Tokyo 2020(東京五輪)では、新種目として混合ダブルスが加わった。混合ダブルスは卓球競技の最初に行われ、16ペアが出場する。日本からは水谷隼/伊藤美誠ペアが出場。混合ダブルスでメダルを獲得し、男女のシングルス、団体戦に弾みを付けたい。ここでは水谷/伊藤ペアのメダル可能性、ライバルを探っていく。
■混合ダブルスは、女子選手の実力が重要
混合ダブルスは男子と女子がペアを組むため、1ゲームごとに男子へ打球をするか、女子へ打球をするか、パターンが変わることとなる。卓球はほかのスポーツと比較し、男女のレベル差が少ない競技と言われているが、やはり男子の方が圧倒的にパワー、スピード、テクニックで上回っている。
そのため、男子が女子へ打球するパターンで得点するか。女子が男子の打球をいかに対応できるかが、混合ダブルスでは重要となる。その点、伊藤は現在の世界ランキング2位で、混合ダブルスに出場する女子選手では最上位であり、実力は申し分ない。
また、伊藤のプレースタイルはまさに変幻自在。ラケットを前後左右上下に動かし、さまざまな打法、回転、スピードでボールを繰り出し、男子に対しても得点できるテクニックを持っている。
ペアを組む水谷は、2008年北京五輪から4大会目の出場。ミスの少ない安定感のあるプレーで伊藤を支えつつ、いかに勝負どころでアグレッシブにプレーでできるかが重要になる。
■メダル獲得のライバルペアはアジアが中心
優勝候補は世界王者の許昕(シュ シン)/劉詩文(リウ シーウェン)ペア(中国/※文は正しくは雯:雨冠に文)。ITTF(国際卓球連盟)が五輪のドローを決めるために算出した、オリンピックランキングも堂々の1位。劉詩文は女子シングルスで世界ランク7位、2019年世界選手権王者であり、男子にも引けを取らずラリーをすることができる。しかし、このペアの最大の武器は許昕の強烈で独特なボールにある。許昕は世界のトップレベルでは、数少ないペンホルダーでサウスポー。
ダブルスでは中陣と呼ばれる台から少し離れてプレーし、その位置から抜群のフットワークを活かして、どんな厳しいボールでも返球することができる。特にサッカーのバナナシュートのように大きく曲がるカーブドライブは、男子でも返すことが難しい。女子にとっては全く受けたことのない軌道でボールが飛んで来るため、許昕のカーブドライブを返球するのは至難の業だ。
また、許昕/劉詩文ペア以外に、メダル獲得のライバルとなるのは、主にアジアのペアとなる。
林昀儒(リン ユンル)/鄭怡静(チェン イーチン)ペア(チャイニーズタイペイ)
オリンピックランキング3位。五輪前最後の国際大会となった3月のWTTスターコンデンタードーハ大会で優勝(中国ペアは不参加)。台湾の天才と呼ばれ、中国も警戒する林昀儒。19歳とまだ若くポテンシャルは計り知れない。手が付けられなくなると、林昀儒1人で試合を制することも可能ではないかと思うほどだ。鄭怡静も世界ランキングトップ10以内を長くキープしている世界トップ選手同士のペアである。
黄鎮廷(ウォン チュンティン)/杜凱栞(ドゥ ホイカン)ペア(香港)
オリンピックランキング4位。世界選手権では2回メダルを獲得しており、ペアリング歴はほかのペアよりも長く、爆発力はないが抜群の安定感がある。特に黄鎮廷のチキータレシーブには注意が必要。ペンホルダーのため、シェークハンドとは違う球質となり、女子は慣れておらず返球に苦労する可能性が高い。
李尚洙(イ サンス)/田志希(チョン ジヒ)ペア(韓国)
オリンピックランキング5位。WTTスターコンデンタードーハ大会では、水谷/伊藤ペアに3-1で勝利を収めて準優勝。李尚洙は、2017年世界選手権シングルス銅メダルの実績を持ちながら、ダブルスのうまさにも定評があり、世界選手権では男子・混合ダブルスともにメダルを獲得した実績を持つ。田志希は、世界ランキング14位のサウスポー。ダブルスもうまく、WTTスターコンデンタードーハ大会女子ダブルスでは、石川/平野ペアに3-0で勝利して優勝している。
パトリック フランチスカ/ペトリッサ ゾルヤ ペア(ドイツ)
オリンピックランキング7位。2019年世界選手権銅メダル。ともにシングルスの世界ランキング10位台の実力を持つ。フランチスカのパワーは強力で、ゾルヤは2016年リオデジャネイロ五輪団体銀メダルメンバーであり、五輪経験も豊富。アジア以外でメダル可能性があるのはこのペアだろう。
■水谷/伊藤ペア、メダル獲得だけでなく金メダルの可能性も
水谷/伊藤ペアのオリンピックランキングは2位。決勝までは中国ペアと当たらず、上記のライバルペアと準決勝、決勝進出を争うこととなる。2人の実力、過去の国際大会からの成績から考えると、メダル獲得の可能性は高いと言える。さらに中国ペアを倒して、金メダルの可能性もある。
許昕/劉詩文ペアとの対戦成績は、2019年から1勝4敗。最後に対戦したのは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大前の国際大会のため、1年以上直接対決はない。負け越してはいるが、毎試合接戦となっており、0-3での敗戦は一度もない。
中国ペアは年齢的にも、大きく成長する可能性は考えにくいが、伊藤は確実に実力を伸ばしている。水谷は団体と混合ダブルスの出場となるため、混合ダブルスの練習を確実に行っており、日本ペアの方が伸びしろがあると予想される。
東京で行われるオリンピック、自国開催のアドバンテージを最大限に活かすことができれば、日本卓球界初の金メダル獲得を十分に狙える。水谷/伊藤ペアには、大いに期待したい。