男子ラグビー日本代表:2019年W杯国内開催の追い風を受け、東京オリンピック2020では強豪国に挑戦

男子セブンズ日本代表

2020年東京五輪の出場権を女子とともにすでに獲得している男子ラグビー日本代表。4年前のリオデジャネイロ五輪では、4位入賞とメダルまであと一歩だっただけに、地元開催での奮闘が期待されている。さらに2019年に行われるラグビーワールドカップ(15人制)はアジア初となる日本開催だ。国内12都市で繰り広げられる熱い戦いに日本のラグビー熱が高まることは必至で、翌年の東京五輪に出場する「セブンズジャパン」の背中を押す大きな力になりそうだ。

シンプルかつスピーディーな展開が特徴

オリンピックは7人制の「セブンズ」で行われる。7分ハーフで2分間の休憩を挟み、前後半での戦いとなる(決勝は10分ハーフ)。15人制は体力の消耗が激しく、16日という開催期間内に、全試合を行うのは困難なことが、不採用の一因とされており、その問題をクリアするために採用されたのが、この7人制というスタイルだ。同じ広さのフィールドやルールで行う反面、少人数かつ短時間ゆえに、15人制ラグビーとは見どころがかなり異なる。

モールやラックといった選手が密集するプレーは少なく、できる限りコンタクトを回避して、スピードやステップで相手を「抜く」プレーが多いのが特徴。左右にボールが大きく動き、スピーディーな展開やトリッキーなハンドリングテクニックが見られる。また、突出した能力を持つ選手に主導権を握られると、なかなか止められないことから、15人制以上に体格や身体能力の差が顕著に表れる一方で、試合時間が短いため、得点するための攻撃パターンがかなり限られており、相手チームを徹底分析し、万全の準備をすれば、勝機がつかめるとされている。たとえ世界の強豪国でも、「絶対」がない点が、セブンズの魅力だろう。

過去、日本のメダルはなし

オリンピックにおけるラグビー競技は、男子15人制が1900年パリ五輪、1908年ロンドン五輪、1920年アントワープ五輪、1924年パリ五輪で4回ほど実施されて中止となった。しかし、2009年のIOC総会で復帰が決定され、2016年リオデジャネイロ五輪から、男女の7人制ラグビーが実施された。過去5回大会で、日本はメダルを獲得していない。リオデジャネイロ五輪での男子の成績は、フィジーが金メダル、イギリスが銀メダル、南アフリカが銅メダルを獲得している。

「列強」として名を連ねる発祥地イギリスとかつての領地国

ラグビーの起源は、1823年にイングランドの有名なパブリックスクールである「ラグビー校」で、フットボールの試合中に、突然ボールを持ってゴール目指して走り出した少年がいたこととされている。イギリス発祥のスポーツのためか、ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアのように、かつてイギリス領であった国に強豪国が多いようだ。

ニュージーランドの「オールブラックス」は、黒のユニフォームがトレードマークで、試合前に先住民マオリ族の民族舞踊である「ハカ」を披露することで知られる。すべての国を相手に勝ち越しを重ね、ワールドカップでの優勝も多い。

南アフリカの代表チームは「スプリングボクス」の愛称を持つ。屈強な選手による鉄壁のディフェンスで知られ、ワールドカップでのトップの勝率を誇る。

2015年イギリスで開催されたワールドカップ前回大会の一次リーグで、日本代表はその南アフリカに勝ち、「史上最大の番狂わせ」として大きく取り上げられたことは記憶に新しい。オーストラリアのチーム愛称は「ワラビーズ」。ワールドカップ前回大会は準優勝だった。ヨーロッパに目を転じると、巧みなパス回しでボールをつなぎフランス代表は、その華麗さから「シャンパンラグビー」と呼ばれている。

もちろん、15人制ラグビーが強いところだけでなく、リオデジャネイロ五輪のチャンピオンで、今年7月にアメリカ・サンフランシスコで行われた「第7回ラグビーワールドカップ・セブンズ2018」で4位に輝いた「フライング・フィジアンズ」ことフィジー、同大会ベスト8で、着実に力をつけてきているアメリカも、東京五輪のメダル候補として熱い視線を集めている。

東京2020でスターは生まれるのか。注目は五輪経験者の2人

現在、セブンズの日本代表選手は、福本翔平、副島亀里ララボウラティアナラ、本村直樹、加納遼大、林大成、坂井克行、西川虎哲、中澤健宏、橋野皓介、小澤大、中野将宏、野口宜裕。この中でリオデジャネイロ五輪を経験しているのは、副島、坂井の両選手だ。

副島はリオデジャネイロ五輪の覇者フィジーの出身。日本人の妻と結婚し、日本国籍を取得した。2009年に来日し、九州で肉体労働をしながらクラブチームでプレー。リオデジャネイロ五輪後に、ようやくプロ契約を勝ち取った苦労人だけに、努力することの大切さを良く知る選手と言えるだろう。最近では、日本語も上達し、ほかの選手とのコミュニケーションもスムーズになったという。「メダルまであと一歩」を知る選手の存在はチームを支えることになるだろう。

一方の坂井はこれまで大きな故障ナシの「鉄人」として知られている。チームの中で最もキャリアが長く、2020年東京五輪でセブンズ11年目となる。総監督が代わり、オリンピアンではなく、「メダリストを目指す」と目標も一層明確になった。ベテランの役割は、指導者が掲げる目標を、チーム全体で共有できるように促すことだろう。フィジー、イギリス、南アフリカといったライバルを倒すために、どうすれば良いかを考え、練習に励む日々を送っている。

現状は苦戦が続くも、今後の奮起に期待

「第7回ラグビーワールドカップ・セブンズ2018」に、「セブンズジャパン」も出場した。初戦のウルグアイ戦に勝利するも、リオデジャネイロ五輪で苦杯を喫したフィジーに敗戦。順位決定のチャレンジトーナメントにまわり、24カ国中15位という結果に終わった。また「HSBCワールドラグビーセブンズシリーズ2018-2019」では、2シーズンぶり3度目となるコアチームへの復帰を果たしたが、11月30日、12月1日で行われた第一戦ドバイ大会では、13位決定戦でウェールズに敗れて、14位となった。チームとしては苦しい戦いが続いている。しかし、強豪に対する周到な準備力こそが、岩渕健輔総監督率いる「セブンズジャパン」の最大の持ち味。2016年リオデジャネイロ五輪でも発揮された徹底分析に基づく、最高のパフォーマンスで、東京五輪のメダルを目指してもらいたい。

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