柔道のグランドスラム大阪2019が11月22日から24日にかけて開催される。今年の世界選手権を制した選手にとっては、優勝すれば東京五輪代表内定がほぼ確実となる重要な大会。また、逆転でのオリンピック出場に望みをかける選手たちも熾烈な戦いを繰り広げることだろう。
グランドスラム大阪は、東京五輪代表の選考に関わる重要な国際大会だ。今夏の世界選手権優勝者が今大会で頂点に立ち、その後の強化委員会で出席者の3分の2以上の賛成を得ると、東京五輪代表内定となる。
今大会に日本代表は男女各階級4名ずつが出場する。
注目選手にまず挙げられるのは、実力と人気ぶりで日本柔道界をけん引する阿部一二三(ひふみ/男子66キロ級)と阿部詩(うた/女子52キロ級)の「阿部兄妹」だ。「兄妹で東京五輪」を目標に掲げる2人にとって、今夏の柔道世界選手権は明暗が分かれる結果となった。3連覇をめざした兄の一二三は、準決勝で丸山城志郎と延長戦までもつれ込む接戦となり、技ありを奪われて敗戦。敗者復活戦で銅メダルを獲得したものの、世界選手権を制した丸山が五輪代表権に最も近い位置にいる。今大会、丸山に優勝を許せば事実上、東京五輪への道は閉ざされる。逆転での五輪切符獲得を狙う一二三にとってはグランドスラム大阪が正念場となる。
一方、妹の詩は今年8月の世界選手権で2連覇を達成している。最大の難敵と見られていたリオデジャネイロ五輪金メダリストのマイリンダ・ケルメンディ(コソボ)とは準決勝で相見え、延長戦で寝技を仕掛け、一本勝ちを収めた。決勝ではナタリア・クジュティナ(ロシア)を相手に開始30秒で得意の袖釣り込み腰を繰り出して一本勝ち。好調を維持したまま今大会でも優勝を果たすことができれば、東京五輪出場が大きく近づく。
男子では、阿部にとって最大のライバルとなる丸山城志郎に大きな注目が集まる。
今年の世界選手権で初出場初優勝を果たした丸山は、1992年バルセロナ五輪日本代表の丸山顕志(けんじ)の次男で、父の厳しい指導を受けて育った。大学1年次に全日本ジュニア選手権を制したが、その後は左ひざ前十字じん帯断裂の大ケガを負うなど不遇の時を過ごし、リハビリ中に頭角を現した阿部の後塵を拝す時期が続いた。しかし、2018年秋の結婚を機に一念発起すると、同年のグランドスラム大阪大会から勝利を重ね、世界選手権の代表権を獲得。「日本刀の切れ味」と称される内股と巧みな巴投げを武器に世界王者となり、東京五輪代表の最有力候補に躍り出た。今大会でも優勝すれば、東京五輪代表内定が確実視されるだけに、モチベーションも高いだろう。
81キロ級では、リオデジャネイロ五輪銅メダリストの永瀬貴規(たかのり)が復活をかけている。2017年の世界選手権後、右ひざじん帯の損傷が判明し、長期離脱を強いられた。しかし、今年の全日本選抜体重別選手権で優勝して復調の兆しを見せると、そこからグランプリ・モントリオール、グランプリ・ザグレブ、グランドスラム・ブラジリアと国際大会3連覇を成し遂げ、波に乗った状態で今大会に臨む。
一方、リオデジャネイロ五輪73キロ級金メダリストの大野将平は、今大会の代表に選出されていたが、左手人差し指の負傷で辞退。2大会連続のオリンピック代表内定は今後の選考対象大会へと持ち越しとなった。
女子では、78キロ超級の素根輝(そね・あきら)が台頭している。
2019年7月に19歳になったばかりの素根は身長162センチとこの階級では小柄な選手だが、スタミナと巧みな組み手を武器に、背の高い相手とも互角以上に渡り合う。今年の世界選手権では、決勝でオリンピック3大会連続メダリストのイダリス・オルティス(キューバ)と対戦。先に指導を2回受ける苦戦を強いられたが、そこから反撃を仕掛け、延長戦の末に反則勝ちを奪って初優勝を飾っている。
軽量級では、角田夏実(つのだ・なつみ)が逆転での五輪出場を狙っている。角田は関節技の名手として52キロ級を戦場としてきたが、2017年世界女王の志々目愛(ししめ・あい)、2018年、2019年世界選手権を連覇した阿部詩と強敵がそろう同階級で勝負するのは難しいと判断した。
最軽量級である48キロ級への階級変更を決意した角田は、11月に行われたばかりの講道館杯全日本体重別選手権で、52キロ級時代と遜色のない持ち味のパワーを生かしてオール一本勝ちを収め、グランドスラム大阪への出場権を手にした。今大会では48キロ級の第一人者であり2017年の世界女王でもある渡名喜風南(となき・ふうな)や海外勢を相手に、東京五輪への思いと覚悟の強さが問われる。