東京五輪で初めて正式種目に採用されるスポーツクライミングは、「スピード」「ボルダリング」「リード」の3種目の複合で競われる。日本勢の出場枠は、開催国枠を含めて男女最大で各2名。2018年の世界選手権では男子3名、女子2名が6位以内に入っており、代表権争いから熾烈を極めることが予想される。
日本には開催国枠が男女1枠ずつ設けられている
スポーツクライミングは、東京五輪でオリンピック史上初めて正式種目として採用され、「スピード」「ボルダリング」「リード」の3種目の複合で争われる。参加人数は男女各20名で、出場枠は各国・地域で男女それぞれ最大2名までという上限がある。日本には開催国枠が男女1枠ずつ与えられており、その開催国枠を含めて最大男女2名ずつが出場可能だ。
東京五輪は指定大会を勝ち抜いた選手個人に出場権が与えられる。2019年8月に東京・八王子で開催されるIFSCクライミング・世界選手権2019がその一つになっており、複合7位以内が出場権獲得の条件。そのほか、IFSC クライミング・ワールドカップの上位者らが出場できるオリンピック予選大会(フランス・トゥールーズ)の上位6名、各大陸選手権の優勝者1名に出場資格が与えられる。
日本代表争いは2020年5月までもつれ込む可能性も
男女それぞれ1名ずつの開催国枠が確保されている日本だが、世界選手権やオリンピック予選大会などの指定大会で出場権獲得対象の日本選手が男女2名ずつ決定した場合には、当該選手にオリンピック出場権が与えられ、国内で選手選考を行うことはない方針だ。
ただし、指定大会で日本代表選手が決まらなかった場合には、2020年5月に行われるスポーツクライミング第3回コンバインドジャパンカップでの最上位者が代表を選出する。また、2020年4月開幕予定のアジア選手権までの選考大会で、優先選考選手に選ばれた選手を除いて、条件をクリアした選手が複数名いた場合は、そのなかでコンバインドジャパンカップの最上位選手が日本代表となる。
東京五輪日本代表の選考基準大会
- (1)IFSC クライミング・世界選手権 2019(2019年8月11日~21日/東京・八王子)条件:上位7位以内
- (2)オリンピック予選大会(2019年11月28日~12月1日/フランス・トゥールーズ)条件:上位6位以内
- (3)IFSC-ACCクライミングアジア 選手権(2020年4月27日~5月3日/岩手・盛岡)条件:優勝者
- (4)スポーツクライミング第3回コンバインドジャパンカップ(2020年5月16日~17日/開催地未定)条件:東京五輪出場権を獲得していない選手のなかで最上位者
東京オリンピック代表内定選手(12月12日時点)
【男子】
- 楢崎智亜
- 原田海
【女子】
- 野口啓代
- 野中生萌
2019年8月11日から21日に東京都・エスフォルタアリーナ八王子で行われたIFSCクライミング世界選手権において、上位7名に入ったうち最上位選手(各国最大1名)が東京五輪の同種目代表に内定することになっていた。
そんななかで優勝したのが楢崎智亜。代表権がかかる大きなプレッシャーをはねのけて東京五輪への切符を手に入れた。
野口啓代も2位に入って日本人の中で最上位選手になり、東京五輪代表を内定させた。
残りの1枠について、当初はオリンピック予選大会(2019年11月28日~12月1日/フランス・トゥールーズ)で6位以内に入った日本勢最上位選手に与えられる予定だったが、10月、国際スポーツクライミング連盟(IFSC)は世界選手権で日本勢2番手の原田海(男子)と野中生萌(女子)が代表に内定したという新解釈を表明した。
この件を巡り、日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)が新解釈の取り消しを求め、国際連盟をスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴。しかし、2020年12月12日にJMSCAは、請求がCASに棄却されたことを発表した。これにより、原田と野中が代表に内定した。
日本男子では原田海、楢﨑明智、藤井快らに注目
IFSCクライミング・世界選手権2019は2019年8月開催。最速でオリンピック代表が決まる大会とあって大きな注目が集まる。
日本勢は2018年の同大会で男子3人、女子2人が複合の上位6人に入っており、早ければ今夏にも男女全4人の五輪代表が決まる可能性が十分にある。2018年の世界選手権の男子複合では原田海が4位、楢﨑明智が5位、藤井快が6位、女子複合では野口啓代が4位、野中生萌が5位の好成績を残した。スポーツクライミングの複合は、2018年の世界選手権やアジア大会から本格的に実施されたため、競技歴史が浅く、日本勢としてもまだまだ伸びしろを含んでいると言えるだろう。
以下のランキングやこれまでの実績などを踏まえると、男子の表彰台入りはかなり有力。国内の代表権をめぐる争いも白熱しており、開催国枠を含め2枠しかないのが惜しいと感じるほどだ。女子も前述の野口や野中と行った第一人者が国際大会で安定した成績を残しており、メダル獲得を十分に狙える実力を持っていると言える。
IFSCクライミング・世界選手権2018 複合順位
男子複合
- 1位:ヤコブ・シューベルト(オーストリア)
- 2位:アダム・オンドラ(チェコ)
- 3位:ヤン・ホイヤー(ドイツ)
- 4位:原田海(日本)
- 5位:楢﨑智亜(日本)
- 6位:藤井快(日本)
女子複合
- 1位:ヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)
- 2位:サ ソル(韓国)
- 3位:ジェシカ・ピルツ(オーストリア)
- 4位:野口啓代(日本)
- 5位:野中生萌(日本)
- 6位:ペトラ・クリングラー(スイス)
2018年のワールドカップランキング上位5選手
男子
- 1位:ヤコブ・シューベルト(オーストリア)
- 2位:楢崎智亜(日本)
- 3位:藤井快(日本)
- 4位:緒方良行(日本)
- 5位:ショーン・マッコール(カナダ)
女子
- 1位:ヤーニャ・ガンブレット(スロベニア)
- 2位:野口啓代(日本)
- 3位:野中生萌(日本)
- 4位:ジェシカ・ピルツ(オーストリア)
- 5位:スターシャ・ゲヨ(セルビア)
なお、公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会は東京五輪でのメダル獲得を目標に掲げ、JMSCAオリンピック強化指定選手を定めている。6カ月ごとに追加および入れ替えが行われ、東京五輪をはじめとした世界大会でのメダル獲得を目標に強化活動を行っている。以下は2018年11月22日に発表されたJMSCAオリンピック強化指定選手で、東京五輪の出場枠争いを盛り上げる実力者たちと言える。
JMSCAオリンピック強化指定選手
男子
- 楢崎智亜、藤井快、原田海、緒方良行、是永敬一郎、土肥圭太
女子
- 森秋彩、野口啓代、伊藤ふたば、野中生萌、谷井菜月、小武芽生