小松昌弘は、日本バスケットボール協会が公認する「3x3」のトップリーグ『3x3 PREMIRE.EXE』におけるTOKYO DIME.EXEに所属する日本代表唯一の社会人選手である。相手が自分より小さければインサイドで、少しでも離されればアウトサイドシュートで勝負と、幅の広いプレイが売り。国際大会の経験も豊富な彼が、2020年の東京五輪に新種目として採用された本競技において、日本のバスケットシーンを熱くする。
5人制から3人制へ。小松が歩んできたバスケ道
以前から「3on3(スリーオンスリー)」の愛称で親しまれ、日常的にストリートコートで行われていた3対3のバスケットボール。2007年に世界統一のルールが定められ、スタートした競技が「3x3(スリー・バイ・スリー)」だ。ストリートバスケから生まれた新スポーツ「3x3」は、観客との一体感・気軽に楽しめることが一番の魅力。日本では2014年に世界に先駆けてプロリーグが誕生、日々ハイレベルな戦いが繰り広げられている。
小松昌弘は1984年4月22日に宮城県生まれた。身長192cm、体重91kg。現在はRBC東京、TOKYO DIME .EXEに所属している。学生時代から各世代の代表に選出されてきた。仙台高校時代にはU-18日本代表に名を連ね、大学はバスケの名門、筑波大学に進学し、活躍した。大学卒業後は三井住友銀行に入行。実業団チームに所属し、入社当時は2部だったチームを全国ベスト4に入るようなチームにするべく牽引してきた。オールジャパン予選となる社会人選手権では、肋骨を骨折していながらコートに立ち、チームの勝利に貢献したエピソードも残っている。小松の5人制バスケでのキャリアは、申し分のない輝かしいものだったと言える。
2015年に主戦場を3人制バスケに移した後も、小松は素晴らしい成績を残してきた。同年に開かれた第1回 3x3日本選手権に優勝して日本代表候補に選出され、2016年、2017年の3x3日本選手権も優勝して三連覇を果たす。さらに世界大会に出場。日本代表として、FIBA(国際バスケットボール連盟)が主催する3x3ワールドツアーマスターズ(中国・北京)、FIBA 3x3ワールドチャンピオンシップ(中国・広州)、FIBA 3x3アジアカップ2017(モンゴル・ウランバートル)といった世界各国で行われている3x3の舞台に精力的に参戦し、結果を出している。
3x3日本代表として重ねてきた経験は国内屈指だろう。屈強な体躯を駆使し、インサイドからアウトサイドまでをこなすオールラウンダー。自分よりも長身の選手と互角以上に渡り合うフィジカルの強さと、高いシュート力は相手にとって脅威になるだろう。
東京五輪でのメダル獲得を目指す日本代表の現在地
小松昌弘は、2018年6月8日にフィリピンのマニラで行われたFIBA3x3ワールドカップ2018に日本代表として出場した。2020年の東京五輪で正式種目に採用されたこともあり、この大会は東京五輪の前哨戦といっても過言ではない。
スロベニア(大会時FIBAランク2位)、ポーランド(同7位)、エストニア(同10位)、インドネシア(同18位)と同じグループBに属していた日本(同15位)。この大会は総当たり戦を行い、上位2チームが決勝トーナメントに進出する。
第1戦でエストニアに11-17、第2戦でスロベニアに14-22の敗戦。高さと強靭なフィジカルの前に連敗を喫した。後がなくなった日本は、グループリーグ突破を懸け、インドネシアとポーランド戦に挑まなければならなくなった。グループリーグ内で唯一、格下の相手となったインドネシアとの第3戦。フィジカルで対等に渡り合えたことから、クイックネスに勝る日本が相手を振り回してリードする展開に。序盤から日本のペースで試合は進み、18-11で勝利を収めた。
予選最終戦はFIBA7位と格上のポーランドが相手だ。背水の陣で挑んだ日本であったが、身長で上回るポーランドにゴール下を支配され、思うようなゲームが展開できず、開始約2分で1-5とビハインドを負ってしまうことに。なかなかインサイドで起点を作ることができず、アウトサイドからのシュートに攻撃の手が偏ってしまう。それでもラスト3分から怒涛の反撃を見せ、終盤残り約1分で2点差まで詰め寄った。しかしながら反撃はそこまで。タイムアップ直前にポーランドに2ポイントを決められ16-20で試合が終了。意地は見せたものの、1勝3敗で予選敗退が決まった。
結局、ジャイアントキリングは果たせず、1勝3敗で予選リーグ敗退。世界のチームに比べて身長、身体能力で劣る日本が、今後、世界と戦っていくための課題が浮き彫りとなった。
一戦必勝の心構えで前進あるのみ
3x3で求められるオールラウンドなスキル、フィニッシュのスキル、当たり負けしないフィジカルは、5人制バスケの日本の課題でもある。そのため、3x3を新しい選択肢として、選手強化に役立てる方針をJBAは打ち出している。
その方針を追いかけるように、アルバルク東京の安藤誓哉、千葉ジェッツの原修太といった、トップレベルの現役Bリーガーを3x3日本代表に選出。5人制と3x3で相乗効果を期待すると同時に、オリンピックに向けて3x3の盛り上げ役になっている。こうした現役Bリーガーが、代表争いに加わることは、日本代表チームの底上げに大きなプラス材料となるだろう。さらに日本が世界と戦うためには、体格で劣る中、リバウンドで競う技術はあるのか、アウトサイドからのシュート力だけでなく、ゴール下へのドライブで決め切る能力はあるのか、相手にボールを持たせずに守る技術はあるのかなど、課題は山積している。小松は日本代表オフィシャルサイトのインタビューの中で「東京五輪に向けて、今の日本は世界の中でとても強いという地位ではないと思います。だからこそ目の前の相手をいかに攻略して勝つか。1試合ずつ勝って、しっかり結果を残していくことが大事です」とのコメントを残している。
Bリーガーという新たな起爆剤を得た3x3男子日本代表。プラスの「化学変化」を起こしながら、チームとしてのまとまりを維持するには、やはり小松のようなベテランの力が不可欠になるだろう。日本のFIBAランクは4位(2019年2月4日現在)。目指すは東京五輪でのメダル獲得だ。残された時間は約1年。本大会に向けて小松の挑戦はまだまだ続く。