7人制ラグビーの「セブンズ」は2016年のリオデジャネイロ五輪で新種目として採用された。2020年も開催国枠で出場権を得ている日本は、地元・東京での大舞台を見据え、強化に励んでいる。メダルを争うライバルたちは大陸予選を通して、続々と出場権を獲得。日本はニュージーランドやアメリカの牙城を崩し、底力を見せつけられるか。
オリンピックにおけるラグビー=7人制、男女それぞれ12カ国に出場枠
男子はフィジー、女子はオーストラリアの優勝で幕を閉じたリオデジャネイロ五輪の「セブンズ」。ワールドラグビー管轄のもとで行われるオリンピックでの7人制ラグビーには、男女それぞれ12チームが出場する。
15人制のラグビーに比べ、7人制ラグビーはプレーヤーの数が半分以下となるものの、フィールドの大きさは変わらない。つまり一人ひとりの持久力や貢献度がさらに求められる。一方で試合時間は7分ハーフでトータル14分と、計80分の15人制に比べると5分の1以下に短縮。かつて1900年代初頭のオリンピックでは15人制ラグビーが実施されていたが、運営のコンパクト化、男女の共同参画等のためにリオ五輪から7人制として復活採用となった。
2度目の「セブンズ」オリンピック開催となる東京五輪への出場権を獲得するには、主に以下の大会で結果を残す必要がある。また、各大会に割り振られている出場枠は、男女それぞれ以下のとおり。
東京五輪出場権のかかった主要大会
- ワールドラグビーセブンズシリーズ2018-2019(男子は2018年11月30日~2019年6月2日、女子は2018年10月20日~2019年6月16日):4枠
- 南米予選(男子は2019年6月29日、30日、女子は 6月1日、2日):1枠
- アフリカセブンズ(男女ともに2019年11月8日、9日):1枠
- 2019 RAN(北米)セブンズ(男女ともに2019年7月6日、7日):1枠
- 欧州予選(男女ともに2019年7月13日、14日):1枠
- オセアニア予選(男女ともに2019年11月7日~9日):1枠
- アジア予選(男子は2019年11月23日、24日、女子は11月9日、10日):1枠
- 世界最終予選(男女ともに2020年6月):1枠
※各大会の日程は諸事情により変更になる可能性あり
東京オリンピック出場確定国(9月17日時点)
男子
- 日本(開催国)
- フィジー(ワールドラグビーセブンズシリーズ)
- アメリカ(ワールドラグビーセブンズシリーズ)
- ニュージーランド(ワールドラグビーセブンズシリーズ)
- 南アフリカ(ワールドラグビーセブンズシリーズ)
- アルゼンチン(南米)
- カナダ(北中米)
- イングランド(ヨーロッパ)
女子
- 日本(開催国)
- アメリカ(ワールドラグビーセブンズシリーズ)
- ニュージーランド(ワールドラグビーセブンズシリーズ)
- カナダ(ワールドラグビーセブンズシリーズ)
- オーストラリア(ワールドラグビーセブンズシリーズ)
- ブラジル(南米)
- イングランド(ヨーロッパ)
男子はフィジーやアメリカ、ニュージーランドが順当に出場権獲得
前述のとおり、男子は各大陸予選の優勝国に出場権が与えられる。一方、女子の場合はアメリカとカナダの2カ国がワールドラグビー女子セブンズシリーズで東京五輪の出場権を手にした場合、北米予選を制したチームがそのままオリンピック出場とはならず、世界最終予選に進むこととなる。
世界最終予選には、各大陸予選で2位、3位となったチーム(女子の北米予選からは上位2チーム)が参加。男女各12チームによるトーナメントで頂点に立った1カ国が、最後の最後に滑り込みで出場権を手にできる。
ワールドラグビーセブンズシリーズの男子大会は、すでに熱い戦いの幕が降りている。日本男子は「コアチーム」と呼ばれるトップ15カ国のなかに入っていたため、2019年6月まで実施される全10大会に参加したが、残念ながら日本女子は昨シーズンにコアチームから降格してしまったため不参加。上位5カ国と日本の成績は以下のようになっている。
ワールドラグビーセブンズ総合順位(2019年6月6日現在)
男子
- 1位:フィジー(186ポイント)
- 2位:アメリカ(177ポイント)
- 3位:ニュージーランド(162ポイント)
- 4位:南アフリカ(148ポイント)
- 5位:イングランド(114ポイント)
女子
- 1位:ニュージーランド(92ポイント)
- 2位:アメリカ(80ポイント)
- 3位:カナダ(78ポイント)
- 4位:オーストラリア(74ポイント)
- 5位:フランス(60ポイント)
ワールドラグビーセブンズの上位4カ国は東京五輪の出場権を獲得。今シーズンのシリーズ全戦に出場してきた日本男子だが、6月のパリ大会でイングランドとウェールズに敗れ、シーズン総合ランキングでコアチームの15チーム中最下位となり、降格が決まった。出場枠で東京五輪出場が決まっているものの、課題は少なくない。
「セブンズ専任」が誕生した男子、女子は新世代が奮闘
ワールドラグビーセブンズでは苦戦を強いられた日本男子だが、前回のオリンピックでは世界から注目を浴びた。
リオデジャネイロでは「王国」ニュージーランドを14−12で下す大金星を上げている。2戦目のイギリス戦には19−21と惜敗したが、3戦目はケニアに31−7と大勝し、1次リーグのC組を2位で突破。準々決勝ではフランスに12−7と快勝、準決勝では当時世界1位の強豪フィジーに底力を見せつけられ敗退したが、最終的に4位と大健闘した。ここで改めてリオデジャネイロで得た収穫と課題を生かせば、東京五輪での表彰台も決して荒唐無稽な夢ではない。
現在「セブンズジャパン」の主将を務める小澤大(おざわ・だい)は、最後の最後でリオデジャネイロ行きのメンバーから落選しただけに、東京五輪にかける思いが人一倍強い。15人制ラグビーのトップリーガーとしてトヨタ自動車にも所属していたが、セブンズ専任となる道を選び、競技により集中できる環境を整えている。彼のほかにも鶴ケ崎好昭、林大成らが東京五輪での躍進をにらみ「セブンズジャパン」に専念している。
一方の日本女子、通称「サクラセブンズ」はリオデジャネイロでは参加12チーム中10位で終わっている。初戦のカナダに0−45、第2戦でイギリスに0−40、第3戦はブラジルに10−26と3連敗。しかし9~12位決定戦では24−0でケニア相手にオリンピック初勝利を飾り、新たな歴史もつくった。2018年に行われたアジア競技大会では初の金メダルを獲得しており、「サクラセブンズ」の視界は決して悪くない。4年前のリベンジを誓う選手だけでなく、1997年生まれの堤ほの花や2000年生まれの平野優芽(ゆめ)など新世代の勢いにも期待がかかる。