日本代表選考会では厳しい基準を設定し、オリンピック本番でもメダルラッシュが期待された競泳男子。しかし、選考会と同じ会場で行われた本番では、本来のパフォーマンスを発揮することができなかった。
■準決勝8位から怒涛の追い込みで銀メダルを獲得した本多灯
競泳男子で唯一のメダル獲得となった本多灯。出場した男子200mバタフライでは、2019世界選手権で銀メダルを獲得していた瀬戸大也のメダルが有力視されていた。準決勝を1分55秒31のタイムで全体8位となり、ギリギリのところで決勝の切符をつかんだ本多は、不利とされる8レーンから決勝のレースに挑んだ。
好スタートを切った本多は、前半の100mを4番手で折り返した。ラスト50mからの追い込みが持ち味の本多は、150mのターンから徐々にギアを上げていく。残り25mを通過してメダル圏内に入ると、その勢いのまま、フェデリコ・ブルディソ(イタリア)をかわして銀メダルを獲得。決勝のタイム、1分53秒73は自己ベストだった。
本多は、Tokyo 2020(東京五輪)の日本代表選考会を兼ねた日本選手権で、日本記録保持者の瀬戸を抑えて優勝していた。リオデジャネイロ五輪までの勢いから、競泳陣からメダルラッシュが期待されていた中で、本多は競泳男子では唯一のメダル獲得者となった。価値ある銀メダルと言って良いだろう。
■3種目出場の瀬戸大也はメダル獲得ならず
2019世界選手権では男子200m個人メドレーを制し、日本の競泳から東京五輪代表内定を最初に勝ち取っていた瀬戸。これまでの実績からメダル獲得が有力視されていた。
まず、前回のリオデジャネイロ五輪で銅メダルを獲得した男子400m個人メドレー。最初のバタフライで好スタートを切り、3種目目の平泳ぎまで後続を引き離してトップ通過するが、最後の自由形で追い上げを許して予選敗退となった。
続く、200mバタフライでは準決勝で敗退し、内定第1号獲得のキッカケとなった200m個人メドレーに全てをかける。準決勝を全体の3位で決勝に勝ち上がった瀬戸は、子供の頃からライバルとして戦ってきた萩野公介とメダル獲得のレースに挑んだ。
400m個人メドレーとは違い、前半のバタフライと背泳ぎをやや抑えて入った瀬戸。3種目目の平泳ぎで3位まで浮上すると、400m個人メドレーでは追い上げを許した自由形を迎える。残り5mまで3位をキープしていたが、ジェレミ・デプランシュ(スイス)にタッチの差でかわされ4位。メダル獲得はならなかった。
■日本新記録を持つ佐藤翔馬と松元克央は決勝に残れず
4月の日本代表選考会で日本新記録を残した佐藤翔馬と松元克央は、メダル候補とも目されていたが、残念ながら結果を残すことができなかった。
代表選考会では、2分6秒40の日本新記録を出した男子200m平泳ぎの佐藤。予選3組では2分9秒43で2位通過としたが、準決勝では予選からタイムが伸びず、2分9秒04の2組6位で敗退した。
この種目で金メダルを獲得したアイザック・スタブルティクック(オーストラリア)の決勝タイムは2分6秒38。佐藤の自己ベストとはわずかの差であり、コンディションさえ整えばメダルの可能性もあっただけに悔やまれるところだ。
2019世界選手権の男子200m自由形で、日本競泳界で男女を通じて初の200m自由形メダリストとなった松元。4月の代表選考会でも1分44秒65の日本新記録を達成し、満を持して東京五輪へ挑んだが、予選5組でベストから2秒近く遅い1分46秒69とし、予選敗退。
金メダルを獲得したトム・ディーン(英国)の決勝タイムは1分44秒22で、松元の自己記録とほとんど差がなく、オリンピックの魔物を痛感させられた瞬間だった。
■メドレーリレーで存在感を見せた入江陵介
背泳ぎで長年日本競泳陣を牽引してきた入江陵介。100m背泳ぎでは準決勝敗退となったが、200m背泳ぎでは準決勝で全体の8位に入り、オリンピックでは4大会連続で決勝進出。決勝では前回のリオデジャネイロ五輪を上回る7位でフィニッシュした。
入江は男子400mメドレーリレーにも登場。第1泳者として53秒05、トータルでも3分29秒91の日本新記録を達成。競泳の日本代表主将や背泳ぎの第一人者として存在感を見せつけた東京五輪だった。