降り注ぐ陽光のもと、白い砂の上に張られたネットを挟み、水着姿でプレーするビーチバレー。一見すると華やかでありながらも、インドアのバレーボールとほぼ変わらない広さのコートをたった2人で守り、レシーブとトスで切れ目なくボールつないで相手コートに落とすという、実はハードなスポーツだ。
最近のオリンピックでは、最も観客動員数が多く、世界的には非常に高い注目度を誇るビーチバレー。日本でも、以前に女子ビーチバレーの浅尾美和選手が一大ブームを起こした。浅尾引退後は、坂口佳穂など人気のある選手も登場したが、全体的に見て、日本人選手たちが国際大会などで目立った結果を残せていないこともあってか、ビーチバレーに対する盛り上がりは少し欠けているようだ。
開催国枠で出場は確保されているが、オリンピックでメダルを獲得するためには、今後、さらなる飛躍が必要だ。
最高位は4位入賞。インドアからの転向組が多数、浅尾美和ブームで認知
ビーチバレーは1992年バルセロナ五輪の公開競技として行われ、その盛り上がりを受けて1996年アトランタ五輪から正式種目に採用された。女子はアトランタ五輪から4大会連続で出場しているが、メダル獲得にはまだ至っていない。
最高順位は2000年シドニー五輪で、高橋有紀子・佐伯美香ペアが獲得した4位入賞。次いでアトランタ五輪で高橋有紀子・藤田幸子ペアの5位入賞、同大会で中野照子・石坂有紀子ペアの9位が続く。このほかは17位以下と振るわなかった。
高橋有紀子はビーチバレーで2回オリンピックに出場する前に、1988年ソウル五輪と1992年バルセロナ五輪に女子バレーボール全日本のメンバーとして出場している。4回の出場のすべてで入賞を果たした唯一の存在だ。佐伯美香もバレーとビーチバレーでオリンピックに3回出場している。シドニー五輪後に結婚、出産したが、その半年後に現役復帰して、2008年北京五輪に出場した。藤田幸子は、元全日本エース、大林素子の同期でソウル五輪に出場している。
オリンピック出場経験はないものの、ビーチバレーの女子選手として、最も有名なのは浅尾美和だろう。2004年よりビーチバレーに転向し、2008年に全日本女子選手権、2009年ビーチバレージャパンで優勝した。競技生活と平行して、ファッションモデルやグラビアアイドル、テレビタレントとして活動し、「ビーチの妖精」と呼ばれて大ブームとなった。長年、西堀健実ペアを組んでプレーした。2012年に現役を引退している。浅尾と同様にビーチバレーの人気をリードした浦田聖子の存在も大きい。元全日本のメンバーで「かおる姫」の愛称で親しまれた菅山かおる選手もバレーボールからビーチバレーに転向している。
石井美樹・村上めぐみペアが出場か
日本ビーチバレーボール連盟が発表した2018年12月9日現在の国内ランキングベスト10を見てみよう。1位石井美樹、2位村上めぐみ、3位村上礼華、4位鈴木千代、5位西堀健実、6位草野歩、7位溝江明香、8位橋本涼加、9位熊田美愛、10位永田唯選手となっている。一方、2018年の国際バレーボール連盟のワールドツアーランキング(10月29日時点)で、石井・村上ペアが22位、二見梓・長谷川暁子ペアが40位、溝江・橋本ペアは50位となっている。
2020年東京五輪の出場枠は男女各24チームで1カ国あたり最大2枠となる。日本は開催国枠として男女各1チームの出場が確定していて、もう1枠を獲得することが可能だ。このままだと、1枠はランキング1位・2位のペアでワールドツアーランキングでも日本人選手1位の石井・村上ペアが選ばれるだろう。
石井選手は久光製薬スプリングスやJTマーヴェラスなどVリーグで活躍後、2014年にビーチ転向。ブロックのタイミングを計る能力は抜群で、スピードのあるサーブと鋭いアタックが武器だ。攻守ともに世界レベルと言えるだろう。一方、ペアを組む村上選手は、地道な努力で実力をつけており、サーブの精度や攻撃のコントロールはピカイチだ。2018年8月のアジア大会で石井・村上ペアは、決勝戦に進出するも、中国ペアに敗れた。しかし、同ペアの決勝進出は、日本の女子ビーチバレー界において、12年ぶりの快挙であり、東京五輪に向けて他の選手を勇気づけた。
ビーチバレーでは短期間でのペアチェンジは珍しくないが、彼女たちは4年という長い歳月をともにしている。ビーチバレーは次のプレーがしやすくなるように、相手のことを考えてボールをパスしないと、有効な攻撃が成立しない。言い換えると、ネットを使ったさまざまなスポーツの中で、最もチームメイトの技量や考え方への理解が求められるとされている。信頼関係の厚さが、石井・村上ペアの最大の武器なのだろう。
欧米諸国がリードする世界の勢力図。果たして東京五輪は
過去のオリンピックで金メダル獲得国はアメリカが3回で、ブラジル、オーストラリア、ドイツがそれぞれ1回ずつ。これらの国は五輪以外の世界大会でも強豪国として君臨している。世界ランキングを見れば、カナダやチェコ、オーストラリア、スイスなども上位にいる。2004年アテネ五輪から3連覇し、2016年リオデジャネイロ五輪では銅メダルとなったアメリカのケリー・ウォルシュ・ジェニングス選手は40代に入り、世代交代が進む。リオ五輪で金メダルのラウラ・ルートヴィヒ選手(ドイツ)、銀メダルのバルバラ・セイシャス選手(ブラジル)らは現在、30代前半で、東京五輪でも活躍しそうだ。
2020年東京五輪のビーチバレーの会場は、お台場の潮風公園に新設される。レギュレーションにより1万2000席を用意しなければならない。日本バレーボール協会でも東京五輪での観客動員数は1万2000人が目標だそうだ。ビーチバレーをメジャーな競技に育てることが最大の課題となっている。そのためには、日本選手のレベルアップが必要不可欠だろう。開催国の意地を見せられるのか。ビーチバレー勝負の1年が始まる。