前回に続き2大会連続でオリンピック出場となった瀬戸大也。これまでも「世界選手権」で獲得した4個の金メダルをはじめ、国内外で実績を残しているが、オリンピックのメダル獲得はリオデジャネイロ五輪の男子400m個人メドレーの銅メダルしかない。
キャリア最高の状態で臨む東京五輪で、瀬戸は是が非でも金メダルが欲しいところだろう。ここであらためて瀬戸のキャリアを振り返る。
■萩野公介と切磋琢磨するが、ロンドン五輪出場を逃す
瀬戸は前回のリオデジャネイロ五輪で、少年時代からライバルの萩野公介とダブル表彰台を実現させた。しかし、表彰台の真ん中に立っていたのは萩野で瀬戸は3位。これまで「世界選手権」で4個の金メダル全てを個人メドレーで獲得していた瀬戸にしてみれば、これほど悔しかったシーンはないだろう。
瀬戸は萩野と小学生時代からライバル関係にあり、萩野に憧れていた。中学2年生の時に出場した「全国JOCジュニアオリンピックカップ水泳競技大会」の男子400m個人メドレーでは、萩野を抑えて当時の日本中学新記録で優勝している。
中学卒業後、瀬戸は埼玉栄高校へ進学。「インターハイ」で男子400m個人メドレー3連覇を達成するが、ロンドン五輪出場をかけた「日本選手権」では男子400m個人メドレー、男子200m個人メドレーで派遣標準記録を突破したものの、萩野らに敗れてオリンピックの出場権獲得とはならなかった。
■リオデジャネイロ五輪では萩野公介に敗れて銅メダル
瀬戸はロンドン五輪への出場が叶わずにモチベーションを落としていたものの、萩野のロンドン五輪銅メダル獲得に触発されて、再び世界を目指す体制を整える。
2012年12月の「世界短水路選手権」男子400m個人メドレーを短水路日本新記録で優勝を飾ると、翌年の「世界水泳選手権」では男子400m個人メドレーで自己ベストを更新して優勝。ライバルの萩野を下しただけでなく、日本人として初めて個人メドレーで金メダルを獲得する快挙を成し遂げた。
2014年、瀬戸はバタフライで大きく躍進。特に男子200mバタフライでは国内外負け知らずで、「仁川アジア大会」決勝で記録した1分54秒08は、2014年世界ランキング1位。2015年に出場した「世界選手権」では400m個人メドレーで2013年に続き連覇を達成し、この結果で2016年リオデジャネイロ五輪代表権を獲得した。
万全を期して臨んだリオデジャネイロ五輪。しかし、瀬戸の前に立ちはだかったのがライバルの萩野だった。2014年「仁川アジア大会」では個人メドレーなどで4個の金メダルを獲得するなど、萩野が急成長。2015年には右ヒジの骨折で戦線離脱するものの、リオデジャネイロ五輪では、瀬戸を抑えて日本人初の個人メドレー金メダル奪取を成し遂げた。
■2019世界選手権2冠達成で東京五輪代表内定第1号
瀬戸は2017年、実質的なプロ選手として企業と所属契約を結び、練習拠点も国立スポーツ科学センターへ移した。
この年に開催された「世界選手権」において、200mバタフライと400m個人メドレーで銅メダルを獲得。2019年の「世界選手権」では、日本人として初の男子200m個人メドレーで金メダルを獲り、男子200mバタフライでは銀メダルの活躍が認められ、東京五輪代表内定第1号となった。また、400m個人メドレーでも優勝し、日本人で初めて1大会個人種目3個のメダル獲得を達成する。
しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い、東京五輪は1年延期が決定。その後、瀬戸自身のプライベートの問題により、日本水連から2020年内の活動停止処分が下されていた。
■2021年に復活をアピール、悲願の五輪金メダル獲得へ
活動停止処分が明けると、2021年2月の「ジャパンオープン2020」で戦列復帰を果たす。男子400m個人メドレー予選を2位通過し、決勝ではライバルの萩野を抑えて4分12秒57で優勝。
出直しとなった試合でいきなり結果を残すと、4月の「日本選手権」では男子400m個人メドレーで4分9秒02を記録し、200m個人メドレーでも萩野をわずか0秒02差ながら抑えて、400m個人メドレーと2冠を達成し復活をアピールした。
瀬戸は東京五輪で男子200mバタフライ、200mと400mの男子個人メドレーに出場。ライバルの萩野も男子200m個人メドレーにエントリーしているため、東京五輪の決勝で2人の顔合わせが実現する可能性もある。
リオデジャネイロ五輪後も、瀬戸は個人メドレーとバタフライにおいて、世界でトップ争いを繰り広げてきた。2019年世界選手権では個人メドレー2冠を達成している。母国開催となる東京五輪では、悲願の金メダル獲得を目指す戦いが待っている。