【東京オリンピック出場枠争い】体操:出場枠は男女それぞれ98名ずつ 。開催国枠確保の日本勢はメンバー争いが過熱

内村航平は全日本体操競技個人総合でまさかの予選敗退

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2018年の世界選手権個人総合で銀メダルの村上茉愛は、2019年5月に両仙腸関節症を負いNHK杯大会中に棄権。10月に行われる世界選手権団体代表入りに暗雲が立ち込めた

東京五輪の体操は、2018年から出場権争いが続いている。男子団体の日本代表は、2018年の世界体操選手権で銅メダルを獲得したことにより、東京五輪への切符を獲得。今後は個人総合や種目別での出場権争いに加え、日本代表メンバー入りをめぐる熾烈な戦いにも注目が集まる。

東京五輪では「種目別」のみに出場する「個人枠」が新設

オリンピックで実施される体操の種目は、男子がゆか運動、あん馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒の6種目。女子がゆか運動、段違い平行棒、平均台、跳馬の4種目。男女それぞれに「団体総合」「個人総合」「種目別」があり、「種目別」は各種目それぞれ各国最大で一人のみが出場できる。

「男子団体総合」はこれまで1チーム5人で6種目の合計点を競ってきたが、2020年の東京五輪では1チーム4人に変更となる。また、東京五輪では新たに「種目別」のみに出場する「個人枠」が設けられ、最大で2人の選手が選抜できるようになった。男女それぞれ団体戦で12カ国48人、個人出場枠として50人。男女ともに、計98人ずつに出場枠が与えられる。

東京五輪の出場権獲得条件は、以下が大まかな内容となっている。

東京五輪の出場権獲得条件

  • 条件① 2018年世界選手権団体決勝の男女上位3カ国
  • 条件② 2019年世界選手権団体予選の男女上位9カ国(条件①を満たした国を除く)
  • 条件③ 2019年世界選手権個人総合予選の上位男子12人、上位女子20人(各国1人のみ、条件①②を満たした国の選手を除く)
  • 条件④ 2019年世界選手権種目別決勝の各種目上位3人(全種目を通じて各国3人まで。条件①②③を満たした国や選手を除く。一選手につき1枠のみで、男子最大18人、女子最大12人)
  • 条件⑤ 2018から2020年に行われる種目別ワールドカップシリーズ8大会のうち各種目の順位でベスト3のポイント合計にて各種目1位になった選手(各国1人まで。条件①②を満たした国の選手も含む。男子最大6人、女子最大4人)
  • 条件⑥ 2020年個人総合ワールドカップシリーズのポイント合計男女上位3カ国(国に対して個人出場枠が1つ。2019年世界選手権団体予選12位以内に入った12カ国の中から出場枠が決まる)
  • 条件⑦ 2020年各大陸選手権の個人総合決勝の結果で、男子9人、女子9人の出場権が次のように割り当てられる。ヨーロッパ:2人、アジア:2人、アメリカ:2人、アフリカ:2人、オセアニア:1人

なお、東京五輪では開催国枠が確保されており、開催国が条件①~⑦で枠を獲得できなかった場合、2019年世界選手権の個人総合予選で最上位の男女それぞれの選手に1枠の出場権が与えられる。 また、第三者委員会が選定する出場枠もあり、男女1人ずつが決定される。

女子団体はアメリカ、ロシア、中国が出場権を獲得

2018年10月に行われた第48回世界体操選手権の結果により、男子団体は中国、ロシア、日本の3カ国が東京五輪への出場権を獲得している。一方、女子団体の日本は同大会で6位に終わり、前述の「条件①」での出場権獲得とはならなかった。リオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得したアメリカのほか、ロシア、中国が東京五輪出場を決めている。

種目別の五輪出場権は、2018年-2020年シリーズの結果も選考対象となるため、すでに出場枠をかけた戦いがスタートしている。2019年3月に開催されたドーハで行われた大会での結果を踏まえ、3月26日に発表された現時点での世界ランキング上位選手は以下のとおり。なお、個人総合は2020年シリーズの結果のみが選考対象となる。

男子の上位5人

  • 1位:カルロス・ユーロ(フィリピン)
  • 2位:ライデルレイ・サパタ(スペイン)
  • 3位:アルテム・ドルゴピャト(イスラエル)
  • 4位:エミル・ソラブオ(フィンランド)
  • 5位:カシミール・シュミット(オランダ)

※日本人最上位は10位の荒屋敷響貴

女子の上位5人

  • 1位:ジェイド・キャリー(アメリカ)
  • 2位:オクサナ・チュソビチナ(ウズベキスタン)
  • 3位:アレクサ・モレノ(メキシコ)
  • 4位:マルタ・ピハン・クルツザ(ポーランド)
  • 5位:バルバラ ズボバ(ロシア)、マリーヌ・ボワイエ(フランス)

※日本人最上位は14位の坂口彩夏

日本代表は特別強化選手やナショナル選手が有力

東京五輪の日本代表選考基準については、明確には発表されていない。2016年のリオデジャネイロ五輪では同年の全日本選手権、NHK杯、全日本種目別選手権といった国内大会が選考対象となった。また、日本体操協会は以下の特別強化選手を選定しており、国際大会に派遣される「ナショナル選手」と合わせて、東京五輪の出場が有力視されている。

男子 2020特別強化選手

  • 杉野正尭(たかあき)、南一輝、三輪哲平、安達太一、北園丈流(たける)、岡慎之助

女子 2020東京五輪特別強化選手

  • 村上茉愛(まい)、寺本明日香、杉原愛子、畠田瞳、大口真奈、畠田千愛(はたけだ・ちあき)、豊田望、梶田凪(なぎ)、桒嶋姫子(くわじま・きこ)、山田千遥、清遠実生(きよと・みお)、新田いずみ、宮田笙子(しょうこ)

男子 2018年度体操競技ナショナル選手

  • 内村航平、白井健三、萱和磨、谷川翔(かける)、谷川航、千葉健太、田中佑典、野々村笙吾(しょうご)、田浦誠也(せいや)、前野風哉、神本雄也、荒屋敷響貴(ひびき)、長谷川智将(ともまさ)、高橋一矢、米倉英信(ひでのぶ)、安里圭亮、亀山耕平、宮地秀享(みやち・ひでたか)、三輪哲平

女子 2018年度体操競技ナショナル選手

  • 村上茉愛、寺本明日香、畠田瞳、杉原愛子、梶田凪、宮川紗江、内山由綺、中路紫帆、畠田千愛、中村有美香、湯元ゆりか、塙颯香(はなわ・そよか)

2019年4月に開催された第73回全日本体操競技個人総合選手権大会では、オリンピック個人総合で2連覇中の内村航平が14年ぶりに予選敗退を喫するなど、リオデジャネイロ五輪代表メンバーの成績が振るわず。男子勢では全日本個人総合で2連覇を果たした谷川翔や、その兄であり5月のNHK杯で2位の成績を残した谷川航、同大会3位の萱和磨などを筆頭に、東京五輪に向けて若手の台頭が大いに期待されている。

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