リオデジャネイロ五輪の体操男子団体で金メダルを獲得した日本。前回大会から5年が経過した今大会、団体メンバーは全員が初出場となる。一方の種目別では、喜怒哀楽を経験した2人のベテランが一芸で勝負をかける。
◆若さとフレッシュさで大会連覇を狙う男子団体
連覇を狙う体操の男子団体。平均年齢は22歳弱で、全員が五輪初出場というフレッシュなメンバーとなった。
代表選考会をトップで通過した橋本大輝は、全日本個人総合選手権決勝で高得点を叩き出し、日本の新エースに名乗りを上げた。前回のリオデジャネイロ五輪までエースとして君臨していた内村航平の後継者として、どこまでスコアを伸ばせるのかに注目が集まる。
メンバーで随一の安定感を誇るのが萱和磨。リオデジャネイロ五輪の補欠メンバーで、2018年世界選手権団体決勝では4種目に出場。全て14点台でまとめて日本の団体銅メダル獲得に貢献した。4月の全日本個人総合選手権では鉄棒で起こった「1000回に1回」のミスにより3位に終わったが、確実に順位を押し上げる力のある選手だ。チームに安定をもたらすことができるか。
萱と同級生にあたる谷川航。弟の翔と切磋琢磨しながら「五輪に出場してメダル獲得」を目標としてきた。リオデジャネイロ五輪後は、萱とともに代表に定着してきた。練習熱心で努力家という一面を持つ。跳躍の高さと着地の正確性を武器に、若きチームを支えていく。
最後は北園丈琉。2018年に15歳で出場したユース五輪では個人総合、種目別のゆか、つり輪、平行棒、鉄棒を制して5冠を達成。日本男子体操史上初の快挙を達成し、次世代エースとして大きな期待が寄せられた。
しかし、4月に行われた全日本個人総合選手権で試練に直面する。予選を1位で通過し、史上最年少優勝を視界に捉えた中で臨んだ決勝。最終種目の鉄棒でまさかの落下となり、最終順位は6位となった。さらに、落下の際に両ひじを負傷。東京五輪の切符獲得に絶望視されていた。
だが驚異的な回復力で5月のNHK杯に出場し、9位入賞。代表入りへ望みをつなぐと、6月の全日本体操種目別選手権で結果を残し、男子団体メンバー最後の切符を勝ち取った。
潜在能力の高さは誰もが認めるところ。最高の舞台でどこまで輝きを表現できるのかに注目だ。
団体2連覇を狙う上で、ライバルとなるのは中国とROC(ロシア・オリンピック委員会)だろう。2018年は中国、2019年はロシアが世界選手権団体を制し、日本はいずれも3位だった。
中国は正確な演技ができる肖若騰と「世界一美しい体操」と評価されている鄒敬園が中心。ROCはロシア国内で内村と同じく「キング」と呼ばれる、2018年世界選手権個人総合金メダルのアルトゥル・ダラロヤン、2019年世界選手権3冠のニキータ・ナゴルニーという2人の王者を揃えて、金メダルを狙う。
日本にとっては大きな壁となり立ちはだかりそうだ。自国開催というアドバンテージを生かし、若さと勢いで何色のメダルを獲得できるのだろうか。
◆内村航平と亀山耕平、2人のベテランがメダルを狙う
個人枠で日本から出場するのは、鉄棒の内村航平とあん馬の亀山耕平だ。
内村は前回まで3大会連続でオリンピックに出場し、ロンドン五輪とリオデジャネイロ五輪で個人総合2連覇を達成。2020年から鉄棒に専念することを表明し、H難度の「ブレットシュナイダー」を軸に高難度の技を中心とした構成で、東京五輪を目指してきた。
今年に入り、NHK杯と全日本種目別選手権大会で15点台を叩き出して個人枠で4大会連続五輪出場を手にした。「自分が満足いく演技を求めていかなければいけない」と内村が目指しているのはあくまでも「完璧な演技」だ。「完璧な演技」ができれば、3大会連続金メダルが見えてくる。
内村とともに個人枠で代表入りを果たしたのが亀山耕平だ。2013年世界選手権種目別のあん馬決勝では、15.833点をマークし金メダルを獲得した。亀山はリオデジャネイロ五輪への挑戦を現役人生の集大成として臨んでいたが、五輪に出場することはできなかった。引退という言葉が頭をよぎったというが、「後悔しない人生にしよう」と考え、東京五輪を目指す決断をする。個人枠の予選を兼ねた2019年からのワールドカップで好成績を残して、念願の五輪出場を果たした。
奇しくも2人は同級生。団体メンバーは若さが売りなのに対し、個人枠の2人はともにベテランの域に入っている。ベテランだからこそ繰り出せる体操の神髄を東京五輪で惜しみなく披露できるかに注目が集まるところだ。