川井梨紗子:レスリングのサラブレッドは道場で「ママ」呼び禁止。元日本代表の母から指導を受け成長【アスリートの原点】

父母ともに元レスリング選手、妹の友香子も東京五輪代表内定

1 執筆者 オリンピックチャンネル編集部
リオデジャネイロ五輪では伊調馨との対戦を避け、2階級上の63キロ級に出場。見事金メダルを勝ち取った

リオデジャネイロ五輪のレスリング女子63キロ級金メダリストである川井梨紗子は、日本レスリング界屈指のサラブレッドだ。伊調馨らと繰り広げた厳しい代表選考を勝ち抜き、57キロ級の東京五輪代表に内定した彼女は、62キロ級代表の妹、友香子とともに2度目のオリンピックに挑む。

「ママ」と呼んでしまって怒られることも

川井梨紗子は日本レスリング界屈指のサラブレッドだ。

父の孝人さんは日本体育大学時代の1987年にカナダで行われたエスポワール・ワールドカップにグレコローマン74キロ級の選手として出場。母の初江さんは1988年と、89年の全日本女子選手権50キロ、53キロ級で優勝し、1989年にはスイス開催の世界選手権に出場した経験を持つ。2人は1992年10月に結婚し、レスリング選手同士の夫婦となった。

1994年に川井家の長女として生まれた梨紗子は、幼少期からトランポリンを習うなど体を動かすことが好きで、走るのも速かった。レスリングとの出合いは小学2年生の時。父の勧めにより軽い気持ちで男女混合の大会に出場したところ、練習を積んでいないために当然ながら敗北。号泣するほどの悔しさを味わったことをきっかけに、地元の金沢ジュニアレスリングクラブに通い始めた。

当初、母は練習の送迎をするだけだったが、小学3年生になると、所属クラブの指導者が来られなくなったため、以降は母の指導を受けることになった。

ここから厳しい練習の日々が始まる。道場では母のことを「先生」と呼ぶことが義務づけられ、「ママ」と呼んでしまって怒られることもあったという。そのぶん、実家でレスリングの話をすることはほとんどなく、競技と私生活をきっちりと切り替えて過ごしていた。

日本レスリング史上初の「母娘世界代表」に

両親は競技のサポートはしていたものの、強要をしたことは一度もなかった。当初、週2回だった練習は梨紗子が中学生になるころには週4回に増えた。平日は夕方5時から7時過ぎまでで、時には8時ごろまで居残り練習をすることもあった。土日は午前に3時間、それから2、3時間の休憩を挟んで午後にまた3時間の練習を積んだ。

中学3年次の全国中学生選手権で初めて全国優勝したことで、日本レスリング協会の女子強化委員長も務める栄和人監督の目にとまり、吉田沙保里や伊調千春&馨姉妹らを輩出しているレスリングの名門、至学館高等学校へと進学する。その時から「目標は世界選手権で優勝」と、世界を見据えるようになった。

栄監督のもとでの練習は、想像を上回るほど過酷なものだった。朝練は5時半から。授業開始のぎりぎりに教室に飛び込み、授業が終わるとすぐに道場へと戻る日々。栄監督が「怖くて怖くて仕方がなかった」というが、着々と成長を遂げた川井は、高校3年次に行われた全日本選抜レスリング選手権で元世界女王の山本美憂らを破って優勝。高校生ながら世界選手権の代表に選出され、日本レスリング史上初の“母娘世界代表”を成し遂げた。

母の現役時代はレスリングが五輪種目ではなかった。「オリンピックでメダル」は母が叶えられなかった夢でもある。リオデジャネイロ五輪の63キロ級で見事に金メダルを獲得した川井は、東京五輪で2大会連続の頂点をめざす。

選手プロフィール

  • 川井梨紗子(かわい・りさこ)
  • レスリング選手 57キロ級
  • 生年月日:1994年11月21日
  • 出身地:石川県津幡町
  • 身長/体重:160センチ/57キロ
  • 出身校:津幡中(石川)→至学館高(愛知)→至学館大(愛知)
  • 所属:ジャパンビバレッジ
  • オリンピックの経験:リオデジャネイロ五輪(63キロ級 金メダル)
  • インスタグラム:川井梨紗子 kawai risako(@risako_kawai)

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