大坂なおみの大いなる可能性、2020年東京オリンピックでは、メダル有力候補へ

大坂なおみ選手

2018年は、プロテニスプレーヤー・大坂なおみにとって、間違いなく忘れられない年になっただろう。なぜなら、彼女は、9月にUSオープンで初優勝し、テニス4大メジャーであるグランドスラムのチャンピオンに日本人プロテニスプレーヤーで初めて輝いたからだ。大会当時20歳の大坂が成し遂げた歴史的快挙によって、日本テニス界にとっても、2018年は記憶と記録の両方に残る年になった。

「子供の時に、多くの選手がトロフィーを掲げるのを見てきました。今、自分のゴールの一つを達成できたことは、もう誰にも変えられない」

こう語った大坂は、一躍時の人になり、テニスファンのみならず、多くの一般の人にも顔と名前を憶えられた。そして、2020年東京オリンピックでの活躍が期待される日本女子プロテニス選手の一人として当然のように名前を挙げられるようになった。

大坂が、プロとして注目を集め始めたのは、大きく飛躍した2016年からだ。

オーストラリアンオープン(全豪)で予選を初めて勝ち上がってグランドスラムデビューを果たすと、いきなり3回戦に進出する大物ぶりをみせた。続くローランギャロス(全仏)とUSオープン(全米)でも、初出場ながら3回戦に進出して彼女の高いポテンシャルを見せつけた。彼女のWTAランキングは当時自己最高の40位を記録し、2016年のWTAアワード最優秀新人賞を、日本女子選手として初めて獲得した。

「今年(2016)は、正直とてもハッピーなことがたくさん起きた1年でした。起きたことを一つひとつかみしめていきたい」

大坂は、ハイチ出身のアメリカ人の父親レオナルドと日本人の母親の環(たまき)のハーフで、大阪生まれだ。3歳の時にアメリカ・ニューヨークへ移住し、その後フロリダ・フォートローラデールに移っている。そして、3歳から父親の手ほどきで、2歳上の姉のまりと一緒にテニスを始めた。姉に初めて勝った時が、一番嬉しい試合だと当時からよく語っている。

2014年5月からは、フロリダのテニスアカデミーで初めてプロテニスコーチから指導を受け、2018年からは、アレクサンドラ・バインコーチ(ドイツ)の指導を受けている。

バインコーチは、もともとおとなしくネガティブになりがちだった大坂を、ポジティブな性格になるように教え、試合態度を改善させた。練習でも試合でも笑顔が見られるようになった大坂は、2018年3月にWTAインディアンウェルズ大会で衝撃的なツアー初優勝を果たして、新コーチとの取り組みが正しい方向に向かっていることを証明してみせた。

身長180cmの大坂は、パワフルでスピードのあるファーストサーブを打ち、これまでの日本女子選手にはないスケールの大きさを感じさせる。時速200kmのサーブを打てる日本女子選手はもちろん史上初で、2016年USオープンでは、時速201kmを記録したことがある。

また、長い手足を使って打たれるフォアハンドストロークも強力で、以前は豪快なショットを打ち込むもののミスが多かったが、最近は安定感が増している。

大坂は、初めての舞台でも物怖じしないし、大舞台で強さを発揮できるプロ向きのメンタルを持っている。上昇志向があり、「私は、何でもちょっとでも良くなりたいと考える人間だと思っています」と自らを完璧主義者と自己分析するほどだ。

ただ、テニスコートから離れると、とてもシャイな性格で、口数も基本的に少なく、普通の21歳の女の子となんら変わりはない。

そんな大坂にとってのアイドルは、セリーナ・ウイリアムズ(アメリカ)。セリーナは、グランドスラムで23回の優勝を誇り、女子では史上最強といわれる選手で、大坂が成長していく過程で、セリーナはいつもロールモデルだった。「彼女がいたから、テニスを始めたと思います。セリーナが自分にとってはナンバー1の存在です」と語っていた大坂が、2018年USオープンの決勝で、36歳(大会当時)のセリーナを破ってグランドスラム初戴冠をしたのだから、なんらかの運命を感じずにはいられない。女子テニス界の世代交代のバトンを引き継ぎ、新時代へのヒロインになることを大坂が宿命づけられているようだ。

現在21歳で、誕生日が10月の大坂は、22歳で東京オリンピックを迎えることになり、年齢的なタイミングも申し分なく、けがさえなければ、プロテニスプレーヤーとして一番成長できる時期に東京でプレーすることができる。

「本当に自分のベストを尽くせたらいいですね。もし、(オリンピックで)プレーする機会が得られたのなら、自分の良いプレーができればいい」

現在、世界の女子テニス界は混戦で、絶対女王が不在のカオスを打破するのがWTAランキング5位の大坂かもしれない。大坂が順調に成長していけば、2020年東京オリンピックでは、間違いなくメダル候補になり、大舞台で強い彼女なら、日本テニス選手初の金色のメダルを手にすることも決して夢ではない。

文=神 仁司(Hitoshi KO)

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