土性沙羅:吉田沙保里と共通点を持つレスリングエリート、東京五輪の69キロ級で連覇達成が射程圏内

リオデジャネイロで初五輪出場にして、金メダル獲得を果たした土性沙羅

土性沙羅はレスリング界のレジェンド、吉田沙保里と重なる部分が多い。三重県出身であること。一志ジュニア教室で吉田の父・栄勝に師事し、至学館大学へ進学したこと。そして最大の共通点は、オリンピックで金メダルを獲得したことだ。

不思議な縁で吉田栄勝に師事、国内外で強さ誇るも2012年に試練

土性沙羅は1994年10月17日生まれ。三重県松阪市の出身だ。小学2年生のとき、かつて父が吉田沙保里の父の栄勝氏に指導を受けていた縁もあり、栄勝氏が主宰する一志ジュニア教室に訪れたことがきっかけで、レスリングを始めることになる。

土性が才能を開花させるのは早かった。全国少年少女選手権4年生の部、5年生の部(いずれも36キロ級)、6年生の部(45キロ級)で3連覇を達成。地元の市立鎌田中学校に進学後も、1年生のときに全国中学生選手権(46キロ級)で3位、2年生のときは52キロ級、3年生のときは64キロ級で優勝と、同年代の選手のなかで無類の強さを示した。

高校はレスリングの名門、愛知県の至学館に進学。全国高校女子選手権(65キロ級)で優勝を果たすも、12月の全日本選手権(67キロ級)は、至学館大の井上佳子に敗れて2位となる。それでも翌年の2011年4月、全日本選抜選手権ではクリナップ所属となった井上にリベンジを果たして優勝。12月の全日本選手権でも初優勝を果たす。

さらに国内だけでなく、国際大会でも強さを発揮する。2011年7月、ルーマニアのブカレストで開催された世界ジュニア選手権で優勝。2012年1月、ロシアのクラスノヤルスクで開催されたヤリギン国際大会でも金メダルを獲得した。

国内外で強さを発揮していた土性だが、同年2月に韓国のクミ(亀尾)市で開催されたアジア選手権は1回戦敗退に終わる。6月の全日本選抜も井上に敗れて2位に。9月、タイのパタヤで開催された世界ジュニアは、カナダのドロシー・イェーツに準決勝で敗れて3位に終わった。アゼルバイジャンのバクーで行われたゴールデンGP決勝大会も3位と勝てない時期が続く。

ちょうどこの時期の日本女子レスリング界は、2012年のロンドン五輪で、4階級中3つの階級で金メダルを獲得した一方、最重量の72キロ級で出場した浜口京子が2回戦敗退するなど、重量級においては世界との壁に苦しんでいた。

五輪階級増加のおかげで金メダルを獲得

2013年、土性は至学館大学へ進学する。前年12月の全日本選手権、2013年6月の全日本選抜で優勝を果たし、9月にハンガリー・ブダペストで開催される世界選手権に臨む。この大会優勝するウクライナのアリナ・スタドニクに準決勝で敗れるも、3位決定戦でドイツのアリーネ・フォッケンに勝利を収め、銅メダルを獲得する。

そうした中、土性に朗報が届く。2016年のリオデジャネイロ五輪は、従来の4階級から6階級に階級が増加。48、53、58、63、69、75キロ級となり、土性は自身のベストに近い69キロ級でオリンピックに挑戦できるようになった。

2014年3月、日本開催のワールドカップ(団体戦)で日本代表に選ばれた土性は、69キロ級で3勝を記録。日本の優勝に貢献する。すると4月にカザフスタンのアスタナで開催されたアジア選手権で優勝。そして、9月にウズベキスタンのタシュケント開催の世界選手権に臨む。土性は決勝に進出するも、同じく69キロ級でエントリーしてきたフォッケンに敗退し、銀メダルに終わる。

2015年、アメリカのラスベガスで開催された世界選手権にも出場。2回戦でスタドニクに勝利を収めるも、3回戦で中国の周風に敗れる。その後、敗者復活戦を勝ち残り、最後は銅メダルを獲得した。2015年に全日本選抜で3連覇、全日本選手権で5連覇を達成すると、2016年2月のアジア選手権も優勝。土性は万全の状態でリオ五輪に挑むことになった。

18選手が出場した69キロ級。1回戦でスタドニクを破ると、2回戦はブセ・トスン(トルコ)にTフォール勝ちを収める。3回戦はドロシー・イーツ(カナダ)に判定勝ち。準決勝は、フォッケンを破ったアンナイエンニュ・フランソン(スウェーデン)を逆転で下す。決勝の相手は、ロンドン五輪72キロ級の金メダリスト、ナタリア・ボロベワ(ロシア)。試合は残り1分まで、2-0でボロベワがリードする展開となる。しかし、終盤に土性がタックルを成功させ、2-2の同点に持ち込んだ。土性は技によるポイントで上回り、オリンピック初出場で金メダル獲得を達成した。

左肩手術からの復帰戦も不安はなし

2017年、大学を卒業した土性は、愛知県に本社を置く東新住建のレスリング部に入部する。同年8月、フランスのパリで開催された世界選手権(68キロ級)は、決勝でフォッケンを破り、初優勝を飾った。

翌年は負傷のため、全日本選抜、世界選手権を欠場。しかし、左肩手術からの復帰戦となった12月の全日本選手権では、リオデジャネイロ五輪75キロ級の代表で、世界選手権の68キロ級に出場した渡利璃穏を決勝で下し、大会8連覇を達成した。そして2019年4月、中国・西安で行われたアジア選手権では、昨年覇者の周風を決勝で破り、金メダルを獲得。復帰後も、依然として強さを発揮している。

東京五輪で代表となる条件は、2019年9月にカザフスタンで開催される世界選手権でメダルを獲得すること。実績を考えると、大きなトラブルでもなければ、土性が東京五輪の出場権を得ることは間違いないだろう。多くの共通点を持つ吉田沙保里が五輪4連覇を果たしたように、リオで金メダルを獲得した土性には、当然のように2連覇が期待されている。土性ならその期待に応えてくれるだろう。

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