2020年東京五輪で新種目として採用される3人制バスケットボールの「3×3(スリー・バイ・スリー)」。世界規模で見ると競技人口が増加している一方で、日本での認知度はまだまだ低い。しかし、2018年、日本代表の女子は世界大会で好成績を残してきた。出場国数が8カ国に限られている東京五輪でも、日本は出場する実力を十分に備えている。5人制よりもコートが狭く、制限時間が少ないため、高さで劣る日本女子が、世界を相手に戦ううえで、不利になりにくい競技でもあるため、メダル獲得も夢ではないかもしれない。
世界ランキング7位でオリンピック出場圏内
バスケットボールと聞いて、多くの人たちがイメージするのは5人制だろう。1936年ベルリン五輪で正式競技となり、女子は1976年モントリオール五輪から導入された。1チーム3人で得点を競う「3×3」は、2020年東京五輪で初めて正式種目に採用される。2017年6月にスイスのローザンヌで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)の理事会で決定した。
これまでストリートシーンで発展してきた3×3。全世界での競技人口は、すでに40万人を超え、世界大会には180以上の国と地域が参加している。通常のバスケットボールコート(縦28メートル×横15メートル)の半分を使用し、コイントスで攻守を決めて試合を行う。10分間の1ピリオド制で、通常のバスケットボールの3ポイントラインが2ポイントラインとなり、その外側からであれば2点、内側が1点、フリースローも1点。ボールを保持してから、12秒以内に攻めきらなくてはならない。21点先取でゲーム終了となるなど、独自ルールがある。5人制が個人ファウル5回で退場なのに対して3×3は制限がない。このため、スピーディーかつスリリングな試合展開が魅力だ。
2020年東京五輪の出場枠は8チーム。うち4チームは2018年11月~2019年11月までのFIBA国別ランキングで決まる。2019年2月8日時点で日本女子の世界ランキングは、中国、モンゴル、フランス、ロシア、ウクライナ、ルーマニアに続き7位。ランキングの変動は非常に激しいが、現段階ではオリンピック出場の可能性が十分にある。残りの4チームは、2度の予選トーナメントが予定されており、最初に3チーム、ラストチャンスとして1チームが出場権を得られるようだが、その詳細は現時点では不明だ。東京五輪で日本に開催国枠が付与されるかは、2019年3月に決定される。3×3は試合時間が短く、コートも狭いため、体格差がさほど問題にならない。出場さえ決まれば、日本にもメダルの可能性は十分にある。
高校生の奥山理々嘉選手も出場狙う
2018年6月に行われた「FIBA 3×3アジアカップ2018」で、日本代表に選抜された立川真紗美(bjアカデミー)、前田有香(BEEFMAN.EXE)、石川麻衣(BEEFMAN.EXE/REXAKT)、名木洋子(BEEFMAN.EXE/REXAKT)の4選手が有力候補となり、今後、2020年東京五輪の出場選手が絞られていくだろう。
立川は2004年アテネ五輪に5人制の日本代表として出場した経験がある。スピードと跳躍力を武器に屈指のガードフォワードとして活躍してきた。その後、bjアカデミーのヘッドコーチとして子どもたちを指導しながら、3×3のプレーヤーとして競技を続けている。
前田は立命館大学のバスケットボール部出身でアイシンAWウイングスのフォワードポジションでプレーしてきた。2018年に3×3に転向し、BEEFMAN.EXE所属している。2018年4~5月に中国で行われたアジアカップでは、予選グループのイラン戦で大量リードを許す苦しい展開の中、2ポイントを次々と決めて逆転勝利につなげた。
石川は中学校でバスケットバールを始めた。ずば抜けた運動能力の持ち主である石川は日本体育大学出身。大学3年生でインカレ優勝を経験、その名前を全国区にした。2008年から7年間、富士通レッドウェーブのセンターポジションで活躍し、5人制の日本代表に召集された経験もある。ゴール下を主戦場とし、長身を生かした力強いターンから得点をもぎ取るのが、彼女のプレースタイルだ。
名木は桜花学園大学出身で、日立製作所戸塚工場バスケットボール部、シャンソンVマジックを経て富士通レッドウエーブで8年間、フォワードポジションでプレー。2010年の「FIBA女子バスケットボール世界選手権」では、日本代表に選出されている。俊敏さとパワーを兼ね備えたプレースタイルで、チームのムードメーカー的存在でもあった。2015年に引退し、3×3は2018年から競技生活をスタートさせている。
2019年2月1日、日本バスケットボール協会は日本代表候補メンバー15人を発表した。この中には、2018年8月のアジア競技大会で銀メダルを獲得した奥山理々嘉ら高校生8人が選出されている。奥山は八雲学園高校3年で、身長180cmの長身から放たれるシュートは、どこからでもリングを射抜きそうだ。世代屈指のポイントゲッターと言える。アジア大会で獲得した銅メダルは、より一層、奥山にオリピック出場を意識させたに違いない。「2020年は今の自分の実力に対して本当に時間がない。でも、そのために今までがんばってきたので、チャンスがあれば2020年も2024年も狙いたい」と闘志を燃やしている。
2018年は快進撃
2018年4~5月に中国で行われたアジアカップで、日本女子代表は、18カ国が出場する中で4位という成績だった。予選グループ初戦でオーストラリアに14−20と敗れたが、続くイラン戦で勝利。そして、決勝トーナメント初戦もウズベキスタンに15-14と競り勝った。しかし、準決勝で中国に敗退。3位決定戦で、再びオーストラリアに敗れた。メダルにはあと一歩届かなかったが、東京五輪につながる健闘を見せた。
また、同年10月に行われたU-23ワールドカップでは、馬瓜ステファニー(トヨタ自動車アンテロープス)、小山真実(東京羽田ヴィッキーズ)、栗林未和(富士通レッドウェーブ)、山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)の4選手で構成される日本代表は、5チーム中2チームしか突破できないグループリーグを、接戦ながら全勝で突破。準々決勝はハンガリー、準決勝ではウクライナを撃破。決勝はロシアに21点を先取されてしまい、ノックアウトで敗れたものの、堂々の準優勝を果たした。日本チームがファイナルへ進むこと自体が快挙で、試合後は会場からは、健闘を称える惜しみない拍手が送られた。
アンダーカテゴリーも含め好成績を残している3×3女子。若い世代がさらに躍進し、2020年に向けて世代間の融合が進めば、さらなるチーム力アップが期待される。
東京五輪に向けた展望
日本ではまだまだメジャーではない3×3。日本が世界で戦っていくためには、国内での認知度アップが必要だ。競技人口を増やし、レベルアップしていくための話題づくりも求められるだろう。5人制とは異なり、個人競技の扱いだが、チームワークがないと勝てない。しかし、チームとしての練習時間が、なかなか取れないのが現状だそうだ。2018年のアジアカップで4位、U-23ワールドカップで準優勝、日本女子の活躍はめざましく、勢いがある。東京五輪で初めて実施される3×3。世界に存在感を見せるためには、チーム力をさらに高める必要がある。そのためにもより多くの人たちに3×3という競技を知ってもらい、サポートを集めていくこともポイントとなりそうだ。