2018年11月26日から12月2日までの1週間で開催された第72回全日本総合選手権大会。リオデジャネイロ五輪で金メダルに輝いた高橋礼華・松友美佐紀の“タカマツ”ペアは、決勝に進出するも、2018年12月現在、世界ランク1位に君臨する福島由紀・廣田彩花の“フクヒロ”ペアに再び敗れて、2年連続の準優勝に終わった。東京五輪でのオリンピック連覇を目指す2人だが、若手の追い上げは年々激しさを増している。メダリストすら安泰ではない。今、日本女子バドミントンは戦国時代を迎えている。
小学生時代はシングルでタイトル独占、高校で“タカマツ”結成
高橋礼華は1990年4月19日、奈良県に生まれた。父は野球、母はバドミントンと、両親ともにスポーツ経験者で、妹の沙也加もバドミントン選手として活躍している。礼華は、母がコーチを務める「橿原ジュニア」で競技を始めると、小学4年生のときに、第1回全国小学生ABC大会に出場し、3・4年生のグループで優勝。第3回ABC大会では5・6年生のグループで優勝した。第10回全国小学生選手権大会の女子シングルス5年生以下、第11回全国小学生大会の女子シングルス6年生以下で連続優勝。6年生のときには、第18回若葉カップ(団体)でも優勝するなど、タイトルを独占した。
小学校を卒業すると、中高一貫でバドミントンの強豪・宮城県の聖ウルスラ学院英智に進学する。中学3年生で迎えた2005年の第35回全国中学校バドミントン大会では、2年ぶりの団体優勝に貢献するも、個人では良い結果を残せなかった。そして、高校2年生のときに1年後輩の松友美佐紀とペアを組むことになる。
一方の松友美佐紀は1992年2月8日、徳島県に生まれた。父は野球経験者。母とすでにバドミントンを始めていた姉の影響で、5歳から地元クラブ「藍住エンジェル」で競技を始める。小学4年生のときに、第2回ABC大会の3・4年生のグループで優勝。さらに第17回若葉カップ(団体)、第10回全国小学生大会の女子シングルス4年生以下で優勝と3冠を達成する。その後も第11回全国小学生大会の女子シングルス5年生以下、第12回全国小学生大会の女子シングルス6年生以下で連続優勝。ちなみに高橋の優勝した第3回ABC大会では5位だったが、第4回ABC大会では優勝と、こちらも輝かしい成績を残している。
中学校は地元の徳島中学に進学した。2年生のときに第35回全国中学校大会でシングルス3位。3年生のときは、地元開催の全国中学校大会で、シングルスと団体の2冠に輝く。高校は聖ウルスラ学院英智に進学、1年生のときに高橋礼華とダブルスを組むことになった。
高校時代の“タカマツ”ペアは、2008年3月の全国高校選抜大会、8月の全国高等学校総合体育大会(インターハイ)、10月の国民体育大会で優勝。迎えた11月の全日本総合バドミントン選手権大会では、5連覇を達成した“オグシオ”小椋久美子・潮田玲子組に敗れたものの、ベスト4と大健闘だった。高橋は高校卒業後、日本ユニシス実業団バドミントン部に入部。後を追う松友も1年遅れて日本ユニシスに入部する。
大逆転でリオデジャネイロ五輪制覇、史上初の金メダル獲得
2010年、日本ユニシス所属の“タカマツ”ペアは、大阪インターナショナルチャレンジ準優勝、全日本社会人大会優勝、全日本総合選手権大会3位と好成績を残す。全日本社会人大会は2012年、2013年と連続優勝。全日本総合大会は2011年から3連覇を達成し、2015年、2016年も連続優勝と、国内大会で大きな成果を上げる
2012年のロンドン五輪には間に合わなかった二人だが、国際大会でも結果を残す。2014年に韓国・仁川で開催されたアジア競技大会で銀メダルを獲得。2015年、2016年のインドオープン、 2016年の全英オープン、中国・武漢で開催されたアジア選手権大会、インドネシアオープンと優勝を重ね、いよいよリオデジャネイロ五輪を迎える。
二人にとって初めてのオリンピック出場。1次リーグで“タカマツ”ペアは、インド、タイ、オランダをいずれも2-0で破り、決勝トーナメントに進出する。準々決勝のマレーシア戦は第2ゲームを落とすも、2-1で勝利。準決勝の韓国戦は2-0のストレートで勝利を収めて、銀メダル以上を確定させた。決勝の相手は、デンマーク代表のカミラ・リターユヒルとクリスティナ・ペデルセン。“タカマツ”ペアは第1ゲームを18-21で落とす。あとのない第2ゲームは、21-9とデンマークを圧倒。第3ゲームはデンマークにリードされる苦しい展開だったが、最後に5連続ポイントを決めて21-19と逆転勝ち。崖っぷちからの執念を見せた“タカマツ”ペアは、日本バドミントン史上初のオリンピック金メダルを獲得した。
女子ダブルス世界ランキング上位を日本勢が独占
福万尚子・與猶くるみペア、福島由紀・廣田彩花ペア、米元小春・田中志穂ペアと参加した2017年世界選手権女子ダブルスは、優勝した中国ペアに敗れてベスト4。準優勝の“フクヒロ”ペアに次ぐ成績を残した。しかし、同年のBWFスーパーシリーズプレミアでは精彩を欠き、全日本総合大会も“フクヒロ”ペアに敗れて連覇を逃したことから、“タカマツ“ペアの“燃え尽き”を指摘する声も聞かれるようになった。そして、2018年夏、中国の南京で行われた世界選手権3回戦で、永原和可那・松本麻佑の“ナガマツ”ペアに敗れる。それでも、直後のアジア大会では準優勝。9月のBWFワールドツアー・中国オープン(Super1000)で、“ナガマツ”ペアを破り、初優勝を果たした。
2018年11月時点における女子ダブルス世界ランキングは、1位が“フクヒロ”ペア、2位が“タカマツ”ペア、3位が“ナガマツ”ペアと、日本勢が上位を独占している。さらに6位には米元・田中の“ヨネタナ”ペア、10位には櫻本絢子・高畑祐紀子の“サクタカ”ペアと、ベスト10の半分を、なんと日本勢が占めている。東京五輪に出場できるのは、この中で多くても2組。リオデジャネイロ五輪の金メダリスト“タカマツ”ペアでさえ、まったく気が抜けない状況だ。裏を返すと、それだけ日本女子ダブルスはメダルに近いと言える。2019年もバドミントン女子ダブルスから目が離せない。