東京五輪のボート競技は、男女ともにシングルスカル、舵手なしペア、ダブルスカル、舵手なしフォア、クオドルプルスカル、エイト、軽量級ダブルスカルの7種目で行われる。出場枠(参加国)は男女それぞれ順に32、13、13、10、10、7、18の延べ計103カ国となる。
8月の世界選手権が一番のカギ
東京五輪出場権を争う試合は、2019年8月の世界選手権と2020年春の大陸予選、さらにオリンピック直前の2020年初夏に行われる最終予選の3つだ。
- 2019世界選手権(オーストリア・オッテンスハイム)
この大会でそれぞれ以下の上位国枠に入り、最上位の選手やペアが出場権を得られる。枠はそれぞれシングルスカル9、舵手なしペア11、ダブルスカル11、舵手なしフォア8、クオドルプルスカル8、エイト5、軽量級ダブルスカル7。 - 大陸予選
大陸予選で選抜対象となる種目はシングルスカルと軽量級ダブルスカルのみ。シングルスカルの枠は18カ国で、うちアジア・オセアニアは5カ国となっている。また、軽量級ダブルスカルの枠は9カ国で、うちアジア・オセアニアは3カ国だ。大陸予選に出場できるのは、上記の2019世界選手権で、0~1種目しか出場枠を取れなかった国に限られる。また、大陸予選で取れる参加枠は、各国1種目に限られる。 - 最終予選
最終予選では、男女とも軽量級ダブルスカル以外の6種目で、いずれも2カ国ずつを選抜する。この予選までで、1種目も出場権を獲得できなかった場合、3カ国にシングルスカル1人の参加枠が与えられる。
ボート競技では開催国枠が与えられていないため、日本は2019年の世界選手権でしっかりと出場権を獲得することが重要で、日本代表選手たちは世界選手権にターゲットを絞って練習に取り組んでいる。
開催国枠および出場権争いの状況
過去の戦績を見てみよう。日本は2000年シドニー五輪と2004アテネ五輪で記録した男子6位が最高で、メダル獲得はゼロ。2012年ロンドン五輪のシングルスカル女子で榊原春奈選手が、2016年リオデジャネイロ五輪の軽量ダブルスカルで、男子の大元英照・中野紘志組、女子の大石綾美・冨田千愛組が出場したが、メダルには遠く及ばなかった。それだけ、世界の壁は高く立ちはだかっている。
2019年5月にブルガリアのプロブディフで行われたボートのワールドカップⅠは、五輪選考会となる同年8月の世界選手権の前哨戦と位置づけられており、各国の代表がしのぎを削った(Ⅱは6月、Ⅲは7月に実施予定)。ここから現時点での各国の実力を読み取ってみよう。日本代表が出場した種目のうち、五輪種目になっているのは、男子シングルスカル、男女ダブルスカル、男女軽量級ダブルスカル、女子舵手なしペアの6種目だ。
男子シングルスカルの上位14カ国は、1位から順に、中国、ベラルーシ、フィンランド、ベルギー、アゼルバイジャン、ブルガリア、メキシコ、日本(荒川龍太)、フィンランド、セルビア、日本(櫻間達也)、フィンランド、ベナン、モルドバ。世界選手権では、上位9カ国が五輪出場権を獲得できることになっている。そのため、日本も出場権獲得を狙える位置にいるといえそうだ。
男子ダブルスカルの上位12カ国は、順に中国、ポーランド、ベラルーシ、ポーランド、ハンガリー、中国、中国、ブルガリア、スペイン、ハンガリー、ジンバブエ、日本(栗原誠和・山尾圭太)。ダブルスカルで13カ国目につける日本はギリギリの当落線上か。
男子軽量級ダブルスカルの上位10カ国は、順にベルギー、ポーランド、ポルトガル、オーストリア、中国、スペイン、中国、中国、日本(西村光生・池田裕紀)、日本(佐藤翔・武田匡弘)。軽量級ダブルスカルでは、日本は7カ国目につけている。あと一歩という位置だ。
女子ダブルスカルの上位6カ国は、順に中国、ベラルーシ、キューバ、ポーランド、ハンガリー、中国となっている。日本(榊原春奈・米川志保)は残念ながらの圏外。世界選手権で五輪出場権を得るのは、上位13カ国までなので、かなりのレベルアップが必要と言えそうだ。
女子軽量級ダブルスカルの上位12カ国は、順に中国、オランダ、ポーランド、中国、日本(山領夏実・上田佳奈子)、中国、日本(冨田千愛・大石綾美)、オーストリア、スペイン、日本(角谷真緒・高島美晴)、ルーマニア、ポーランド。世界選手権の上位7カ国に五輪出場権が与えられるため、2組は食い込めるかもしれない状況だ。
女子舵手なしペアの上位12カ国は、順にオランダ、中国、アメリカ、中国、アメリカ、スペイン、アメリカ、アメリカ、ポーランド、ルーマニア、ハンガリー、日本(西田結惟・高野晃帆)。世界選手権で五輪出場権を得るには、あと一歩足りない。
出場が期待される日本の有力選手たち
上記のワールドカップIで、日本人選手が複数出場したのは3種目。男子シングルスカルの荒川龍太と桜間達也、男子軽量級ダブルスカルの西村光生・池田裕紀ペア、佐藤翔・武田匡弘ペア、女子軽量級ダブルスカルの山領夏実・上田佳奈子ペア、冨田千愛・大石綾美ペア、角谷真緒・高島美晴ペアだ。
それぞれ健闘はしたものの、全員が出場枠に入れるポジションにいるとは言いがたく、いずれも五輪予選となる大会ではボーダーライン上にいると考えるべきだろう。もちろん日本人同士で出場権を争う可能性も否定できない。また、日本人選手が複数出場しない種目も、確実に出場権を獲得できるかどうかは微妙だ。8月に行われる世界選手権に向けて、今、一層の飛躍が求められている。
東京五輪日本代表内定選手
【男子】
シングルスカル:荒川龍太
【女子】
軽量級ダブルスカル:大石綾美&冨田千愛