2020年東京五輪に向けて各競技で代表選手争いが激化しつつある。アーチェリーもその一つだ。アーチェリーにおいては、お隣の韓国では「オリンピックでメダルを獲得することよりも、韓国代表選手になることのほうが難しい」とも言われているが、ここ日本でも国内外の大会で熾烈な出場権獲得争いが続いている。
雑念に打ち勝つ能力が勝負を分ける
アーチェリーは弓で矢を放ち、標的上の得点を競い合うスポーツだ。他の競技同様、技術、体力が必要不可欠であるのと同時に、平常心を保つ力や集中力、そしてメンタルの強さなど、雑念に打ち勝つ能力が勝負を分けると言っても過言ではない。
アーチェリーの種類はいくつかあり、日本で主に行われているのは、屋外の地面の平坦な射場で実施する「ターゲット」、森や山などで実施する「フィールド」、屋内で実施する「インドア」の3つ。オリンピックでは「ターゲット」が競技種目となっている。
ターゲットアーチェリーでは、競技者から標的までの距離は70メートル、標的面は直径122センチというサイズでつくられている。標的面に当たった場合、最高で10点、最低で1点が与えられ、面から外れた場合は0点となる。
オリンピック競技としてアーチェリーが導入されたのは、第2回大会の1900年パリ五輪だ。その後、1924年から1968年までは不採用となっていたものの、1972年ミュンヘン五輪で復活。正式競技として再び採用され、現在に至る。
日本勢は個人、団体ともに開催国枠を確保
2020年東京五輪におけるアーチェリーの種目は合計5つ。個人の男子と女子、団体の男子と女子、そして団体の男女ミックスだ。出場選手数は男女それぞれ64名ずつで、1カ国最大3名までと定められている。
選手選考において「最大の予選」と表現されるのが、オリンピックの前年に開かれる世界選手権大会だ。2019年は6月にオランダで開催され、ここで約半数となる31名の選手が決定することになっている。
2020年東京五輪に関しては、同年の春まで開催される大陸選考大会などでさらに31名を選出する。残りの2名分の枠は「ワイルドカード」と呼ばれ、これから発展が見込まれる国の選手に割り当てられる。東京五輪の出場枠を決める主な大会は以下のとおり。
東京五輪の出場枠を決める主な大陸選考大会
- アフリカ・ゲームズ
- パンアメリカン・ゲームズ
- 太平洋ゲームズ
- アジア大陸選考競技会
- アフリカ大陸選考競技会
- アメリカ大陸選考競技会
- ヨーロッパ選手権・大陸選考競技会
日本代表選手の選考は2018年11月に始まり、継続して行われている。日本は開催国枠として、個人の男子と女子のそれぞれ1枠、団体の男子と女子のそれぞれ1枠、そして団体の男女ミックスの1枠を確保している。出場権をめぐる争いは、東京五輪が開催される2020年の4月まで続く予定だ。選考のポイントは下記のような3点が挙げられている。
日本代表選手選考のポイント
- 国内選考会及び一部海外選考会にて選手選考を行う。
- 選考会での上位成績者の勝ち抜き方式で、複数回の選考会を経て選手選考を行う。
- 選考はすべて70メートルラウンドで行い、トーナメント方式での選考は行わない。
各選考会により念入りに選手の見極めが続けられており、東京五輪行きの出場権を誰に託すかを決める各選考会の内容は下記のとおりとなっている。
各選考会の概要
[1]世界選手権第一次選考会(2019年ナショナルチーム選考会)
- 開催時期::2018年11月
- 場所:つま恋リゾート彩の郷
- 出場選手:男女各32名
- 70メートルラウンド累計得点による男女上位16名を2019年ナショナルチーム兼東京2020オリンピック強化指定選手とする。
[2]世界選手権第二次選考会
- 開催時期::2019年2月
- 場所:アメリカ・チュラビスタ
- 出場選手:2019年ナショナルチーム兼東京2020オリンピック強化指定選手男女各16名
- 70メートルラウンド累計得点による男女上位8名を世界選手権第三次選考会進出者とする。
[3]世界選手権第三次選考会
- 開催時期::2019年3月
- 場所:つま恋リゾート彩の郷
- 出場選手:世界選手権第二次選考会を勝ち抜いた8名
- 70メートルラウンド累計得点により、上位者が翌日の試合に進出。
- 男女上位4名を世界選手権最終選考会進出者とする。
[4]世界選手権最終選考会
- 開催時期::2019年4月
- 場所:2019年第1回ワールドカップ メデジン大会(コロンビア)
- 出場選手:世界選手権第三次選考会を勝ち抜いた4名
- 予選ラウンド累計得点により、上位3名を世界選手権大会日本代表とする。
[5]東京オリンピック第一次選考会(2020年ナショナルチーム選考会)
- 開催時期::2019年11月
- 場所:夢の島公園アーチェリー場(予定)
- 出場選手:男女各16名出場(2019年世界選手権大会メダル獲得選手は選考対象外)
- 2019年世界選手権大会出場選手
- 2019年ナショナルチーム海外派遣大会メダル獲得選手
- 2019年公認試合1試合と2019年全日本選手権大会予選記録の2試合合計得点上位者
- 70メートルラウンド累計得点による男女上位8名を2020年ナショナルチーム兼東京2020オリンピック候補選手とする。
[6]東京オリンピック第二次選考会
- 開催時期::2020年3月
- 場所:NTC新拡充棟(予定)
- 出場選手:2020年ナショナルチーム兼東京2020オリンピック候補選手8名
- 70メートルラウンド累計得点による男女上位5名を東京オリンピック最終選考会出場者とする。
[7]東京オリンピック最終選考会
- 開催時期::2020年4月
- 場所:NTC新拡充棟(予定)
- 出場選手:東京オリンピック第二次選考会上位者5名、および2019年世界選手権でのメダル獲得選手
- 70メートルラウンド累計得点による男女上位3名を東京オリンピック日本代表内定者とする。
6名が日本代表として2019年6月の世界選手権に参加
すでに述べた日本代表選手選考に関して、2019年5月上旬時点では上記[4]の世界選手権最終選考会まで終了した段階となっている。以下の6名が2019年6月にオランダのスヘルトーヘンボスで開催される世界選手権の日本代表に選出された。
男子代表選手
- 古川高晴(近畿大学職員)
- 武藤弘樹(慶應義塾大学)
- 倉矢知明(イシダ)
女子代表選手
- 杉本智美(ミキハウス)
- 久原千夏(福井信用金庫)
- 園田稚(東京都立足立新田高校)
なかでも注目は古川高晴だろう。2012年ロンドン五輪で銀メダルを獲得、2016年リオデジャネイロ五輪でも8位入賞を果たしたベテランだ。古川は1984年8月9日生まれで、2019年に35歳となるが、アーチェリーは年齢による影響を受けにくい競技の一つでもあるため、オリンピック2大会や数々の国際大会での経験を糧に、2020年東京五輪ではその活躍が大いに期待できる。
代表選手の選考は日本以外でも熾烈を極めている。特に韓国では「オリンピックでメダルを獲得することよりも、韓国代表選手になることのほうが難しい」と言われるほどレベルの高い競争が繰り広げられているところだ。
2016年リオデジャネイロ五輪でも韓国勢は存在感を見せつけた。男子の個人と団体、女子の個人と団体という4種目で金メダルを獲得している。女子団体では1992年バルセロナ五輪以来7連覇中であり、2020年東京五輪でもアーチェリー韓国代表が会場を沸かせる可能性が高い。