追い風のホッケー日本男女代表、迫る東京五輪で世界に爪痕を残せるか

サムライジャパンの主将としてチームを支える山下学

マイナースポーツの域を脱しきれないホッケーは、リオデジャネイロ五輪の頃を振り返ると、日本代表が男女ともに、あまり強くなかったこともあって、国内での注目度は低かった。しかし、ここ数年、強化体制がテコ入れされ、選手たちの意識と実力は、大きく様変わりしている。2018年のアジア大会では、男女ともに初優勝を果たし、世界を驚かせた。すでに出場枠を確保している2020年東京五輪では、再び世界を、なによりも日本国民を驚かせたいところだ。

「サムライジャパン」より強い?!「さくらジャパン」

ホッケーは、1908年ロンドン五輪から正式種目となり、女子は1980年モスクワ五輪から実施された。縦91.4メートル、横55メートルのフィールド上で、ゴールキーパー1名を含む、1チーム11名のチームが、各15分4クオーター(計60分)で対戦。スティックを使って直径7.5センチメートルのボールを相手ゴールへ入れて得点を競う。

巧みなスティックさばきから繰り出されるドリブルやパスワークによる攻撃と、統率のとれた守備とのせめぎ合いが最大の見どころ。しかも、攻守のトランジションが非常に素早く、試合開始と同時に、一気にゲームに引き込まれてしまう魅力がホッケーにはあるのだ。

ホッケー日本代表には、男女それぞれ愛称がある。男子は「サムライジャパン」、女子は「さくらジャパン」だ。

「サムライジャパン」は、1932年ロサンゼルス五輪で銀メダルを獲得している。ただ、1968年メキシコ五輪での13位を最後に、オリンピックには出場できていない。2019年1月時点での世界ランキングは18位。1位ベルギー、2位オーストラリア、3位オランダと続き、アジア勢の最高位はインドの5位。その下にマレーシア(13位)、中国(14位)、韓国(17位)が続いて、その次に日本が位置している。

一方の「さくらジャパン」は、2004年アテネ五輪から2016年リオデジャネイロ五輪まで、4大会連続でオリンピックに出場している。メダル獲得こそないが、アテネで8位、リオで9位と健闘している。2018年9月時点での世界ランキングは14位。女子も男子の勢力図と似ており、1位オランダ、2位イングランド、3位オーストラリアという順でランクされている。アジア勢は、こちらも男子同様で、インドが9位で最高位。続いて中国(10位)、韓国(11位)、そして、日本(14位)となっている。

注目選手は、男女キャプテンとチームの華

2020年東京五輪は、とりわけ地元開催ということもあり、大会期間中の盛り上がりや試合の結果次第で、競技そのものの注目度を飛躍的に高めることができる。それだけに、日本のホッケー界の今後のためにも、五輪代表選手たちには大きな期待がかかっている。中でも注目なのは、チームを牽引する男女のキャプテンと、競技人気そのものを高める可能性を秘めた女子選手だ。

サムライジャパンの精神的支柱・山下学(DF)

サムライジャパンの主将である山下学(DF)は1989年に富山県で生まれた。最初はサッカーに興味があったが弱小チームだったため、小学校のホッケー部に移ってプレーを始めた。石動高校、東京農業大学を経て表示灯株式会社に入社。小矢部RED OXに所属し、チームの精神的支柱となっている。優勝した2018年アジア大会では「東京五輪の出場権は得ている。失うものはない」とチームメートに言い聞かせて戦った。決勝のマレーシア戦では、幾度もビハインド状態に陥りながらも、残り20秒あまりで同点に追い付く粘りを見せて、世界を驚かせた。

さくらジャパンを牽引する内藤夏紀(DF)

一方のさくらジャパンで、2018年からキャプテンを務め、守備の要としてチームを支えているのが内藤夏紀(DF)だ。一対一の駆け引きに長けており、機敏な動きで相手のパスを遮る壁となる。穏やかな性格で、周囲から信頼されるという。内藤は1991年に岐阜県で生まれた。中学校まで9年間バレーボールをやっていたが、「やりきった」という気持ちになり、進学した各務野高校でホッケーを始めた。全国高校総体で準優勝し、立命館大学に進学後は、関西学生リーグ制覇に貢献。強豪のソニーに入社し、5年目の2017年には、日本リーグなど3冠を達成。2016年リオ五輪は、靱帯断裂の大けがでメンバーに入れなかった。それだけに、2020年東京五輪に賭ける思いは強い。

モデルも務めるホッケー人気の起爆剤?湯田葉月(MF)

そして、もう一人、「さくらジャパン」の中から、メディアで「美人すぎるホッケー選手」とも紹介される選手を紹介しよう。ファッションモデルもこなす湯田葉月(MF)だ。彼女は1989年に大阪府で生まれた。「大阪で一番強いスポーツ」を求めて羽衣学園(中高一貫校)に進学。チームの中心選手として活躍を続け、高校では2年連続でインターハイ優勝を成し遂げた。卒業後は強豪の天理大学に進学し、関西リーグのトップの選手として常に活躍してきた。コカコーラウエストに入社し、日本代表として2014年ワールドカップや2016年リオ五輪などに出場している。現在、若者向けファッションブランドとコラボしたPRを展開中で、プライベート面でも注目される、数少ないホッケー選手だ。

地元開催の大きな追い風を結果に結びつけろ

サムライジャパンとさくらジャパンは、開催国枠で東京五輪の出場を決めている。過去には、ホスト国でも実力が見合わずに出場権を得られないケースがあったが、東京五輪におけるホッケー日本代表は、これまでに積み上げた努力と結果が認められた。出場決定時の世界ランクは男子が16位、女子が12位。ともに現在はランクを落とした格好となっているが、残りの期間で、どこまで世界との差を縮められるかに注目が集まる。

ここ数年、体制を強化し、スポンサーが付いたことで、選手たちの待遇が改善され、海外遠征にも行けるようになってきた。その効果は着実に結果に表れている。2018年8月のアジア大会で、男女アベック優勝は初めてのことであり、メダル獲得は、男子が1970年バンコク大会で銅メダルを獲得して以来、約半世紀ぶりの快挙だった。東京五輪まであと1年、さらに成長して、開催国枠での出場という好機を活かさなければならない。

サムライジャパン、さくらジャパン両チームを引っ張るキャプテン2人も、アジア大会の優勝で追い風が吹いていることを感じ取っていた。マイナースポーツであるホッケーの人気を高めるためには、チームが強くなるだけでなく、メディアの注目を浴びる選手が登場することも大切だ。人気と実力の両面から、東京五輪で爪痕が残せるかどうかに、日本ホッケー界の未来がかかっている。

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