアンタルヤ大会(トルコ、サーフェスが天然芝)では、日本男子史上3人目のツアー初優勝を果たした。リオデジャネイロオリンピックで繰り上げ出場だったが3回戦に進出した。
ニューヨーク生まれで25歳のダニエル太郎(77位)は、長年スペインのバレンシアを拠点にしていたため、クレーコートを最も得意としている。2017年秋から拠点を東京に移し、2018年イスタンブール大会(トルコ、サーフェスがレッドクレー)では、日本男子史上4人目のツアー優勝者となった。身長191cmから繰り出されるサーブが武器で、クレー仕込みのストロークは粘り強い。杉田と同様、リオデジャネイロオリンピックで繰り上げ出場だったが3回戦に進出した。
若手では、23歳の西岡良仁(75位)が有望だ。ジュニア時代から負けず嫌いで有名だったが、実は、奨学金を給付してくれる「盛田正明テニス・ファンド」の選考会に2度落ち、それでもあきらめずにフロリダのIMGアカデミーでのテニス留学をつかみ取った異色の経歴の持ち主だ。2014年仁川アジア大会では、団体で銅メダルを獲得し、さらにシングルスでは、日本男子として40年ぶりとなる金メダルに輝いた。身長170cmと小柄だが、ツアー屈指のフットワークの良さと左利きのストロークを武器にしている。2017年3月に左ひざの前十字靭帯の単独断裂し、手術をしたが、2018年から復帰し、同年ATP深セン大会(中国)で日本男子史上5人目のツアー初優勝を果たした。
20歳の綿貫陽介(185位)は、2016年にプロへ転向したばかりで、主戦場はATPツアーより一つ下のチャレンジャー大会で戦っている。日本人としては長身の180cmから打つサーブが武器。2018年ジャパンオープンでは、予選を勝ち上がって、ツアーレベルでの本戦は2度目だったが、見事ツアー本戦初勝利を挙げて2回戦に進出した。今後の成長が楽しみな若手選手だ。
一方、男子ダブルスでは、26歳のマクラクラン勉(ATPダブルス18位)に期待がかかる。ニュージーランドと日本のハーフであるマクラクランは、2017年シーズン中盤から日本人選手としてプレーすることを決断し、ダブルススペシャリストになった。高速サーブと躍動感あるネットプレーが持ち味だ。2018年オーストラリアンオープン初のベスト4、同年ウィンブルドン初のベスト8。そして、ジャパンオープンでダブルス2連覇を達成。ダブルスで世界のトッププレーヤーの仲間入りを果たした。
オリンピックでは、同じ国の選手とダブルスをプレーしなければならないので、マクラクランが誰と組むことになるか楽しみだ。
文=神 仁司(Hitoshi KO)