2018年4月、バドミントンシングルスで、日本人が初めて世界ランキングのトップに立った。小学校時代から数々のタイトルを手にしてきた彼女に、新たな勲章が加わった。2016年リオデジャネイロ五輪では、準々決勝で奥原希望との日本人対決に敗れ、8強にとどまったが、2020年東京五輪では悲願の金メダルを目指す。
天才バドミントン少女、福井県勝山市に誕生
山口茜は1997年6月6日、福井県勝山市に生まれた。3歳のころ、2人の兄の影響でラケットを握ったことが、バドミントンを始めたキッカケだ。5歳になると、本格的に競技を始めた。小学校時代は「勝山南部ジュニア」に所属。2004年、小学1年生から全国小学生ABCバドミントン大会に出場する。3年生のときに一度だけ準優勝になるが、それ以外の5回はすべて優勝する。全国小学生バドミントン選手権大会でも、小学2年生で参加した第14回大会4年生以下の部で5位入賞。第15回、第16回は優勝。第17回は5年生以下の部、第18回は6年生以下の部で優勝するなど、山口は出場した試合で圧倒的な強さを発揮し、小学4年生の時点でジュニアナショナルチームU-13に選出された。
勝山南部中学に進学すると、部活動に加えて、勝山南部ジュニア、バドミントンチーム「勝山チャマッシュ」の3カ所を拠点に、実力を伸ばしていく。2010年、中学1年生で参加した第40回全国中学校バドミントン大会はベスト16。第29回全日本ジュニア選手権大会では、ジュニア新人女子シングルスで優勝に輝いた。中学2年生のときは、第41回全国中学校大会でベスト8、高校生も参加する第30回全日本ジュニアバドミントン選手権大会でベスト4、さらに1回戦で敗退したものの、第65回全日本総合選手権大会に出場を果たす。ナショナルチームのB代表に選出された。
中学3年生では、アジアユースU-19バドミントン選手権大会に参加。団体戦での金メダル貢献のほか、シングルスでもベスト4となる。第42回全国中学校大会で初優勝、第31回全日本ジュニアで準優勝を達成。千葉で開催された世界ジュニアバドミントン選手権大会では、団体で銀メダルとなったほか、シングルスでも銀メダルと健闘を見せる。また、第66回全日本総合では1回戦を突破し、ベスト16となった。
インターハイ3連覇に懸ける思い、リオデジャネイロ五輪に出場も……
2012年ロンドン五輪の翌年に山口は高校に進学した。選んだのは地元の勝山高校。2014年からナショナルチームのA代表となり、世界バドミントン連盟(BWF)による年間バドミントントーナメントシリーズ「BWFスーパーシリーズ」にも参加するなど、活動の幅はさらに広がる。
4月に行われた大阪インターナショナルチャレンジ、ニュージーランド・オープンと二つの国際大会で準優勝になると、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)では、1年生ながら優勝を成し遂げる。第32回全日本ジュニア準優勝、第32回ヨネックス・オープン・ジャパン優勝、タイで開催された世界ジュニア優勝、そして第67回全日本総合ベスト4、そして、3月の全国高等学校選抜バドミントン大会で優勝と、次々に素晴らしい結果を残した。
2年生では、世界ジュニアとインターハイで連覇を達成。中国・南京で行われたユースオリンピックで銀メダルを獲得した。そして、第68回全日本総合で、前回優勝の三谷美菜津を破って初優勝を果たす。また、BWFスーパーシリーズのフランス・オープンで8強、中国オープンで2位、香港オープンで8位と好成績を残し、上位8名が招待される「BWFスーパーシリーズファイナルズ」に出場。準決勝で、韓国の成池鉉に敗れたが4強入りを果たした。
3年生になると、リオデジャネイロ五輪出場に向けた“レース”がスタートする。バドミントンのオリンピック出場権は、2015年5月から2016年5月までのBWF世界ランキング上位選手に与えられる。ただし、各種目とも1カ国から出場できるのは2名(2組)という制限が課されていた。このため、なるべく多くの大会に出場することが重要となるのだが、山口は世界バドミントン選手権大会の出場を辞退し、インターハイ出場を選ぶ。そしてシングルスで3連覇を達成、ダブルスで準優勝、団体で4強という結果を残した。
2016年、高校を卒業した山口は、再春館製薬所に入団する。そして迎えた5月。前年の第69回全日本総合では佐藤冴香に敗れて4強だったが、同大会優勝の奥原希望とともに、リオデジャネイロ五輪の代表に選出される。オリンピックでは準々決勝で奥原と対戦。第1ゲームを取ったものの、1-2で逆転負けした。山口に勝った奥原は日本人として初めて、オリンピックのシングルスでメダルを獲得した。
オリンピック後に急成長、世界ランキング1位に
山口がさらなる飛躍を遂げるのは、オリンピック後からだ。BWFスーパーシリーズの韓国オープン、デンマーク・オープンで優勝。デンマーク・オープンでは、リオデジャネイロ五輪金メダリストのキャロリーナ・マリーン(スペイン)、世界ランク1位の戴資穎(台湾)を撃破した。そして2018年4月、世界ランキング1位にまで上り詰める。シングルスで日本選手が世界1位になるのは、男女を通じて初めてのことだった。
もちろん国内でも強さを発揮する。オリンピック後の全日本総合では、佐藤に敗れて準優勝に終わったが、2017年に二度目の優勝を果たす。そして、2018年12月2日に行われた第72回全日本総合女子シングルス決勝で奥原と対戦し、2-1で勝利を収めて、連覇を達成した。
2018年12月6日付けの世界ランキングで山口茜は2位。1位は台湾の戴資穎だ。3位は中国の陳雨菲、4位にスペインのキャロリーナ・マリーン、5位奥原希望、11位高橋沙也加と日本勢が続く。23歳で東京五輪を迎える山口茜。リオデジャネイロ五輪での悔しい思いを胸に、得意のスマッシュ、フットワークに磨きをかけ、彼女は今、さらなる高みを目指している。